ありがとう……なのよ!
「……いやなのよ。助けてほしいのよ……」
そんな風に掠れた声をだす少女。少女は膝を丸めて俯いていた。なんと声をかければいいのかわからなかった。
「ずっと一人ぼっちなのよ……」
そう言うと少女は顔をあげる。それが誰なのか、先程までは全くわからなかったが、今は誰なのかわかる。
「エイリさん! 」
永山 瑛梨。それがこの少女の名前だ。逆にどうして思い出せなかったのかが不思議でたまらない。エイリは怯えたような顔で、私に向かって言う。
「あなた、誰なのよ? 」
その一言は私に大きな衝動を与えた。駆け寄ろうとした足を止めるほどに。
「私はっ……私は……」
伝えようと思う気持ちが空回って、声がでない。怪訝そうな顔をするエイリ。
「誰なのよ? 」
その言葉に私は深呼吸して一度落ち着く。そして、お腹から大きく息を吸い、叫ぶ。
「私の名前は有岡ひよです! 貴女の友達です! 」
今度こそ、止まることなくエイリに駆け寄る。しかし、透明な見えない壁に阻まれてしまった。
「どうしてですか……」
私の目には涙がたまる。なぜだかわからなかったが、エイリの目にも涙が溜まっていた。
「貴女はひよじゃないのよ。ひーちゃんを騙るななのよ! 」
その、泣きながら怒るエイリの言葉で思い出した。私たちはずっと前に約束したのだ。そう――と。それが守れてないから拒絶されてしまったのだろうか。そう思うと、さっきまでの自分が腹立たしくなる。だから、私は叫ぶ。今度こそ、間違えないように。
「えいたん! 」
泣きながら怒る顔に笑顔が増えた。エイリは泣きながら怒り笑っている。
「もっと早く気づいてよ! ずっと待ってたのだからね! ひーちゃん」
私達は同じように泣きながら笑って抱き合った。もう二度と離れてしまわないように。
その数秒後、もう涙は止まっていた。
「でも、プリンスさんは迎えに来てくれなかったのにひーちゃんが来るなんて思わなかったのよ」
どこか寂しそうな顔をするえーたんを強く抱き締める。
「ごめんね」
「ひーちゃんが謝る必要ないのよ」
私達は色々話した。お互いにお互いを知らなかったことが多かった。
「でも、どうして今」
「さあ? 私にはわからないのよ。ただ、私には理解できないような大きな力が働いたとしか。そう、例えば異世界と繋がったとか……」
異世界……それを聞くと、私のもう一人の友達が出てくる。異世界からの転校生なのだ。
「あの子も勝手に巻き込んじゃったのよ……」
えーたんも同じ事を考えていたようだ。私はえーたんの頭を撫でる。
「くすぐったいのよ」
と、言いつつも私の手をどけようともしない。そんなえーたんに私は言う。
「じゃあ、謝らないとね。勝手に巻き込んでごめんなさい。ってね」
「分かっているのよ。でも……」
頭から手を離し、えーたんの前に立ち、その手を両手でつかむ。
「なら、私も一緒に謝ってあげる! 」
大きく見開いた目には私が映っている。
「ありがとう……なのよ」
顔を赤く染めて言ったえーたんに何かを言おうとして、そこで意識は途絶えた。
なんか謎展開!




