リナ
そうだ、お姉ちゃんや皆に説明しないといけないんだ。
「お姉ちゃんはどこまで知ってるの?」
「そう、ね。それを話した方が早いかも知れないわね」
そう言って、話し出したお姉ちゃん。その話しには私ですら知らない話がいくつかあったんだ。というわけで、ここからはお姉ちゃんにバトンタッチしようと思う。
◇
私達此花一族は、地球の人たちが言う異世界、ファナザリースとも少し違うところに住んでいるの。正式な名前は無いのだけれど、精霊界って呼ばれることが多いから、それで通そうと思うの。
此花がそこにすむ理由はただ一つ。先祖代々受け継いできた花畑を守るため。花畑はもう凄いのよ?
普段は広すぎるから微精霊達に手伝ってもらってるのだけど。微精霊というのは精霊の子供のときの呼び名。
そんな話しは置いておいて、此花は誰が作ったのか、どうしてそんな物があるのかすら、わからないのだけどいくつか、ルールがあるの。
例えば、二十歳まで家名を名乗らない。私はこちらに来たとき破っちゃったけどね。
他にも色々とあるけど、長くなるからやめよう。
我が家には他の誰にも伝えてない、けれど、大事な役割がある。知っているのは私とお母さんだけ。エナにも、お父さんにも教えてない。
それは、世界のバランスを保つこと。花畑の花は世界のバランスを保つ為に咲いている。
神様のイタズラで、あの花達が全て枯れれば世界が滅ぶようになっているらしい。神様はどうしてこんなことをしたのだろうね。
そんな大事な場所だけど、いや、だからこそ、入ってこれる人は少ない。私が生きているなかで入ってきた人はいない。
ただ、お母さんの代は三人いるらしい。そのうちの一人はお父さん。
まあ、綺麗な花畑のある、行くのが難しい精霊界と呼ばれている場所がある、としか伝わってないからね。物好きか迷い混んだ人しか来ない。
この地球にも、精霊界と繋がっているところが一つある。そう、この学園の寮の前にある、大きな樹。勿論、今回もね。そこで、エナを見つけて、編入することにしたの。
「あれ? リナさんとえなちは姉妹なんだよね?」
「そうだよ。あ、今、私は成瀬ゆかりさんの養子になってるから、名字が違うだけだから」
「なるほどね」
成瀬エナ、なんて紹介をされてびびったけど、そういうことだったのね。本当に悪い妹。
「だから、私は……」
「そうね。あんたは此花の一族と縁を切ることになるのね」
言いにくそうだったエナの代わりに私が言い切る。
「……うん」
「お母さんには私から言っておく……けど、挨拶くらい行きなさいよね」
「ありがとう。わかった」
私もお母さんも知っていた。いや、気づいていた。エナはいつまでも家にいる子じゃないって。いつか、巣立っちゃうって。まさか、こんな形で訪れるなんて思いもよらなかったけど。
「この話しは終わりにしましょうよ。次はえなちの話を聞かせてよ」
私もエナも暗くなりそうだったので、ひよさんの提案は渡舟だ。エナも頷いて語り出す。
「――でね、私達は先輩に勝ったんだよ! あれ? お姉ちゃん?」
丁度、合同授業の話をしていた。今までに見たことのないくらい笑顔で話すエナにこちらも少し笑顔になる。私はエナはこちらで過ごすべきだと考えている。
「何でもないわよ。ただ……」
「ただ?」
「良い友達に恵まれたわね」
「うん!」
私が言えばエナは満面の笑みで答える。友達はお金に替えられないから、人生で一番大事にすべきだと私は考えている。
最初は、成人になるまでは家で過ごして欲しいって思ってた。でも、こんなに楽しそうなエナを連れ戻すなんてできない。エナはやっぱり家に縛られるべきじゃない。だから、自由に生きてほしい。
だって、私はエナのお姉ちゃんだから、妹の幸せを願うのは当たり前でしょう? それはたとえ、家族の縁が切れたって変わりはないのだから。




