鬼ごっこ~そして日常へ~
私は、四時頃にひよちゃん達が来ることを知った。理由は……乙女の秘密です。私の情報力を舐めないでね。
「あ、私の専売特許が……」
まあ、ひよちゃんには負けますよ?流石にね。 だから、落ち込まないでっ!
「あはは、まあ、ドンマイ。それより、そのあとの話を聞かせてくれない? 」
……あれ? 何でだろう。冷や汗がたれる。ほんと、何でだろうね……?
「あ、うん。待ってね」
そう、私は、私は……どうしたんだっけ? あれ? というか、そもそもどこまで話したんだっけ。おかしい、おかしいよ。いくら最近忘れることが多くなったとは言え、こんなのおかしいよ。
「エナちゃん? 」
「どうしたのかしら」
ゼン君と永山さんが聴いてくるけど私は考え込んでいた。
何でだろう。どうして思い出せないのだろう……と。
「君らが知るのはそこまでで良いんだよ。勿論、エナちゃんもね。まだ朝は早い。もう少し眠ってな」
私達の耳に残ったのは少し冷たい声だった。そう、謎仮面Xの声だった。
そして、意識は暗転する。こんな時にどうかと思ったけど、最近こんなこと多いなぁ。って、思ってしまう私は冷静だったのかはたまた現実逃避だったのか。それは永遠にわからないのである。
☆―☆―☆
「えなちー! 朝だよ! 」
「朝かしら、起きるのよ!」
遠くから声がする。でも、物理的にはそこまで離れてはいないと思う。多分。
「起きろ! えなち! 」
ひよちゃんの張り手がとんできて目が覚めた。そして、一言。
「なんで部屋に……」
私の一言に二人は目を合わせて言う。
「起きないから? 」
「お寝坊さんは早めに起こすのよ」
外は明るく、時計を見れば六時で、まだ余裕で間に合う。
「早くない? 」
「誰だったかな~。この前朝ご飯食べ損ねてたの」
ぐはっ。それを言われるとぐうの音もでないよ。
ひよちゃんと永山さん……あ、エイリちゃんはドアのところで待っててくれる。でも、着替えるからそこを閉めて欲しいよ。
「ひーちゃん、閉めた方が良いと思うのよ」
「あ、ゴメン」
私が言う前にエイリちゃんが気付いてくれた。なので、私は着替える。
「そう言えば、今日は午後から異能について授業があるんだよね」
「そうなのよ」
「そう、だっけ? 」
ひよちゃんはクラスが違うから、もしかして伝達ミスがあったのかもしれない。
「そうそう、一年生と三年生の合同授業だって」
「ふーん」
そんなことを話している間に着替え終わる。後は髪を結ぶだけ。
「えーなち! 私が結んであげましょうぞ」
「なにそれ」
ひよちゃんの言い方が面白くてつい笑ってしまう。エイリちゃんも笑いを堪えてる。
「いいから座るの! 」
ひよちゃんに引っ張られ、鏡の前に座る。ひよちゃんは鼻唄を歌いながら私の髪を解いていく。
「これでどうだ! 」
「おおー、なのよ」
なんと言うことでしょう。今日の私はお下げです。ひよちゃんとお揃いですよ。ビックリして、変な口調になっちゃった。
「わ、私もして欲しいこともなかったりしなかったり……」
エイリちゃん、なに言ってるのかわかんないよ。
「はいはい。じゃ、えなち、代わってくれる? 」
「勿論! 」
私にしていた時と同じようにエイリちゃんの髪を結んでいく。器用だなぁ。
「さ、出来たことだし、食堂へ参りますか! 」
「うん! 」
「イエスマムなのよ! 」
……時々エイリちゃんの言うことがよくわからないことがあるよね。日本語って難しい!
補足すると
「幻想世界」という魔法の効果で現実との時間差ができてました。
あちらでは五時間たとうと、こちらでは五分しか経ってない……いや、五分かどうかはわかりませんけどね。
エイリちゃんの言うことがわからないとは、エナはまだまだ勉強しなくちゃね。
一応、イエスマムだけならわかってますよ。変な語尾がついてるからわかってないだけで。
結論は日本語って難しい!




