親友
ずっと泣き続けてる二人。私はどうすることもできずに、黙っていることにした。
そうしていたら、落ち着いてきたのか、二人とも泣き止んだ。よかった。
鼻を啜りながら、晴菜ちゃんが話し始めた。
「エナには、まだ話してなかったわよね。私達二人は妹であることに悩みを抱えてるの」
「それで、妹同盟ができたの」
うん。過程をすっ飛ばしたね。いや、別にそんなに興味ないけど。
人間触れられたくないことも沢山あるからね。私だって、あるよ?
「私は、ずっとお姉ちゃんと比べられて生きていたの。いつか、絶対に勝ってみせるって誓って。今回また、負けちゃったのよ」
「身長、体脂肪率、人望、知名度、成績、運動神経、全部比べてきたんだよね」
「ええ。一度も、一つも勝てなかったの。お母さん達も私は不良品だって……」
なるほど、それでか。初めて会ったときに脆い感じがしたのは。コンプレックスが大きすぎたんだね。
じゃあ、茜ちゃんは?
「わ、私はね。うー。恥ずかしい」
茜ちゃんは両手で顔を隠してしまった。晴菜ちゃんが脇腹をつついて擽ってる。女の子同士だから、セクハラにならないんだよね。不思議。
遂に観念したのか、茜ちゃんは話し始めた。
「あのね。私葵が好きなの」
「で?」
「だから! 好きなの! ライクじゃなくて、ラブなの」
段々尻すぼみなっていく茜ちゃんの声。反比例するように顔の赤みが強くなっている。
そっか、この世界では兄妹の結婚とかは普通じゃないんだ。
私達の世界はその辺寛容だったし、一夫多妻も結構いたそうだから、ちょっとよくわかんない。
あれ? これ、三世代前の記憶だ。
一応昔のことは全部覚えているので、混ざることもあるんだよね。これも悩みの種の一つ。
「そっか、こっちじゃ兄妹の結婚はないんだ」
「け、け、け、けっ、こ、結婚!?」
鶏みたい。面白いかも。
「あれ? 違った?」
「ち、ち、違わにゃいけど……」
「にゃいけどって」
晴菜ちゃんが腹を抱えて笑っている。気持ちはとてもわかる。顔がつりそうだよ。明日、顔が筋肉痛になってるかもしれないね。
「真剣に悩んでるんだよ! もうっ」
「悪かったわね。いや、でも、まだ笑いが治まらないんだけど」
口を尖らせて怒る茜ちゃんに笑いながら謝る晴菜ちゃん。
きっと、二人でいたから、ここまで来れたんだろうなって思う。
そう、多分、こういうのを親友って言うんじゃないかな。
お互いに支えあってきたから、お互いに遠慮なく言える。こんな関係性が羨ましいなって思うんだ。




