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クズと死神と女神のモノガタリ。  作者: オロチ丸W0632A
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第5話:黒菱自動車編4:平和な時間

 「では、今日はこれで帰りますね。阿久井(あくい)に後悔させてから、取り戻した金を持って来ます」

 

 そういって、黒沢(くろさわ)さんは帰って行った。

 

 「優幸(やさき)、まだまだ国も捨てたもんじゃないな」

 「え?何で国が関係あるの?」

 パパの言葉に、『?』マークを浮かべる私。

 パパは、意外だ、というような顔をして、

 「なんだ、聞いてたのかと思ったよ。ほら、この名刺(めいし)見てみろ」

 黒沢さんの名刺を見てみると、

 

 『警視庁特務二課

 

  黒沢(くろさわ)零司(れいじ)

 

 と書かれている。だけど。

 

 「でも、電話番号とかは書いてないんだね」

 

 そう、たったの二行だけで、連絡先が書いていなかった。

 「きっと、特殊な部署だから、みだりに書けないんだろうな」

 そこで、パパの顔つきが変わった。どこか意地の悪い顔へ――。

 『え?』と思う間もなく。

 

 「電話番号が気になるとは、もしかして黒沢さんに一目ぼれしちゃったのか〜?さっきも顔赤くしてたしな〜」

 「え、そ、そんなんじゃないよ!ふ、普通連絡先とか、書いてあるでしょ!?だから、ちょっと気になっただけで……。顔赤かったのは、えと、その、は、恥ずかしかったからで……」

 「恥ずかしかった、って何がだ?」

 「そ、それは……」

 黒沢さんに支えてもらった事とかを思い出しちゃって、また顔が熱くなってくる。

 「お、顔赤くなってるぞ〜。父ちゃんは、良いと思うぞ、黒沢さん」

 「……」

 私は、(だま)って右手をグーにする。

 「ちょ、ちょっと待て、優幸!目がちょっと(こわ)――」

 「パパの馬鹿!」

 そう言いながら、私は迷わず右手を(はな)った。

 

 「イタタ、ちょっとは手加減しろよ……」

 「からかうのが悪いっ!」

 腹をさするパパと、にらめっこする。

 だけど、次の瞬間(しゅんかん)には、私もパパも、笑っていた。

 

 「おお、そうだ。この事を、皆にも言わないとな」

 「そうだねっ、パパ!」

 

 

 

 その晩、久しぶりに、笑いながらご飯を食べた。

 楽しい話をしながら食べるご飯って、こんなにも美味(おい)しかったんだ。

 

 忘れていたこの味を、思い出させてくれた、あの人。

 黒沢さんと、いつかこうやって食事したいな。

 そう考えて、それの意味する事に気付き、本日何度目なのか、頬が熱くなった。

 

 「あら、優幸。顔真っ赤にして、何考えてるの?」

 そう言って微笑(ほほえ)む、お姉ちゃん。

 「穂波(ほなみ)姉ちゃん、そんなの昼間の黒沢さん……だっけ?の事に決まってるじゃん!」

 そう言ってニヤニヤ笑う、正示(しょうじ)

 

 「もう!2人の馬鹿!」

 

 「あはは、ゴメンゴメン。でもさ、俺、嬉しいんだよね。優幸姉ちゃん、最近無理してそうだったからさ。なんというか、安心した」

 「私もよ、優幸。今の優幸、いい顔してるもの。困った事があったら、何でもお姉ちゃんに聞いてね?」

 

 「……ありがとう、2人とも。だけど、ほんとに違うんだからね?」

 

 一瞬の沈黙の後で、2人はクスクス笑い、そして気が付くと、私も、パパもママも笑っていた。

 笑いながら、この平和な時間に感謝した。

 こんな時間が、ずっと続くと良いな。

 そしてやっぱり、黒沢さんの事を考えてしまう、私なのだった。

 

 

 

 それは、久しぶりに訪れた、家族の平和な時間。

 

 そして、動き出した私の初恋。

 

 ――けれど。

 

 私たちの日常を守るため、一人の人間が殺される。

 

 犯人は、私の初恋の相手。

 

 この時の私は、“まだ”そんな事は知る由もなく、久しぶりの平和な時間を過ごしていた。

 近いうちに、大きな決断を迫られるとも、知らずに。

更新頑張ります!

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