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略奪王  作者: 魚缶
オープニング
1/3

プロローグ

 いつも、いつも、いつも。

 この世界は見たくもないものを突きつける。


 世界は許してくれない、現実から目を向けることを。

 世界は許してくれない、現実を忘れることを。

 世界は許してくれない、現実に立ち向かうことを。

 あの日、俺の世界の全ては変わった。




 楽しく暮らしていた場所は全て火の中。

 仲の良かったあの子だって、楽しかった遊び場だって。

 全部、全部、燃え尽きて行く。


「……なん、で」

「……」


 冷たい目が俺のことを、ただ見つめた。

 奴の持つ剣は血に濡れていた、俺の、母さんの血で。

 だがその血を振り払って、奴は俺から視線を外して振り返って、近く倒れている妹を脇に抱えると、歩き出そうとしる。

 だから食い止めるために走り出す。


 許せない、許せるわけがない。

 だって、だってこいつは、この人は。


「なんでッ!!なんでこんなことするんだよ!!()()()ッ!!!」

「……」

「何か言えよッ!!何か、何か言ってくれよッ!!」


 だがそんな叫びは父さんの耳には届かない。

 それどころか突然、訳も分からず崩れた家の壁に吹き飛ばされる。

 勢いは普通に投げるよりも強く、俺は頭から血を流しながら奴の顔を見上げた。


 心底ゾッとする目が、俺を見つめている。

 その目は明らか様に家族を見る目ではない。

 もっと別の、何かを見るような目。

 怖い、感情はその一つで埋まって行く。


「っ……!」


 あんなのは父さんではない。

 誰よりも優しくて、強くて、笑顔の絶えない人だったのに。

 今、目の前にいる人は、恐怖の一つしかない。


 奴は俺を一瞥した後、踵を返して歩き出す。

 燃える村と死んだ母さんを背に、妹を連れ去って。


「ころして、やるっ……殺してやるッ……!!」


 頭の中がその二つと怒りで埋まって行く。

 視界はだんだんと霞んで行くが、奴の後ろ姿だけはしっかりと捉えられる。


 殺す、絶対に殺す、地獄に行こうが、天国に行こうが、どこに行こうが見つけ出して、いつか絶対、殺してやる。

 俺は奴の背中を睨んで、ただ殺すこと誓い続けながら意識を失った。





 これが俺にとっての始まりだった。

 この日、この時、奴を殺すと誓った時。

 俺の全てが始まった。


 これは復讐譚ではない、それはただの過程でしかない。

 これは、俺が『略奪王』と呼ばれ、歴史に名を刻むまでの物語。

 歴史最大の犯罪者にして、歴史最強の王として。

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