異能力について
「では、早速始めていきましようか」
ぱんっ。と手を叩く校長先生。校長先生は茶髪黒目のショートカットで、紫のカーディガンに黒い上品なスカートで、もう30数年ぐらい経てば貫禄あるおばあちゃんみたいな感じになりそうだけど、まだ、若い女性なので上品なお姉さんみたいなひとだ。
怒ると怖そうだ。ちなみに女子寮の寮監をしているらしい。
「まずは自己紹介してもらいましょうか」
そう、こちらを真っ直ぐ見つめてくる。何もかもを見透かされているような気になって気分が悪い。だけど目を離すのはもっと悪いと思い、目を反らすことなく、
「成瀬エナです。生年月日は☆y×・年7月30日で、今はまだ12歳です。趣味は読書 で、特技は木登りです」
お母さんに教えてもらった自己紹介の仕方を真似してみたのだけどこれでよかったのかな。ちなみに特技は木登りだけど、本当はそこまで得意ってわけでもないんだよね。最近やってないから。校長先生うーん。って手に顎を乗せて唸ってる。私は手に汗握って校長先生の動きを見ている。校長先生は急に手を叩くと、
「今のはテストに入らないわ。あなたを試させてもらったの」
そういいながら校長先生は光を放っていない水晶を持ってきた。一目見ただけでその水晶が異質であるとわかるような水晶。水晶なら、明かりの下に持ってくれば光の反射で、光って見えるはずなのに光を放っていないということはかなり異質であるとを後にお母さんに教えてもらった。
しかし、私にはよく見覚えのある水晶だった。
「これって、マナの強さをはかる水晶だよね」
答えはわかっているが一応念のために尋ねておく。念には念をいれてね。
「マナ? なあにそれ? 私はこれはごく限られた一部の人が触ったときのみ光る謎の水晶だと思っていたのよ」
それはお母さんの答え。それを補足するように、
「その一部の人は必ずと言って良いほど特殊な能力、私達は異能力と呼んでいるのだけど、それに目覚めるの。だから私達はその水晶を光らせる事ができる人のみを、ここに入学させているのよ」
と校長先生が言う。二人とも説明してほしいという事が顔に出ている。
「この世界では、知られていないようだけど、魔素という物質があるの。他の物質にあまり作用されずそのためなかなか知られることのなかった物質なのだけど人の思い。ううん願いに反応して、行動を起こす。願いの強さで起こる現象の強さが変わる。例えば火をおこしたいという願いと燃やし尽くしたいという願いなら後者の方が強い火ができる」
一度言葉を切る。校長先生は黙ってお茶を出してくれる。気のきく人だ。私はお茶を飲み話しを続ける。
「マナというのは願いを外に放出して魔素に届けるための機関で、マナの力は願いの強さと比例し、起こる現象の強さとも比例するの。他の世界では、魔力とか思念波って呼ばれていたりするけどね」
また、校長先生は黙ってお茶のお代わりを入れてくれる。ありがたい。好意を素直に受け取りお茶を飲む。お母さんも、校長先生も瞳が早く続きをと訴えている。私はうん。とうなずき返し話しを続ける。
「でも、相性があるからどれだけマナが強くても起こせない事も存在するの。この世界は魔素の濃度が低いから、特にその傾向が強いね。一人一つ自分の得意な願いを叶えるだけしかできない人が多いの」
ふう。長かった。私の知識の中身を全て語ったような物だ。
も、もちろんマナについてだけ。この程度で私の全ての知識だと思ったら大間違い。二人とも顎に手を当て難しい顔をしていろいろ考えている。当たり前かな、普通の反応。少し――ちょっぴりほんのちょっぴり――期待外れだとか思ったのは口が裂けても言えない。
だって、自分でもなぜそんなことを思ったのかよくわかっていないのだから。
後半は説明ばっかですね。