鬼ごっこ~東部1~
時計を持ってないからわからないけど、体感で三分後、僕達は動けるようになった。
「別れて探すべきかな? 」
珍しく、カズマがそんな事を言う。カズマはいつも誰かの後ろに着いて行ってるのに。
「でも、何があるかわかりませんよ? 」
「でも、この世界広そうなのよ」
……。
これは僕がどちらにつくかで意見が割れそうだ。うーん。どちらも一理あるんだけどな。
「まあ、えなちのことだから別れてほしくてこんなの渡したんだろうね」
ひよちゃんは少し口角を上げて、視線を取り出したトランシーバーに向け、こう続ける。
「なら、お望み通り動いてあげますよ」
あれ? 僕はなにも言う必要無かったね。
「じゃあ、千は東部ね」
なんか、カズマに指図されると腹立つな。
「なら、カズマは西部な」
「じゃあ、私は北部ですね」
「そうなったら私は南部しかないのよ」
四人とも、それぞれの鏡の前に立つ。
「何かあったらこれね? 」
「はい」
そう言ってトランシーバーを見せる。
「じゃあ、行こうか」
「うん! 」
そうして、鬼ごっこは幕を開けた。砂時計の砂はまだまだ残っている――。
そうして、東部へと足を踏み入れた僕。しかし、エナちゃんの姿は見当たらなかった。
「こちらカズマ~。エナちゃん見てないよ」
「こちらひよ。私もです」
「こちらエイリ。こっちもなのよ。千は? 」
エイリ? ああ、永山さんか……。
「こちらゼン。見てないよ」
「そうですか。では、トランシーバーについているマップを頼りに、見落とさないように探しましょう」
トランシーバーにマップ? あ、本当だ。mapと書いてあるボタンを押すと出てきた。ゲームお馴染みに方眼状のマップだ。僕の歩いた場所の近くをマッピングしてくれる。鏡の位置だけは表示してあるようで、東方向にある。そして、その先は壁のようだ。ちなみに、僕の後ろから斜めにかけて大きな壁が2つある。簡単に言うとあれだ。8方位の方位図。それの北東から東を通って南東にかけてを東部としている感じだ。
そして、北東と南東のところに壁がある。そんな感じに考えてくれればいい。
見た感じでは、鏡のあるところが一番膨らんでいる扇形のように思える。マップはそこまで表示していない。
「まあ、行きますか」
そうして、僕は歩き出した。その先に何があるのかを不安に思いながら。




