先生、五十歩百歩って言葉ご存じですか?
「異世界。存在してたんっすね……」
ぼんやりと呟くのはリュー。私はそれに苦笑いしか返せない。
なんというか、マジックのネタを知った子供のようだ。……いや、サプライズの誕生日会が開かれることを知って、嬉しいのだけど、相手が知らないと思ってるから、なんとももどかしい感じ?
いや、私の場合はお姉ちゃんとおんなじときに祝ってもらってたし、あっちの学校行ってなかったから、友達といなかったから、よく分からないけどね。
現実は時に残酷過ぎたね。でも、そうして人は大人になるんだよ。って、なに言ってるんだ私。
「うん」
「疑ったりしないとは言い切ることはできないかな……。ゴメンな?」
フミフミが謝るけど、私は別に気にしない。信じられてないのだから、異世界なんて。いきなり言われても、は……? ってなるだけなんでしょ?それが普通。なんだよね? この世界では。
普通とは何かの哲学の話になるから、閑話休題。
「疑ったりしないとは言い切れない、だけど、ううん、だからこそどんな世界なのか教えてください。えなち」
「はい!」
どうして、フミフミがリーダーなのかよくわかった。どれだけ、周りから信頼されているのか、そして、どれだけ、ふゆみんが苦労しているのかも。
「でも、どうせなら、文字数制限を掛けましょう。入試でも役立ちますよ」
思い付いた、と言うように手を叩く先生。いちいち数えるの面倒じゃないですか! 先生!
「先生がきちんとカウントしますので。1000文字ですよ。400字詰めの原稿用紙の二枚と半分ですね。待ってください。えっと、どこにしまいましたっけ」
先生は棚を片っ端から開けている。何故1000文字なのだろう、1200文字なら、三枚ぴったりなのに。
「先生、こっちですよ……」
あおやんが自分の後ろの棚から原稿用紙を出した。どこか疲れた感じがしている。
「あっきー先生は数字にこだわる人なんやで……コンマ何秒単位で遅れたとか言うてくるからなぁ……」
「あらあら、そんなに細かくないですよ? 私の母はコンマ何百秒単位で数えますから」
頬に手を当ててそういっても、先生、どっちもどっちですよ。
「先生、五十歩百歩って言葉ご存じっすか?」
リュー、よくそんな言葉知ってたね。変なところに感心してしまった……。
「ええ、どちらもあまり変わらないことでしたよね? それが?」
「つまり、コンマ何秒でも、コンマ何百秒でも同じだって話ですよ。何秒単位で遅れたと言う時点で細かいですから」
うん。あおやんの言うとおりだよ。先生。
「とにかく! 1000文字でまとめて下さいね? 成瀬さん」
「……はーい」
面倒な文字数制限だね。これじゃ、半分も語れないよ。仕方ない。簡潔に書こう。
千文字制限の本当の意味を恵那はまだ知らない。




