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クズと死神と女神のモノガタリ。  作者: オロチ丸W0632A
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第8話:黒菱自動車編7:死刑執行

 「ああ、俺はもう、終わりだ……」

 どこのどいつか分からないが、あの侵入者に(おど)されて、俺は社長室に小切手帳を盗みにきた。

 それにしても、なぜあの侵入者は、金庫の位置や開錠(かいじょう)の方法を知っていたのだろう。

 言われたとおりに開錠しながら、俺は疑問に思った。

 

 金庫から小切手帳を取り出し、副部長室に戻りながら、侵入者(アイツ)の言っていた言葉を思い出した。

 

 『逃ゲヨウナンテ思ウナヨ。モシ逃ゲタリナンカシタ時ニハ、ドウナルカ……分カルヨナ?』

 

 具体的なことは何も言わなかったが、絶対殺される。それだけは、分かってしまった。

 「俺はまだ、死にたくない!」

 アイツの待つ部屋への道のりを、急いだ。

 

 

 

 「クク、遅カッタジャナイカ。アト少シ遅カッタラ、死ヌトコロダッタゼ?危ナイ所ダッタナ」

 

 どうやら、俺はギリギリだったらしい。

 思わず、安堵(あんど)のため息が出る。

 これで、命だけは……。そう思ったときだった。

 「次ハ、俺ノ言ウトオリニ遺書(イショ)ヲ書イテモラオウカ」

 目の前が、真っ暗になった。

 

 

 

 「戸籍上ハ、死ンデモラウ。実際ニハ生キテイテ良イケドナ。ソノ為ニ、オ前ノ書イタ遺書ガ必要ナンダ。逆ラウナラ、殺ス」

 

 侵入者(コイツ)の言う事は、こうだ。

 俺が生きていては、警察が捕まえに来る。

 だから、戸籍上は死んだことにして、コイツの組織の中で生きていけ、と。

 

 得体の知れないワイヤーらしきもので(つつ)かれながら、俺はコイツの指示に従うしかなかった。

 まだ、死にたくない。ただ、その一心だった。

 

 

 

 「か、書き終わりました、えと、死神様」

 一通り確認すると、俺は告げた。

 「チャント書ケテイル。デハ、命ダケハ助ケテヤロウ。明日ノ夜、オ前ヲ迎エニ来ル。ソレマデ、乗リ切ルンダナ」

 力が抜けてイスに座り込んでしまった阿久井(ヤツ)を置き去りにして、俺は黒菱自動車本社を後にした。

 

 もちろん、全ての監視カメラの映像を、ヤツが副部長室から出て、社長室まで小切手帳を盗みに行った映像に書き換えるのを、忘れずに。

 手元にある、ヤツの遺書と小切手帳を落とさないように、俺はビル街に消えた。

 夜のネオンが、(むな)しい(かがや)きを、続けていた。

 

 

 

 「うむ、今日も良い天気じゃのう」

 ワシ――黒菱自動車社長、相崎(あいさき)勝太郎(しょうたろう)は、清々(すがすが)しい朝を迎えていた。

 

 ――筈だったのだが。

 “死神”と名乗る、ロボットのような侵入者が、ワシの部屋に来たことによって、清々しい朝は消えてなくなってしまった。

 

 

 

 「それで、死神さん、でしたかな。まさか、ワシを殺しに来たとでも?」

 「イエ、ソウデハアリマセン。私ノ名前ハ、オ気ニナサラズ。今日ハ、オ宅ノ阿久井(アクイ)サンガ、昨晩不正ヲ行イマシタ。ソノ証拠ヲ私ノ組織ガ入手スル事ニ成功シ、ソノ証拠ヲ5,000万デ買ッテモライニキマシタ。拒否スレバ、ソノ証拠ノ一部ガ、一般ニ流レマス」

 彼の問いに、俺はそう返した。

 「ほう、うちの阿久井が、ですか。ワシを脅迫(きょうはく)するからには、今証拠をお持ちなのでしょうな?」

 「モチロン、持ッテイマスヨ」

 俺は、例の小切手帳を(しめ)す。

 「そ、それは……!」

 愕然(がくぜん)とする彼に、もう一つの証拠を突きつける。

 「昨晩ノ防犯カメラノ映像ヲ確カメテ御覧ナサイ。全テノカメラノ映像ガ、阿久井サンガコノ小切手帳ヲ盗ミ出ス映像ニ書キ換エラレテイル筈デス」

 

 

 

 何という事だ!

 あの阿久井君が、自分の意思でこんな事をする筈がない。

 そういえば、コイツは、防犯カメラが書き換えられている、と言ったな。

 きっと、この死神と名乗る奴に(おど)されたのだろう。

 

 「死神さん、あなたが本気だという事は、分かりましたよ。その証拠を5,000万で買い取れば、二度と黒菱自動車には関わらないと、約束していただけますか?」

 「上カラノ指示ニハ逆ラエマセンノデ、ソレハ出来マセン。デスガ、コノ小切手帳ガ一般ニ流レレバ、オ宅ハ終ワリデショウ?素直ニ、5,000万出シテ頂ケレバ、コノ事ヲ公表シタリハシマセン」

 

 

 

 「私モ、殺人ハシタクナイノデ、決断ハ早メニオ願イシマスヨ?」

 ワシは、コイツのこの言葉で、5,000万をポケットマネーから出す事を決断した。

 「阿久井君は、()が社に取って必要な人材なのです。私のポケットマネーから出しますので、今回は勘弁(かんべん)して(もら)えませんか?」

 コイツは、ゆっくりと頷き、

 「アリガトウゴザイマス。コレデ私モ死ナズニ済ミマス」

 と、言った。

 

 

 

 「デハ、失礼シマス」

 俺は、相崎邸を後にすると、右手に持った5,000万の現金が入ったケースを落とさないように、姿を消した。

 これで、後は阿久井を殺すだけだ。

 

 

 

 死神とやらが金を持って帰った後、なにやら胸騒ぎがして、本社に急行する。

 ワシは本社に着くと、直ぐに製造部副部長室に向かった。

 そこで、ワシが目にしたのは。

 「何と……何と(むご)い事を……」

 ワシは、何十年かぶりに失禁し、そのまま意識を失ってしまう。

 

 そこには、惨殺(ざんさつ)された阿久井君の死体が、床に転がっていた。

 そこだけは無傷な、彼の顔は、恐怖の色に染まっている。

 机の上には、『遺書』と書かれた封筒が見え、壁には、

 『悪人の命を()る死の鎌、『デスサイズ』。死刑執行、完了。』

 と大きく血文字で書かれていた。

 

 

 

 「さて、今日はこれから、どうしようかなぁ」

 そんな呟きが、どこかで風に消えた。

企画の締め切りに間に合わなくて、スミマセン(滝汗)


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