ありがとう
英語の授業は終わりを告げる。
「きりーつ、気を付けー……れーい」
「ありがとうございましたぁ」
号令と共に皆変える準備を始める。
「ゼンくん……寝てたでしょ」
「あはは、バレた?」
「バレた? じゃないよ。先生が気づいてないみたいだから良かったけど」
遠目で見ると、ノートを写しているようにしか見えないからね。
「だって英語眠いからさ」
「そうかな」
私は英語は寝れないなぁ。先生がハイテンションで。英語の先生の名前は安東先生。本当にハイテンション。ついたあだ名がハイテン安東。これは私命名ではない。
「国語は起きてられるんだけどね……」
「逆に聞くよ。なんであれで起きてられるの?」
国語は今古典。先生が暗唱しようとか言ってて、私は全部覚えてるけど、皆は何度も言って覚えるから、もう子守唄だよ。
「お経みたいで良いじゃん」
「お経が何かは知らないけど、ただの子守唄だよ」
「お経って言うのはね、私もきちんと知ってるわけじゃないけど、お寺で御坊さんが読む、多分かなり大事なものだと思うけど……すごく眠くなるわね」
晴菜ちゃんが振り向いて説明してくれる。ふむ、つまり、ゼンくんはおかしいと言うわけだね。よくわかります。
「あ、そうだエナ。土曜日の昼から空いてる?」
「うん」
「じゃあ、第1回目の会議をするから、寮の私の部屋にリナさんと来て。508よ」
「わかった」
唐突だし、何をするのかも全くわからないけど、まあいいや、楽しそうだし。
◇◇
放課後はお姉ちゃんの引っ越し作業。案外すぐに終わった。 一日前倒ししてる。
翌日金曜日。何故かひよちゃんや晴菜ちゃん達がそわそわしていること、それに私とお姉ちゃんが揃って首をかしげたこと以外、特に何もなかった。
「エナちゃ……エナ、リナちゃんと二時だよ? 片付けとかするから、ちょっとくらい遅く来ても構わないよ~」
放課後には茜ちゃんがそう言って帰っていった。なんか、やっぱり変だよ。まあ、なんでもいっか。
その翌日。五月十四日土曜日。こちらに来てから九日目。午後2時。
「お邪魔しまーす」
私とお姉ちゃんは中に入る。何故か電気が消えていて窓も閉じられている。
パンパン、パン、パン。なにかが爆発したような音が4回聞こえた。そして、電気が着く。
「ウェルカムトゥ雪薔薇ジュニアハイスクール!」
「ささ、こっちおいでよ!」
ひよちゃんと茜ちゃんが私達の手を取り引っ張る。されるがままに座る。
「今日は、エナとリナちゃんの歓迎会よ」
「た、楽しんでいくのよ!」
晴菜ちゃんが説明してくれ、エイリちゃんが盛り上げようと頑張っている。部屋を見渡せば、ようこそ、や歓迎会、など色々と飾り付けされていた。
「ありがとうございます」
お姉ちゃんが言う。私も続いて言う。
「皆、ありがとう!」
「良いってことよ……改めてこれからよろしくね。お二人さん」
「よろしくだね! エナ、リナ!」
「少し、恥ずかしいかもですね……でも、改めてよろしくお願いしますね、えなち、りなぽん」
「ようこそ、なのよ!」
そうして始まった歓迎会は夜になっても止まらず、結局、そのままお泊まり会に移行したのだった。




