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H.O.P.E.  作者: 杜崎ハルト
13/26

存在

それから遼の講義は1時間弱続いた。税金対策、企業の地域貢献、この街の近年の好景気についてなどなど、消費者視点と経営視点と行政視点すべてを織り交ぜながらホープ社の魅力を力説していた。その姿はまるで一流のリクルーターのようで、何故この人が閑古鳥が鳴いてる喫茶店でフリーターをやっているのか、綾人には不思議でならない。

講義の合間に飲んでいた珈琲も3杯目に差し掛かろうかという頃、このままではキリがないと思ったこともあり遼に質問を投げかける。

「ホープの魅力は大体わかりました。ですが、その会社を俺に薦めてくれてる理由ってなんですか?」

「ここ数年躍進を遂げている注目株ってだけじゃ弱いか?」

「いや、そういうわけじゃないですけど、遼さんからは何としても俺にホープに入ってほしいっていう勢いが感じられてですね……」

「理由は単純。綾人に向いていると思ったからだよ」

お節介かもしれないけど、と遼は前置きをし先ほどまでのしたり顔から一転、真剣な表情で綾人に向き直った。淹れたての特製ブレンドの香ばしい香りが店内に広がっていく。

「綾人ってさ、どんなときでも冷めてるというか熱意が足りないと感じるんだよ。何が好きなのか、何を第一にしているのかわからないっていうか。実際、趣味らしい趣味もないだろ?」

「…………ないですね」

「誤解するなよ、悪口を言いたいわけじゃない。ただそんなお前でも、幼馴染の楪ちゃんだっけ? その子のことや、俺や真尋のことになると割と真剣になってくれているような気がしてな。だから自分よりも周囲の人を優先して考えられる優しい人間だと、少なくとも俺はそう思っている」

遼は、そうだろう?と目線で同意を求めてくるが、綾人は自分自身のことながら腑に落ちない。照れ隠しなどではなく、本心でわからないのだ。

「そんなお前だから、ホープに入るのが望ましいと思っている。あの会社は調べた限り、採算性よりも投資先企業の社会的存在意義や将来性を重視している。本当に資金が必要な人たちを見極め支援する、そんな働き方が向いているんじゃないか? まあ、それでいて収益をきっちりあげてくるのがあの会社の注目点でもあるんだけどな」

「……………………」

綾人は極力避けてきた自分の未来の在り方について、当の本人以上に真摯に考えてくれる人がいることが嬉しかった。ただ、これほどの感情を抱いたこと自体が今の綾人には初めてに近い経験なのでなんて言葉を返したらいいのかわからない。

上手く答えられないもどかしさと、沈黙したままの空気を嫌い、先ほど淹れられたばかりの遼特製ブレンドに口をつける。

「…………あ、美味しい」

「そうか。そいつはよかった」

遼は、安堵交じりの爽やかな笑みを綾人に向けた。

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