five years ago(3)
なんやかんやでスピカと修行し始めて二週間。スピカはぐんぐん成長していった。
「行けっ! 水槍!」
スピカがそう叫ぶと、水で出来た槍が木の的を貫いた。
「やりましたよ! 師匠!」
最初よりもかなりマナの制御が上手くなった。事故を起こすことも減った。
「あ、でも、これじゃ、違うものまで壊しちゃいますね……」
「そうだね」
スピカが壊した木の的の後ろの木も穴が空いてしまった。どうしよ、怒られる。私が。
……ま、いっかー……。
「威力を抑えるべきですよね……」
「それが出来たら越したことはないけど、強い魔物相手には、手加減なんて言ってられないし」
「だけど、それじゃあ環境破壊です」
スピカは優しい子。いつか、その優しさが命取りになってしまわないと良いけど。
「んー。環境破壊しない魔法もあるけど……。でも、お姉さんが帰ってくるまであと二週間でしょ?」
「はい。それでも、教えて欲しいです!」
「うーん」
二週間で魔法が上手くなったけど、実戦経験が無いし。
簡単に教えちゃ駄目な気がする。どうしようかな。
「お願いします! どんな事でもやります! 本当に、お願いします!」
何度も何度も頭を下げるスピカ。私が悪いのかな?
「んー。わかった! でも、技を見せるだけ。自分で取得してみて」
折れたのは私でした。スピカは最低でも六十年は生きているからね。ま、大丈夫でしょ。
「じゃあ、ちょっと魔物がいるところまで行こうか。はい、手」
私達は手を繋いで、ワープした。勿論私の魔法でね。
やって来たのは森。木が繁ってる。冒険者の中でも初級の人間しか来ない場所。
「わわっ。凄いです! 伝説級の魔法じゃ無いですか! 貴方一体何者なのですか!」
えっと、賢者かな? 敢えて伝えてないけど。え?
「ん、まあね。何者かってねー。うん。そこら辺の村人A?」
「どういう意味ですか?」
「そこら辺の石ころみたいな感じ?」
「それは、嘘です! んなわけありません!」
目立つのは結構面倒だし、一応賢者だけど、他の人から見たら村人と変わんないし。うん。嘘はついてない。
「じゃ、ちょっと魔物呼ぶね」
探査の魔法と魔物強制集会の魔法を使う。これで、魔物を呼べて、何が来たかわかる。何故使ったのかと言うと魔法発動に時間がかかるから。
強い魔法は不安定だから、詠唱をするんだ。
狼が良いなぁ。無理なら大鬼族でも良いかな。
オーガは雷属性が弱点なんだよね。で、その魔法は雷属性。一応。
残念ながらやって来たのは狼でした。ちぇっ。狼相手には勿体ないよ。
「狼か……。ま、いっか。ちょっと準備するよ」
狼との距離。――残り五十メートル。




