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クズと死神と女神のモノガタリ。  作者: オロチ丸W0632A
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第9話:黒菱自動車編8:初めてのデート

 「白雲(しらくも)さん。このケースの中には、2,000万入っています。これだけ有れば、『大和会(やまとかい)』の借金を返してもまだ、工場機械のローンの滞納金(たいのうきん)も払えるでしょう」

 

 半分泣きながら、ありがとうございます、と礼を言うパパ。

 私は、複雑な気持ちになっていて、何も言えずにいる。

 

 もう、ここで別れれば、二度と黒沢(くろさわ)さんとは会えない。

 けれど私は、彼に()かれている事を自覚していて。

 本当に、ここでこのまま別れてしまって良いのだろうか?

 

 そんな事を考えているうちに、別れの時が来てしまう。

 「では、さようなら。“私”の事は、絶対に誰にも言わないで下さい。公式には存在しない部署なもので」

 そう言って微笑(ほほえ)むと、黒沢さんは、工場を出て行ってしまった。

 

 「とうとう……何も言えなかったな〜」

 力なく(つぶや)く私の耳に、聞こえてくるのは、二度と聞けない(はず)の声。

 「何をです?」

 (あわ)てて顔を上げると、そこには、黒沢さんがいた。

 

 「く、黒沢さん!?」

 (おどろ)く私に、彼は言う。

 「すみません、ちょっと忘れ物をしてしまいましてね。私の名刺(めいし)があるでしょう?」

 「え、はい、有りますけど」

 「あれ、返してもらえませんか?私の部署が存在する証拠を、残しておくわけにはいかないもので」

 

 目の前には、(ほほ)をかきながら苦笑いする彼。

 これはきっと、神様がくれた、最後の機会(チャンス)なんだよね。

  

 名刺を渡すと、私は、勇気を出して、声に出す。

 

 「こ、今度、私とデ、デートしてくれませんか?」

 

 か細い上に、少し裏返っていたけど、彼には届いていたみたいで。

 びっくりしたように(まばた)きすると、やさしい笑顔を見せてくれた。

 顔が、火傷(やけど)しそうなくらい、熱い。

 

 

 

 びっくりした。

 まさか、デートに(さそ)われるとは。

 『今度の土曜日の、朝。あの公園で』

 真っ赤になった少女に、そう約束して、俺は帰路(きろ)()く。

 

 何故(なぜ)、また会おうと思ったのかは分からない。

 白雲(しらくも)優幸(やさき)が、お袋に似ているからなのか、それ以外の理由なのか……。

 

 彼女を思い出すだけで、胸の奥が熱くなる。

 頭の中から、彼女の曾祖母(そうそぼ)(ゆず)りの、綺麗な金髪と茶色の目が、離れなかった。

 

 「髪や目の色は違うけど、お袋の若い頃の写真にそっくりだからだよな」

 

 その日は、そう強引に結論付けて、眠りに就いた。

 

 ……夢の中にまで、彼女が出てきたけれども。

 

 

 

 「きゃー、どうしよ、何着てこ〜♪」

 

 その日の晩、私は今度の土曜日、何を着ていこうか、選んでいた。

 前の日になって決めるなんて、そんな事はしない。

 だって、そんなの失礼じゃない?

 

 ようやく着ていく服を決め、ベッドに横になったのは、日が変わってからだった。

 私の頭の中は、黒沢さんのことで一杯で、就職活動だとか、そういう事はみんな忘れていた。

 

 「今日は、良い夢見れそう」

 

 私はそう呟くと、電気を消して、夢の世界へと旅立ったのだった。

風邪で今日も休んでいるので、更新します。

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