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異世界(地球)の中学校に通うことになりました!  作者: 雨森 海音
一年生、5月
27/75

ありがとう……なのよ!

「……いやなのよ。助けてほしいのよ……」


そんな風に掠れた声をだす少女。少女は膝を丸めて俯いていた。なんと声をかければいいのかわからなかった。


「ずっと一人ぼっちなのよ……」


そう言うと少女は顔をあげる。それが誰なのか、先程までは全くわからなかったが、今は誰なのかわかる。


「エイリさん! 」


永山 瑛梨エイリ。それがこの少女の名前だ。逆にどうして思い出せなかったのかが不思議でたまらない。エイリは怯えたような顔で、私に向かって言う。


「あなた、誰なのよ? 」


その一言は私に大きな衝動を与えた。駆け寄ろうとした足を止めるほどに。


「私はっ……私は……」


伝えようと思う気持ちが空回って、声がでない。怪訝そうな顔をするエイリ。


「誰なのよ? 」


その言葉に私は深呼吸して一度落ち着く。そして、お腹から大きく息を吸い、叫ぶ。


「私の名前は有岡ひよです! 貴女の友達です! 」


今度こそ、止まることなくエイリに駆け寄る。しかし、透明な見えない壁に阻まれてしまった。


「どうしてですか……」


私の目には涙がたまる。なぜだかわからなかったが、エイリの目にも涙が溜まっていた。


「貴女はひよじゃないのよ。ひーちゃんを騙るななのよ! 」


その、泣きながら怒るエイリの言葉で思い出した。私たちはずっと前に約束したのだ。そう――と。それが守れてないから拒絶されてしまったのだろうか。そう思うと、さっきまでの自分が腹立たしくなる。だから、私は叫ぶ。今度こそ、間違えないように。


「えいたん! 」


泣きながら怒る顔に笑顔が増えた。エイリは泣きながら怒り笑っている。


「もっと早く気づいてよ! ずっと待ってたのだからね! ひーちゃん」


私達は同じように泣きながら笑って抱き合った。もう二度と離れてしまわないように。

その数秒後、もう涙は止まっていた。


「でも、プリンスさんは迎えに来てくれなかったのにひーちゃんが来るなんて思わなかったのよ」


どこか寂しそうな顔をするえーたんを強く抱き締める。


「ごめんね」


「ひーちゃんが謝る必要ないのよ」


私達は色々話した。お互いにお互いを知らなかったことが多かった。


「でも、どうして今」


「さあ? 私にはわからないのよ。ただ、私には理解できないような大きな力が働いたとしか。そう、例えば異世界と繋がったとか……」


異世界……それを聞くと、私のもう一人の友達が出てくる。異世界からの転校生なのだ。


「あの子も勝手に巻き込んじゃったのよ……」


えーたんも同じ事を考えていたようだ。私はえーたんの頭を撫でる。


「くすぐったいのよ」


と、言いつつも私の手をどけようともしない。そんなえーたんに私は言う。


「じゃあ、謝らないとね。勝手に巻き込んでごめんなさい。ってね」


「分かっているのよ。でも……」


頭から手を離し、えーたんの前に立ち、その手を両手でつかむ。


「なら、私も一緒に謝ってあげる! 」


大きく見開いた目には私が映っている。


「ありがとう……なのよ」


顔を赤く染めて言ったえーたんに何かを言おうとして、そこで意識は途絶えた。

なんか謎展開!

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