第7話:黒菱自動車編6:5,000万没収
「さて、阿久井から金を奪ってきますか!水鳥、俺が留守している間、“家”を頼むぞ!」
「ええ、留守は任せてください。今日の夜は、何にしましょうか?」
「そうだな……。チャーハンを頼む。じゃぁ、行って来るわ」
「行ってらっしゃ〜い」
そして、“死神”は出陣した。
俺は、ビル街を飛び回り、黒菱自動車本社を目指す。
夜のネオンが、空しい輝きを放っていた。
「今の時間、阿久井は副部長室にいるはずだ。ククッ、後、3分程度で着く。それまで、せいぜい、残り僅かな平穏を楽しむんだな」
俺の独り言を聞くものは、何も無かった。
「うう、何故だか悪寒がするな。風邪でも引いたか?早く仕事を済ませて、今日は早めに寝るとするか」
俺は、仕事を再開した。
それにしても、今日はいつもよりも仕事が多いのは、何故だ?
ふと、何気なく俺は、今いる部屋を見渡した。
「この部屋とも、もうすぐお別れだな」
そして、思わず笑みが出る。
「とうとう、俺も部長かぁ。ククク、これでもっと遊べるぞ」
行きつけのキャバクラの中で、一番のお気に入りの娘を思い出すと、顔がにやけてくる。
しかし、ここが会社だという事を思い出し、慌てて顔を引き締める。
幸い、“誰もいなかった”ので、ホッとする。
しかし、次の瞬間、異変に気付く。
「なんで、秘書の松田君までいなくなっているんだ?」
その質問に答えたのは、見知らぬ声。
まるで、機械で合成したかのような、声だった。
「俺ガ、外ニ呼ンダノサ。オ前ト2人ッキリニナリタカッタカラナ」
背筋に、いや全身に、鳥肌が立った。
「だ、誰だ!」
と、怒鳴りながら声のする方を向く。
「……ロボット?」
それが、俺の抱いた印象だった。
「……ロボット?」
ヤツの呟きに対し、俺はこう答える。
「イイヤ、俺ハレッキトシタ人間サ。声ハ変エテアルシ、特殊ナ服ヲ着テイルケドナ」
「何のようだ?」
そう問いながら、机の下に手をやる。
恐らく、警備の者を呼ぶつもりなのだろう。
「無駄ダヨ、警備室ノ人間ニハ、眠ッテモラッテイル。素直ニ、俺ノ言ウ事ヲ聞イタホウガ良イゾ?死ニタク無ケレバナ」
そう言いながら、右腕から出したワイヤーでヤツを縛り上げる。
「な、何者だ!」
真っ青な顔をするヤツに、俺は告げる。
「俺ハ、“死神”ダ。オ前ノ命ヲ奪イニ来タ。タダシ、オ前ガ助カル方法ガ、タッタ一ツダケアル。聞キタイカ?」
当然ながら、聞きたいと言ったヤツに、俺は条件を突きつける。
仮に飲んだとしても、殺される事に代わりの無い、空しい条件を。
それでも、ヤツは飲むしかない。有りもしない可能性にかけて。
「5,000万ダ。5,000万ノ金ヲ出セバ、命ダケハ助ケテヤロウ」
「そ、そんな大金、有る訳が……!」
俺は、止めを刺す。
「5,000万出サナイノデアレバ、死ンデモラウシカナイナ。……楽ニ死ネルトハ、思ウナヨ?」
そう言いながら、今度は左腕から出したワイヤーで、ヤツの喉を突く。
「わ、分かった!5,000万出す!だから今日は一旦帰ってくれ!」
「ソウ言ッテオイテ、後デココノ警備ヲ厳シクスルツモリナンダロウ?ソノ手ニハ乗ラナイヨ」
「じゃあ、どうしろって言うんだ!」
「ククク、俺ノ言ウ通リニスルンダナ」
脂汗まみれのヤツは、分かった、と小さく呟いた。
企画の投稿期限に、間に合うのだろうか(滝汗)
ギリギリまで頑張ります!