へるぷみー!
狼との距離は残り五十メートル。私は詠唱を始めた――。
というところで夢は終わってしまった。ぱっちりと目が覚めてしまったのだ。というか、お姉ちゃんに起こされた。
明晰夢とはこういうことを言うんだね。いや、ただ単に昔を思い出しただけ。夢ですらなかったのかもしれない。
まあ、なんでも良いけど。でも、私は何の魔法を使おうとしたんだろうか。
靄がかかったように思い出せない。効果はわかる。理論はわからないけど。
それに、私はスピカと会ったことがあったっけ? 本当にこれは私の記憶? というか、そもそもスピカって誰?
もしかしたら、何世代か前の私の記憶?
でも、私がいたのは私の家の近く。それだけは間違えない。間違える筈がない。
なら一体この夢は何なんだろう……!
私は昔を思い出したわけじゃなかった……!?
でも、私は七歳だった。
そもそも私って誰?
今の成瀬恵那? 此花恵那? それとも何世代かしらないけど前の賢者?
でもっ! それでも! いくら記憶が薄れていても、何も思い出せないなんてないよねっ!
それこそ記憶が書き換えられたのか。もしくは、未来を見ていたとか――?
未来を見ていたってどうやって……? いや、待て待て。私は七歳だったのに、なんで未来になるの……?
何なの? これは一体何なのっ!?
怖い。わからない。怖い。
一体私はどうしちゃったの……?
「恵那? どうしたの? 朝よ?」
「……ぁ、あ、おはよう……」
お姉ちゃんの言葉でちょっと冷静になったのかもしれない。私、混乱してた。よく考えたら、夢って、摩訶不思議だよね……。リアル過ぎたからつい本当にあった、なんて考えちゃって……。
きっと私の妄想が夢になっただけだよね……?
「元気無いわね」
「うーん。変な夢見て……」
よし! お姉ちゃんに全部話してしまおう! 解決する気がする!
「ふーん。どんな夢?」
「スピカって女の子がいて……」
「あんたの弟子の?」
んんん?
「……そう」
スピカは実在してたんだ。じゃあ、どうして忘れてたんだろ……。
私は転生する探求者、通称賢者。物忘れしない筈なのに。
「魔法を教えてたの……対象以外を傷つけない魔法を」
「それって……あの秘技?」
「わかんない……」
お姉ちゃんと話してたら余計に混乱してきたよ! 何でー! どうしてっ! どういうことなのっ!
今の私の心境はこれだよ。
へるぷみー!




