表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/10

クリアホワイト

第4話


前方で爆煙が上がったのを確認した。それはグロウによる攻撃なのか、または機械的な物による事故なのかは分からなかった。

姉さん達が言ったようにレーダーではなく自分の目で周りを警戒する。

毎日変わらぬ曇天に太陽の光はカットされ薄暗い中風は弱く、真上から降りてくる雪が多かった。




グロウによる長距離攻撃の前例は少ないが、可能性としては拭いきれない。そのため立ち往生するのは危険と判断し速力を上げてアビスネストへと向かう。


「皆さん。貴方達の安全は私達が守ります。どうか信じてついてきてください」


ここまで安全な経路を辿ってきた有人操縦のドライバーにとっては恐怖が数倍に膨れ上がる事態だった。

敵が見えない中、突然爆発を起こしたのだから訓練は受けていても自然と心拍数が高まっていく。


「も、勿論だ! ここまで来たなら生きて届けるぞ..!」


「それにまだ敵が襲ってきたのかも分からないしな..」


「あぁそうだ。きっと事故だ事--」


ドライバー間で行われてる通信の最中にまたも爆発事故が発生した。しかし今度は先程よりも爆発音が数倍大きかった。


「っ! 被害報告!」


普段穏やかなゼフィランサスの声にも強味がかかり冷や汗をにじませる。何度もこなしてきた輸送任務だからこその焦りが伺える。


「っ......4両やられました!! 有人操縦が1両っ無人3!」


「今度は4両も......今は進んで......!!」


怒気を孕んだ声音で通信を続ける。その度ドライバーからは声こそ聞こえぬほど唾液を飲み下す様な音が通信機越しに聞こえる。


「..なぁ姉ちゃん。これは新型の奴らがいるぞ。輸送車の防御は固めなくていいのか?」


焦りを浮かべ指令を飛ばすゼフィランサスとは対照的な興奮が冷め終えた極めて冷静なアマリリスが意見を出す。


「でも..こんな所では止まってられないわ..ましてや相手は透明なのよ?! ならっ......速く、急がなきゃ..!」


「落ち着けって。何も方法はひとつじゃないだろ? なぁストック姉?」


「あぁ、ゼフィーは焦りすぎだ。まずは落ち着いて奴らの戦略を考えるんだ」


妹達に言われてハッとする。まだ見ぬ脅威に焦り過ぎて視野が狭くなってしまっていた。

ストックやアマリが言うようにグロウの戦略はこの2回で朧気ではあるが何となく、分かってきていた。


「まず奴らの狙いは僕達ではなく武装のない輸送車を襲いに来ている。なぜ僕達を狙わない?直接僕達を攻撃すればいいはずじゃないか」


「えぇ......それは......」


「反撃の恐れがないなら護衛対処の僕達を早急に始末して丸裸の積荷を攻撃すればいい」


通信機の向こう側のストックは淡々と続ける。まるで最初から分かっていたかのように......


「つまり! 奴らは見えねぇってだけで--」


「実態はある。目星が付き攻撃が当たれば撃破は可能......」


レーダーを過信しすぎた為に視野だけではなく思考の幅までも狭まっていてしまった。

「私が言おうとしたのに!」と威嚇するような声が聞こえれば口角を上げ自然と命令を下していた。


「リー聞こえてる?!今から無人操縦車5両を落伍させて囮に使うから攻撃の瞬間を見逃さず特徴を観察してちょうだい!」


「了解です..! 何としてでも正体を掴んで見せます」




少々不安だが姉さんが言うのなら期待に応えぬわけにはいかない。必ずなにか収穫を得なければせっかくの積荷が無駄になってしまう。


「ドライバーさん聞こえていますか?今から無人操縦車の速度を下げてください」


「い、いいのかい嬢ちゃん?! ここまで持ってきたのに..」


「......っ構いません! 勝ちを得る為の布石です! 勿体無いですが......攻撃から身を守るためです」


ドライバーの言う通りここまで苦労して運んできた積荷を言ってしまえば棄てることは骨折り損だが、くたびれ儲けとはいかないだろう。


言われた通り無人操縦車はスピードを落とし輸送車郡からゆっくりと離されていく。

その場に一旦停止し離れ行く輸送車を目を凝らしじっと見つめる。

......必ず来る。


輸送車に一筋亀裂が入る。

予想通り爆煙をあげ輸送車は破壊された。

しかしその一瞬を見逃さなかった。


「姉さん! わかりました..!」


「やるだけの甲斐はあったようね..」


胸をなでおろすような声でほっと安堵する姉さんはそのまま「続けて」と言ってくる。


「はい。--雪です。雪でおおよその位置が割れます!」


「雪ぃ..?雪でどうやって..」


「止まってみればわかります! 今日は風も無く雪が真っ直ぐ、それにいつもより多く降ってきていますよね?」


言われたように停止して手を出してみる。なかなかの速度で走っていたため気付かなかったが確かに真上から幕のように絶え間なく地面へと積もっていた。


「そうね..でも、それがどう関係--」


「ですから、動くと気流が出来て雪が違う方向に舞うんです!」


「......! そういう事ねぇ......やっと見えたわ..!」


ほぼ無風状態に加えていつもより多く降雪してる奇跡的な条件だった為、厄介な雪が今回ばかりはありがたく感じた。


「作戦次段階へ移行! ストックは戦車隊を率いて後方及び側面の防衛を強化! アマリは引き続き遊撃を続行! リーは戦列復帰後大型トラックの護衛に撤して!」


先程の焦りっぷりとは見違えるように落ち着いて指示を飛ばすゼフィランサス。

4姉妹と見えない敵との戦いの火蓋が切って落とされた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ