お悩み相談室(屋外)
「なるほどね……それは、僕じゃなんとも出来ないかな。自分達で何とかして」
「酷っ!」
悩みを打ち明けて、開口一番に言うことがそれって……。慰めてほしいとか、思ってはないこともないけどさ! いたずらっ子のようにニヤリと笑っている顔が何故かネコのようだ。背後霊はネコかもしれない。
「だって、僕がなんと言ったって意味ないじゃん。成瀬さん、此花さんがお互いに悩んでいることを話さないと」
「それも、そっか……」
ゼンくんの言葉は最もだから、反論する要素がない。嘘です。一つある。さっきまでの悩みを振り切るためにも努めて明るい声を出して、笑顔で彼を呼ぶ。
「ね、ゼンくん」
「何?」
「私のこと、成瀬さん、って呼んでたっけ?」
何故だろう。エナって、呼んでた気がする。でも、呼び捨てじゃなかった気はするけども。
「どうだったっけ? 意識してないから覚えてないね」
「じゃあさ!」
その言葉に合わせて立ち上がり、ゼンくんの両腕の服の裾を掴む。お互いに前のめりになっていて、おでこがぶつかりそう。
「エナって、呼んでよ? 友達、でしょ?」
今はまだ。いずれはそれ以上の関係になると、声に出さずに呟いて。想像以上に顔が近くなっちゃって、ゼンくんの顔が真っ赤。トマトよりも。私? 私はね、それ以上に真っ赤かもしれない。
「わ、わかったよ。エナ……なら、僕のことも、ゼンって呼べよ」
何故か命令形。カズマ君の前ではよく見せるドSなゼンくんが前に出て来ております。これは、認めて貰えているということですよね? いや、そうに違いない。
「うん! ゼン」
五星池の鯉が尾ひれを水面に打ち付けて潜る。意外とアグレッシブですね。カズマ君より空気が読める鯉ですね。
「二人ともー! おーいなのよ!」
後ろから聞こえてくるのは明るく私を呼ぶ声。振り返ればエイリちゃん。チア部の衣装かな? Tシャツの下からピンクのタンクトップと黒いスカートが覗いている。Tシャツは学校指定の白い体操服。左手には金色のポンポン。
「お疲れ様、エイリちゃん」
「お疲れー」
「お疲れ様なのよ~。何かあったの?」
エイリちゃんは何気に鋭い。普段抜けている部分が前面に出すぎててそんな感じしないけど。私はこれまであったことを掻い摘まんで説明する。
「それは私の出番なのよ! ゴーゴーレッツゴー、エーナ! ふれふれ、がんばれ、ふれふれがんばれ! おー!」
何処か気の抜けた声で私の事を応援してくれるエイリちゃん。一年生とは思えないほどキレがある。
「エイリちゃん大好きっ!」
思わず感動してエイリちゃんに抱きついてしまった。
「みーとぅー、なのよ!」
過度なスキンシップを嫌うらしいこの国の人には駄目かと思ったけれど、エイリちゃんが抱きしめ返してくれたところを見るとセーフだろう。うん! それに、女の子同士だしね! 友達だからね! 恥ずかしいことなんてないよね。




