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クズと死神と女神のモノガタリ。  作者: オロチ丸W0632A
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第3話:黒菱自動車編2:白雲部品

 「はぁ……。一昨日(おととい)の面接も、落ちちゃったな……。これでもう、この雑誌に()ってる目ぼしい所は、全滅かぁ。」

 

 私は、家の近くの公園で、さっき買ったばかりのコーラを飲みながら、ため息をついた。

 

 もう9月も半ばなのに、私に出来る仕事で、(なお)()つ高給な仕事は、どこも既に募集を終えていた。

 色々と就職雑誌を買ってみたのだけれど、目ぼしい所は、既に決まってしまっているか、落ちてしまった。

 今の時期も、まだまだ暑い日差(ひざ)しが、私の肌をチリチリと焼いてゆく。

 

 

 

 「すみません、お嬢さん。この辺りに白雲(しらくも)部品という会社がある筈なんですが、どこにあるか知ってませんか?」

 

 男性の声で、フッと我に返る。いつの間にか、ウトウトとしてしまっていたみたい。

 思わず欠伸(あくび)をしてしまった私を見て、ウトウトとしていたのが分かったのか、

 「す、すみません、起こしてしまいましたか?」

 と聞かれてしまった。頬が、日差しのせいではなく、熱くなる。

 こんな所でウトウトしてたなんて、恥ずかしかった。

 

 「いえ、大丈夫です。白雲部品なら、私の父がやってる会社ですけど、ご案内しましょうか?」

 「それは助かります。この辺りに来るのは、今回が初めてなもので。携帯もバッテリー切れになってしまいましてね」

 男の人は、昨日充電忘れていたからなんですけどね、と苦笑いをした。

 

 それにしても、この人は、ラフな格好をしている。

 白のタンクトップに、黒っぽいGパン。

 顔もカッコイイし、(じか)に見える腕は、引き締まっていて、良いなぁ、なんて思ってしまった。

 「あの〜、私の顔に何か付いてます?」

 そう言われて、彼を見つめていた事に気づき、顔中が熱くなる。やだ、何やってんの私。そんな場合じゃないでしょ!

 今は、この人を案内しないと。

 「あ、いえ。では、私について来てくださいね」

 私はそう言いながら、コーラの空き缶を、ゴミ箱に放り込んだ。

 

 

 

 「パ……、じゃなくて、父さ〜ん、お客さんだよ〜」

 工場に着いて、パパを呼ぶと、

 「分かった、今行く!」

 直ぐに返事が返ってきた。

 

 「優幸(やさき)、こちらは?」

 パパにそう聞かれ、まだ名前を聞いてない事を思い出した。

 「え、え〜と、その……まだ」

 「私は、黒沢(くろさわ)零司(れいじ)という者です。白黒つけるの黒に、金沢の沢、漢数字の零に、司ると書きます。あ、これ名刺(めいし)です。」

 

 パパが名刺を見ている間に、彼は私にウインクした。

 フォローありがとう、という意味で、私もウインクを返した。

 すると、彼は優しい微笑を見せる。

 良い人だなぁ、そんな事を、考えてしまい、また顔が熱くなってきた。

 

 彼は、パパが名刺から顔を上げるのを見るなり、私達に向かってこんな事を言った。

 

 「白雲(しらくも)厳太(げんた)さん、次女の優幸(やさき)さん。

  そしてここにはいませんが、奥さんの美空(みそら)さん、長女の穂波(ほなみ)さん、長男の正示(しょうじ)さん。

  黒菱(くろびし)自動車の阿久井(あくい)に苦しめられているようですね。

  “復讐(ふくしゅう)”したいとは思いませんか?

  このままだと、一家心中しかないでしょう?

  今まで阿久井が(ふところ)に入れていた金も、取り戻して差し上げますよ。この“私”がね。」

 

 熱くなっていた頬が、一気に冷たくなってしまった。

 何者なんだろう、この人は。そして、何をしにきたのだろうか?

 

 工場の作業音が、どこか遠いものの様に思えた。

僕の不注意により、日替わり後の更新となりすみません。

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