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クズと死神と女神のモノガタリ。  作者: オロチ丸W0632A
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第1話:序章:死神誕生

ほぼ毎回死人が出る予定です。

――黒沢(くろさわ)零司(れいじ)、19歳の冬――

 

 

 

 「親父、何が有ったって言うんだ!?」

 俺は、夜中にかかってきた電話に向かって、思わずそう叫んでいた。

 《すまない、零司。お前にも言っていた、“デスサイズ”が『大和会』にバレた》

 「ウソだろ……?」

 

 『大和会(やまとかい)』とは、日本の裏社会を統括する組織だ。現会長は俺の曽祖父(ひいじいさん)で、親父はそこの技術部長をやっている。

 親父は、裏社会を見ていて、ぶっ(つぶ)したくなったと言っていた。“デスサイズ”も、その為に親父が組織に隠して作ってたんだ。

 

 《残念だが、本当にバレていて……な。実は、さっき会長に撃たれた》

 「え?」

 それは余りにも唐突過ぎて、直ぐには理解できなかった。

 しかし、止まった脳みそが動き出してみれば、声の様子がおかしかった事に気付く。

 耳を澄ませてみれば、荒い息が聞こえる。

 「会長に撃たれたって、会長からしたら、親父は孫だろ!?そんな、何で――」

 《………………》

 「親父!しっかりしろよ!まだ、まだ死ぬんじゃねぇよ!裏社会をぶっ潰すって言ってたじゃねぇか!こんな所で死んじまったら、裏社会をぶっ潰せねぇじゃねぇか!」

 受話器から聞こえてくる、荒い息。そして、かすれるような声。

 《零司……すまん、父ちゃん、もう駄目だわ。後は、任せる。俺の代わりに、腐った世界を、ぶっ潰してくれ……!》

 「親父!そんな事言うなよ!俺だけでどうこう出来る訳ないじゃねぇか!」

 《零司。もう、父ちゃんは駄目なんだよ。急所は外したみたいだが、血がハンパじゃなく出てるんだ。もう、父ちゃんは助からない》

 「親父!俺だけじゃどうこう出来ないし、裏社会をぶっ潰すのは誰がやるんだよ!死ぬな!」

 

 俺は、とにかく叫び続けた。そうすれば、少しでも長く親父が生きていてくれると思ったから。

 そう、本当は俺にも、分かっていた。耳を澄ませてみた時に、親父がもう助からない事を、分かってしまっていた。

 だからこそ、必死に脳裏から追い出して、『死ぬな!』と叫んだのだ。

 

 《零司、お前だけじゃ無理でも、“家”の奴らがいるだろ。それに、“デスサイズ”は既に完成している。隠し場所は、モグラに聞け。そこには、“デスサイズ”の設計図もある》

 「な、何で今まで黙ってたんだよ!もっと早けりゃ……」

 もっと早けりゃ、親父が撃たれる事も無かったかも知れないのに。

 しかし、その言葉は飲み込んで、口には出さなかった。

 

 もう、助からないならば。せめて、安心して逝って欲しい。

 だから、目元に浮かんだ涙を、手で(こす)り取って、親父を見送る事にしたんだ。

 

 《じゃぁ……後は、頼む……ぞ》

 「……分かった。親父の変わりに、俺が、裏社会をぶっ潰してやるよ。だから、安心してくれよ」

 《はは、どうやら、決心が、付いたようだな……。じゃぁ、先にあの世で待ってるぜ。同じ所に逝けるかは分かんねぇけどな》

 「親父らしくねぇな。あの世なんて、ある訳ないだろ?」

 《はは……かも、な。じゃぁ、おやすみ。会長が最後の情けで残してくれた時間も、もう無いみたいなんでな。》

 「ああ、おやすみ。モグラに後は聞くよ。」

 《零司、お前の人生まで巻き込んでしまって悪いと思う。しかし、父ちゃんには――》

 「気にしなくて良いよ。俺は、もう“零司”じゃない。俺は、――」

 

 「俺は、今日から“死神”だ。後は、“死神”に任せてくれよ」

 

 俺は、親父の言葉を(さえぎ)って、そう宣言した。

 

 《はは、頼もしいな、“死神”さん。これで――》

 

 それが、親父の最期の言葉だった。

 

 

 

 俺は、必死で涙を(こら)えた。

 “死神”は泣かない。“デスサイズ”――死の鎌で、死をもたらし続けるだけ。

 

 その日、黒沢(くろさわ)零司(れいじ)は死に、一人の“死神”が誕生した。

 親父――黒沢(くろさわ)恵之助(けいのすけ)より託された、“デスサイズ”。そして、“家”の人たちの力を借りて、俺は、悪人共をぶっ殺していく道を歩み始めた。

 

 千里(せんり)の道も、一歩から。そんな(ことわざ)が、脳裏(のうり)に浮かんだ。

毎日更新頑張ります!

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