鬼ごっこ~東部・西部~
途中でカズマに変更します。
「ここは……」
ただの公園。大きな木があるだけの普通の公園。ブランコや滑り台の遊具もある。真っ直ぐに進んだら、大体真ん中ぐらいにあった。
「そうだ、あの時……」
何かが一瞬目の奥で見えた。なんと言えばいいのかわからないが、まあ、今まで忘れていたことを思い出した感じだ。
――私、エーリ。よろしくなのよ!
――これから、私達四人は一生の友達ですよ!
――そこまでいく? まあ、なんだっていいや。
エーリ、ひよ、カズマの声がする。
どうして今まで忘れていたのだろうか。僕らは仲間だったと言うのに。
いや、理由はわかっている。校長先生が言っていた事だろう。
「思い出した?」
僕の後ろから、謎仮面Xの声がする。振り向く事もなく頷く。
「どうして、忘れていたのかな」
「知りたい?」
今度は振り向いて首を縦に振る。
「そう、それはね――」
そう言って謎仮面Xは話し始めた。
砂時計は四分の一落ちていた。
――――
僕はカズマ。いつも残念とか言われるけど、何だかんだで女子にはモテてるから。この前のバレンタインなんかね……いや、今はそれどころじゃないよね。
僕は今は西部にいる。とりあえず、壁沿いに走って来たのだけどなにもなかったから、真ん中を走っている。でも、走るのに疲れたから歩く。
「そう言えば今日の学校はどうなってるのかな」
「さあ? 知りません」
トランシーバからひよちゃんの声が帰って来た。
まあ、別にどうでも良かったのだけど。
「……ここ」
公園。遊具があって大きな木があるだけの普通の公園。
「どうかしましたか? 」
トランシーバーを切る。ひよちゃんには後で謝らないと。僕はいつも彼女に頭が上がらない。それは昔からだった。
――遅かったね
何処からか声がする。男か女か、若いのか年よりなのかもわからない声だ。
「悪かったね」
――待ちくたびれたよ。もう一人は早く着いたのに
「もう一人? ゼンのこと? 」
今はここにいない友人のことを思いだし、声に答える。
「というか、いい加減姿をみせれば? 」
強い風が吹き、木が音を立てる。折れる折れる! ヤバイって!
「仕方ないなぁ」
そう言って木から顔を出したのはエナちゃんだった。エナちゃんが出てきた途端風がやんだ。
「どうして……」
「それも含めて教えてあげる」
今捕まえることも考えたけれど、それよりも好奇心が勝ってしまった。しかし、エナちゃんは笑ってこう言った。
「私を捕まえられたらね」
そうだ。今は鬼ごっこの最中で、僕らは鬼で彼女が逃げる。簡単なことだ。彼女を捕まえるだけで良い。その時はそう考えていた。
トランシーバで仲間に伝えるということも忘れて。
今は砂時計の砂は半分まで減っている。タイムリミットまで、あと二時間半。そう、つまり、あと二時間半、僕は一人全力で走ることになった。
エナちゃんが他の区域に行ったことにも気づかないまま……。




