ゲームを始めよう
眩い光に目を閉じる。
「ここは……」
誰かの声がする。誰だろう。目を開けてみる。そこには、色とりどりの花畑が広がっていた。
「綺麗……だね」
そうとしか言い表せなかった。
「そうですね」
「そうなのよ」
「うん、そうだね」
三人ともそのようで、見入っている。
「綺麗でしょ。私の自慢の場所」
後ろからエナちゃんの声がする。その声に振り向けば、少し悲しげな顔をして、いつもは二つに結んだ髪をほどいているエナちゃんがいた。
「えなち……?」
「どうしたのかしら」
ひよちゃんと誰かがそんなエナちゃんに疑問を持つ。
「ここね、私の家をモチーフに作ったんだ。だからかな? 家族のことを思い出しちゃうよ」
泣きそうな顔だった。胸が痛くなって、今すぐにでも抱きしめたかった。だけど、体は動かなかった。
そんな僕たちを見て、彼女は言う。
「ねえ、私とゲームをしよう? 拒否権はないよ」
それは、悪夢の始まりを告げた。
―――
「種目は鬼ごっこ。ルールはこう
・私……エナが逃げて、皆が追いかける。
・エナに触るか、五時間の経過でゲームは終わり。
・範囲はこの世界全て。
・10分ごとにエナの通った区域をヒントとして出す。
・この世界は5つの区域に別けてあるので、それぞれ北部、南部、西部、東部、中部と呼ぶ。
・区域の出入り口はそれぞれ鏡であり、それ以外は存在しない。
・鏡はそれぞれの区域に二ヶ所設置してあり、対応する区域の鏡に飛ぶ。
……こんなもんかな? って、あ、これ。どうぞ」
そう言って渡されたのはトランシーバーのようなもの。
「使い方はまあ、わかるよね。この世界ならどこにいても繋がるようにしてあるから安心して」
なんとなくだけど使い方はわかる。
「他に質問は?」
エナちゃんが聞く。
「五時間って……どうやって計るの?」
え、そっち? ひよちゃん、聞くところそっち?
「え? あ、それはね」
そう言いながらパチンッと指を鳴らすエナちゃん。すると遥か上空に大きな砂時計が現れた。
「こう言うことっ!」
エナちゃんはいつになく明るい声で言うけれど僕には、空元気のようにしか見えなかった。他の三人はそうではないようだ。
「じゃあ、もう質問はないよね! 今から三分後君たちに掛けた魔法が解けるから、追いかけて来てね!」
そう言って、東部と書かれた鏡に飛び込むエナちゃん。文字通り離れたわけだけど、心の距離も離れた気がしたのは気のせいだといいな。
もう少し千君のターンです?
多分。




