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クズと死神と女神のモノガタリ。  作者: オロチ丸W0632A
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第4話:黒菱自動車編3:私たちのヒーロー

 「黒沢(くろさわ)さん、貴方(あなた)は一体何者なんですか!?どうして、黒菱(くろびし)自動車の阿久井(あくい)の事を知っているんです!?」

 

 パパが叫ぶように言った言葉は、私も思ったことだった。

 何故、初対面のこの人が、私たちのことを知っているのだろう。

 

 それに、彼の言った『このままだと、一家心中しかないでしょう?』という言葉が引っ掛かるな。

 最悪の場合でも、自己破産すれば、命までは取られない筈なのに。

 

 そこまで考えて、ふと脳裏(のうり)に浮かんだ事が有ったけど、口に出す前に、彼自身が言葉にした。

 

 「“私”――いえ、“俺”は、貴方(あなた)方を“助けに来たんです”。『大和会(やまとかい)』の魔の手からね。失礼ですが、厳太(げんた)さん。貴方、『大和会』から借金をしているでしょう?『大和会』は、容赦ないですよ。借金を返せなかったら、人身売買・臓器売買、何だってやって回収しますよ。……知らなかったわけじゃないでしょう?」

 

 予想が的中していた事に、愕然(がくぜん)とする私。

 物音がして見てみれば、そこには目に涙を()めながら、地面にへたり込む、パパがいた。

 

 「あの時は仕方なかったんだ!そうでもしなきゃ、路頭(ろとう)に迷う所だったんだ!」

 そう叫んで、歯を食い縛るパパに、彼の言うことが、(うそ)ではない事を知り、目の前が真っ暗になる。

 思わずふらついた私を、優しく支えてくれながら、彼は続ける。

 

 「たったの五万が、高く付きましたね。まぁ、銀行もその時には既に貸してくれなかったんですから、仕方なかったのかも知れませんが。でも、『大和会』の借金は、違法な利子が課せられますからね。彼らは、相手が誰であろうと、殺すときは殺します。だから、警察も動かない。警察官だって、家族を人質に取られ、惨殺(ざんさつ)すると(おど)されれば、そうするしかないですから」

 そこで、彼は優しい視線を、私にくれた。そこで、まだ彼に支えられたままだという事に気付き、こんな時だというのに、(ほほ)が熱くなった。だけど、私の足は、まだ役割を果たしてくれないから、このままでいるしかなくて、恥ずかしくて目をそらした。

 彼の声が、優しく聞こえる。

 「家族を守りたかったから、『大和会』から借金をして。今度は、家族を(ひど)い目に合わせたくないから、一家心中を考えて。でも、もう大丈夫ですよ。“俺”が、阿久井から金を取り戻しますから。こんな可愛い娘さんを、死なせたりしたら、日本に取って大きな損失ですから」

 当たり前の事を言うように、とっても恥ずかしい、けれどとっても嬉しい事を言われて、頬だけじゃなく顔全体が、熱くてたまらなくなってしまう。

 ドクン、ドクン、と脈打つ心臓の音が、とてもうるさく聞こえた。

 

 恐ろしい現実から、(ヒーロー)が助けてくれる。

 いつの間にか、私は彼――黒沢(くろさわ)零司(れいじ)さんを、信頼しきっていた。

 黒沢さんの、正体も知らずに。

更新計画無視してスミマセン。

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