腹が減っては戦ができぬ
「ピンポンパンポーン! ヤッホー、じゃなかった。おはよう! えなち! 」
寮の部屋の前にひよちゃんがいて、私を呼んでいる。一昨日、校舎まで一緒に行くことを約束したのだ。
「はーい」
昨日は特に何もなく、過ぎ去った。そう、私が探そうと決めた物も見つかってはいない。これについては一日やそこらで解決するわけがないとわかっているので気にしてはいない。
「おはよう。ひよちゃん」
ドアを開ければ、満面の笑みを浮かべたひよちゃんがいた。そんなことはさっきからわかっていたが。
「おはよう。えなち」
「今日はテンション高いね」
「そうかな? そうかも知れないねー。さあ、どうでしょう 」
「絶対にテンション高いよ」
そんな他愛のない話しをしながら、階段を下りる。この時間はエレベーターが混んでいて、階段の方が早いのだ。
「あ、朝御飯を食べてないや」
「え、えなち、大丈夫なの? 」
私は急いで女子寮を出て、食堂に行くと、食堂はもうしまっていた。
「どうしよう」
「プチ商店街も開いてないからねー。と言うか、食堂に居なかったのはこういうことか~」
今の状況は最悪だ。あと、十分早ければ、食堂は開いていた。プチ商店街はあと、十五分後に始まる。しかし、あと十分で予鈴だ。
「うう、朝御飯……」
「よ! どうかしたのか? 」
後ろから声をかけてきたのはカズドンこと、カズマ君だ。
「えなちが朝御飯を食べ損ねたの」
「そうなの? 僕、昨日買ったパンなら持ってるよ」
カズマ君のその声は、救いの神の声ように聞こえた
「良いの? 」
「うん。どうせ捨てるつもりだったし」
「ありがとう」
そう言ってカズマ君からパンを受けとる。カツサンドと言うらしい。
「えなち、早く食べないと間に合わないよ」
そうだった。早く食べないと。
「いただきます」
その後、三分で食べ終わった。それを見た二人の感想がこうだ。
「カップラーメンがぎりぎり作れるか作れないかの瀬戸際だったね~」
「三分間しか地球に居ることができないヒーローみたいだったね」
どっちがどっちの感想か当てるのは至難の技だろう。私も文章でみたらわからない。
「急ごう。あと、七分だ! 」
「そだね! 」
「うん、急ごっか~! 」
私達は校舎に向かって走り出した。寮の窓からこちらをじっと見る視線に気づかずに。




