妹同盟
「良いんじゃないかな? 誰を好きになっても、誰を愛しても。兄妹でも、お互いが好きなら」
「……あ」
「……そうなんだよね。葵は冬実さんと……」
ヤバいよ。地雷を踏んじゃったよ……あれ? これが本題だった気がするけど?
茜ちゃんは俯いてしまった。
どうしよう。どうしよう。わ、私が悪いよね。空気読めよってやつだよね。
ごめんなさい!
「葵が幸せなら、それで良いの」
「……」
小さく消えそうな声。怖いくらいに明るくて、辛い気持ちが逆に伝わってくる。
無理してるよね。かなり。
「失恋しちゃったぁ……」
空を仰ぐように両手を後ろに着いて、体を後ろに傾ける。空は見えないから天井だけど。
「でも、茜」
見かねたように晴菜ちゃんが声をかけた。
「なあに?」
「夫婦は別れたら他人だけど、兄妹は別れても家族なのよ」
「励まさなくていいよ。惨めになるから」
その言葉に二人とも何も言えなくなる。
時計の針が時間を刻む音が嫌に煩く響いている。居心地悪い静寂だ。
その静寂を破ったのは茜ちゃんだった。
「私ね、最初、エナは葵のこと好きなのかと思ってたんだ」
「ないない」
「うん。すぐに葵の隣にいたゼン君が好きなんだってわかったんだ」
「わかりやすい? ……いや、別に、好きって訳じゃないし」
「自白してるようなもんじゃない」
わかりやすいのかな。いや、隠す気はあったよ。ほんとほんと。恥ずかしいからね。
「私がゼン君みたいに男の子だったら、ずっと隣に居られるのにな」
茜ちゃんは上を見上げたまま、嘆いた。晴菜ちゃんが鋭いツッコミを入れる。
「そうなったら、結婚は遠くなるわよ?」
「あ! そっか。そうだ、ダメじゃん!」
頭を抱えて悩みこんでしまった。難しい問題だね。
堂々と隣にいることをとるか、結婚をとるか。いや、待てよ。どっちも同じ意味じゃん。ていうか……。
「兄妹なんだから、一緒に居たら良いんじゃないの?」
「え? う、うん。そうっちゃそうなんだけど……」
「今更あの二人の間に入っていけないのよ」
「そうなんだ……?」
「……そうなの。ずっと、物心ついた頃から恋だって気づくまでずっと避けて来たから……」
「いつ頃まで?」
「小学校六年の冬までかな……」
「結構最近だね!」
まだ5ヶ月位しか経ってないんじゃない? 大体四捨五入したら十年くらい? かなり長い。その間に出来た溝を簡単には埋められないよね。
「近づきたいな、って思うんだけど、きっかけが掴めなくて。家でも話さなかったし、どう接したら良いのかなって……」
「それは辛いね。そうだ、それとなく、聞き出してみようか?」
「うん……やっぱり、いいや。自分でなんとかしないといけないと思うから」
「そっか」
「話を聞いてくれてありがとうね」
「いいよ。だって、友達だし、それに、私も妹だもん」
茜ちゃんと二人笑い合う。友達っていいもんだよね。
「そうね。私達三人、妹同盟だもの、困った事があったら、悩みを分かち合うのよ!」
そう言って晴菜ちゃんが締めくくった。
そこで緊急会議はお開きとなり私は一度部屋に戻ることにした。




