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略奪王  作者: 魚缶
オープニング
3/3

旅立ち

「な、な、な、な、なぁっーー!!」

『ヌェヘッヘッヘッ。そう驚くことかよ』


 もはや驚きすぎて声すら出てこない。

 剣が喋る、あまりにも現実的では現実に。

 もしかして誰かが後ろで、と思ったがそもそもここは焼け野原。

 隠れる場所は何一つとして存在しない。


「い、一体、なんで……剣が喋って……」

『小僧……いや、坊主と言うべきか?おめさん、随分と大変だったみたいだな』

「……それ、は」


 言葉に詰まる、なんせアレは大変という一言で表せるような惨劇ではない。

 父親は次々と人を殺し周り、母さんも殺して、妹を連れ去った。

 許せない、許せるわけがない。

 力強く握った俺の手を、剣は見たのだろうか、俺に向かって質問を投げかけた。


『復讐したいのか?』

「してやりてぇよッ!!許せるわけがないだろッ!!全部、全部あいつが壊したんだッ!!あいつを、あいつを殺してやりてぇよッ!!」

『ヌェヘッヘッヘッヘッヘッヘッ!!!!』


 感情を吐露するように叫ぶ俺に、剣は大きく笑い声をあげる。

 俺にだけ聞こえる、大きな笑い声を。

 そんな笑い声に対して呆然とする俺に、剣は問いかける。

 この先全てにおいての、未来を決める選択を。


『お前さん。力が欲しくないか?』

「ち、から……だと?」

『そうだ。復讐するための力さ』

「だが、そんなもの……どうやって?」

『簡単さ。坊主、俺を手に取ればいい』


 その言葉に俺は後退りして剣を見つめる。

 恐怖を詰めたような視線に、奴は笑ったような気がした。


「俺をって……お前は、一体?」

『……そういやぁ、名乗ってなかったな』


 一息おいて、奴は名を名乗る。

 いや、名と言うよりは『呼び名』と言うべきか。


『俺ぁ六王剣の一人、初代『略奪王』。かつてこの剣を手に、ありとあらゆるものを略奪した男だよ』

「……は?りゃ、略奪王?な、なんの冗談だ?略奪王ってお前、いつの時代の人物だよ。そもそも!存在していたなんて話はーー」

『してたんだよ、六王剣は実際にな。今の今までずっと代続きで』

「代続き?まさか、六王剣は引き継がれてきたって言うつもりか?」

『そう、察しいいじゃねぇか。六王剣ってのはそうやって続いてきたんだ。そして今度の『略奪王』はお前さん、ってわけだ』


 その言葉に俺は戸惑いを隠せない。

 と言うより戸惑いから抜け出せない。

 さっきから言っていることが何一つとして。頭の中に入ってこないのだ。


(六王剣は実在してた?代続きで続いてき?わ、わけがわからない……)


 だが一つ、わかることがあるとすれば。

 俺は今、復讐するための力を手にすることができるということだった。


「……くれ」

『おう。なんだ?』

「力を、俺にくれ」

『ヌェヘッヘッヘッヘッ!!!いいじゃねぇか、そう、それでいいんだ坊主。お前さんは今から、8代目『略奪王』だ!』


 その言葉に応じるように俺は朱色の剣を手に取り、地面から引き抜いた。

 装飾の少ない大人サイズの片手剣、だが重さはそう感じることなく妙に軽い。

 ふと、剣を手に取っていない方の左手に、鞘が握られていることに気づいた。

 そこになかったはずなのに、いつの間にか存在していたのだ。

 剣を収め、付属されていたベルトとともに腰に吊るす。


「……なんか、力がついたって感じがしないんだが」

『そりゃそうだ。俺の力は戦わなきゃ意味がねぇかんな』

「どういうことだ?」


 腰の鞘から剣を抜いて刃を見つめると、略奪王は簡潔に説明する。


『俺たちゃ『略奪王』だ。それに準じた力があるのさ、他の六王剣も同様だがな』

「ふーん……なるほどなぁ。で、その力ってのは?」

『また話してやるよ。体感した方が早えしな』


 そう言われて軽く剣を振ってみる。

 だが素人の俺は、振った剣に持っていかれそうになる。

 やはり何かしらの力を感じることはできない。

 奴の言う通り、戦いの時になるまで待った方が良さそうだった。

 俺が剣を収めると、略奪王は俺に向かって声をかける。


『そんで、これからどうするつもりだ?』

「え?」

『これからだよ。お前さんの目標は復讐することだが、どうやってするつもりだ?』

「……考えてなかったな。取り敢えず……とう……いや、アイツの行方を追う」

『追って、殺すのか?』

「……どうだろうな。アイツはそれでも『父親』だから。もし再開したら殺せないかもな。でも、とにかく、復讐するさ」


 そう言って俺は何も残っていない村を背にして歩き出す。

 どこか遠くにいるアイツを追いかけて、アイツに復讐するために。

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