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クズと死神と女神のモノガタリ。  作者: オロチ丸W0632A
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第2話:黒菱自動車編1:心中計画

 「阿久井(あくい)さん、これ以上納品価格を下げられたら、ウチはやってけません!どうか、よろしくお願い致します!」

 《黙れ!黒菱(くろびし)自動車の仕事をしたいという会社は、いくらでもあるんだ。ウチの言う値段で納品出来ないのなら、手を切るしかないな》

 「そんな!私たちに死ねとでも言うんですか!?」

 《ほぅ、一家心中かね?出来るものならやってみたまえ。じゃあな》

 

 

 

 私のパパは、自動車の部品を作る会社を経営している。

 でも、立場の違いを悪用されて、本来の値段よりも安い値段で納品しなければ、手を切られてしまうらしい。

 

 有り得ないよね。私もそう思う。

 でも、これが現実なんだ。

 阿久井って奴は、正規価格と実際の納品価格の差を、(ふところ)に入れる――横領しているらしい。

 でも、他の仕事がないから、無理してでも、阿久井の回してくる仕事を()けるしかない。

 

 こんな状況だから、私を高校に通わせてくれたのも、かなり無理してくれてたんだと思う。

 大学は、諦めた。だけど、仕事は見付からない。

 高校卒業から一年以内に仕事を見つけられなかったら、パパの会社に就職する事にはなっているんだけどね。やっぱり、給料の良い会社に就職して、少しでも家計を助けたい。

 なのに。

 

 「また、面接落ちちゃった……」

 

 半年経った今でも、就職できないでいる。

 水をゴクゴク飲みながら、何がいけないんだろう、と考えていた。

 

 

 

 私は、白雲(しらくも)厳太(げんた)。五人家族の大黒柱だ。

 といっても、経営している工場は、何とか生きて行ける程度しか、利益が無い。

 言い訳ではないが、私のせいではない。納品先が、立場の差を利用して圧力をかけてくるのだ。

 だが、全く収入がなくなれば、工場機械のローンを払えなくなってしまう。

 だから、厳しくても、踏ん張るしかない。私の名に、『厳』の字があるのだから、頑張れる。

 

 そう、思っていた。

 でも、もう、これ以上は無理だ。

 

 妻の美空(みそら)はスーパーのレジ打ちのパートをしている。

 長女の穂波(ほなみ)は、奨学制度のある大学に、バイトをしながら通っている。

 次女の優幸(やさき)は、就職活動中だ。あと半年経っても就職できなかったら、私の会社に就職する事になっている。

 長男の正示(しょうじ)は、まだ義務教育中だ。

 

 それなのに、この道を選ぼうとしているなんて、なんと酷い人間なのだろう。

 

 『一家心中』

 

 遺書に、阿久井や黒菱自動車の悪事を、全て書いてやる。

 もう、私達は地獄へ()ちてしまう道からは、(のが)れられない。

 けれど、私達だけでなく、奴らも、一緒に地獄へ――。

 

 その日、私は無理心中することを決めた。

 心中なんて話、相談するわけにはいかない。

 私は、いるのかも分からない悪魔に、魂を売り渡した。

 

 

 

 「悪人、発見。黒菱の阿久井、か。“死神”が地獄に墜としてやるよ。楽しみにしてな」

 

 そんな声が、どこかで聞こえた――。

僕の不注意により、昨日(2008/10/5)の更新が出来ずにすみません。

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