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異世界(地球)の中学校に通うことになりました!  作者: 雨森 海音
一年生、5月
54/75

呼び名

「成瀬恵那ちゃん、歓迎するよ! ようこそ、特研部へ!」


「よろしくお願いします!」


 私はお辞儀をする。顔をあげたときには、フミ先輩が何かを考えるようなポーズをしていた。


「どうしたんですか?」


「さあ? フミちゃん先輩がなに考えてるかいつもわからんからなぁ」


 私と凛ちゃんがそんな話をしている間に、フミ先輩は何かを閃いたようで。


「決めた! 皆のあだ名を作ろう!」


「は?」


「だから、皆のあだ名を作るの!」


「いや、それはわかるけどなんで?」


 突拍子もない発言に皆が頭にはてなマークを浮かべている。勿論、私も。葵くんの疑問はもっともだ。葵くんが聞いてなきゃ、他の誰かが聞いてただろう。


「んとね、皆の親睦を深めるため?」


「なるほどな……なぜ疑問系?」


「何となく?」


 葵くんとフミ先輩は顔を見合わせて笑っている。その笑顔のまま私達に言う。


「最初はなれないと思うけど、頑張ってやろう? ダメ……かな?」


 だんだんと尻すぼみになっていく言葉を聞いて、何故か、犬を思い出した。


「まあ、私は構わないが……」


 一番初めに賛成したのは冬実先輩。少し意外だった。


「俺は別になんでもいいや、まあ、賛成かな?」


「僕は賛成っす! 葵くんなんすか、もっと熱くなるっす!」


 葵くんとリューマ先輩も賛成。リューマ先輩ってそんな性格だったけ……。独特なしゃべり方をしているとは思っていたけどさ。え? 私は賛成かどうなのかって? そりゃもちろん――


「私も良いと思います!」


 良いに決まってる。だって、楽しそうだし。否定する要素ないし。終わりよければ全て良しって言うでしょ? それと同じで楽しければ全て良しなんだよ。


「なんや、あとはうちだけか……こんなん、賛成に決まってるやないか! 楽しそうやん!」


「皆、ありがとう~!」


 感激のあまりにか、フミ先輩が皆に抱きつく。葵くん、リューマ先輩は顔が真っ赤だ。


「そうたなったら、決めよう!」


「フミちゃん先輩はフミフミで良いと思うんさな、うちは」


「良いじゃないっすか!」


「いいね! 私のことはフミフミって呼んでね?」


 凛ちゃんの案で決まった。フミフミ。呼び捨てで良いのかな……。心の中で呼ぶならいいよね。うん。そうだよね? そうだと言って!


「じゃあ、凛ちゃんはね……」


「お凛」


「長いっ!」


 冬実先輩が提案するも却下されていた……フミフミの方が長いけどね。


「凛姫」


「採用!」


 ダメ元で言ってみたら採用された。判断基準がわからない。


「姫かいな」


 凛姫は苦笑している。


「よし、次はリューマね。リューでいっか」


「扱いが雑すぎるっす!」


 リューが叫んでる。きっと、カズマ君の上位種だ……。おんなじ感じだ。


「じゃあ、葵くんはどないする?」


「あおやん」


「えー」


 フミフミ、冬実先輩の発言をことごとく却下してる……。どうしてだろ。


「あおやんでええやん……」


「……なんでもいいや。もう」


 凛ちゃんは若干呆れながら、葵くんは諦めてあおやんを受け入れる姿勢。悟りを開いている? そんな感じだと思う。


「むー、次は冬実……ふゆみん」


「まあ、別に、かまわない」


 冬実先輩もといふゆみんは口調とは裏腹に満更でも無さそうだ。


「最後は成瀬ちゃんやな~」


「そう言えば、有岡からえなち、って呼ばれてなかったか?」


「そうだよー」


 あおやんが思い出したように言ったので、私は肯定する。そういや、ひよちゃんの苗字って有岡だったけ。


「なら、それで決まりだねっ! よろしくねー。えなち?」


「はい!」


 ぶっちゃけ、えなち、に決まってよかった。だって、呼ばれなれてるの以外だと反応できなさそうだもん。


 こうして、特研部メンバーのあだ名が決まった。

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