お泊まり会
「もうそろそろ寝よっか」
その言葉に従い、布団に入る。
いつの間にかもう九時になっていた。
この学園では、一年生は九時に、二年生は十時三年生は十一時までには電気を消さないと、怒られる。
どうしても用があるときは寮監様に許可を貰う。
「電気消すよ!」
「オッケー」
一瞬で暗闇になる。この学園にも一応外灯はあるが、私の部屋は六階なのでそとの光が差し込むことはない。
ここは、田舎らしい。
私から見れば三階建て以上ってだけであり得ないけどね。
勇者様のおかげで、三階建てまでは、珍しくなかった。
ゴソゴソ。ひよちゃんが何かしている。ひよちゃん寝れないのかな?
「えなち寝れないの? 」
「うん。ひよちゃんも? 」
「そうなの」
「おしゃべりしよっか」
「良いよ! 」
ふふっ。嬉しいな。私達は向かい合って話せるように布団を移動させた。
「じゃあ、えなちはクラスに気になる人はいる? 」
は、はあ? いや、いると言えばいるような、いないと言えばいないような……うーん。
「気になると言えば、隣の席の子かな? 」
「どんな子? 」
うーん、えっとね。
「不思議な子。わかんないや」
きっと、見た目だけなら説明できる。だけど、そんなので片付けちゃダメな気がするんだ。
「なにそれ」
「よくわからないけど、すごーく気になる子」
今だかつて感じたことのない気がする感じ。
昔、何度も感じたことのあるような感じ。
ひよちゃんに対して感じてるものと似てるけど全然違う。
わかってることはたくさんある。だけど、全然わからない。
苦しくて甘い。
愛とは違う。
恋なのかな?
でも、どちらかと言うと欲しい。
その人のすべてが欲しい。
これが愛な訳がない。
愛はもっとどろどろとして、ねじまがって、相手のことしか考えられなくなるようなもの。ううん、相手のことなんて考えてない。自分の満足ばかりを満たそうとするもの。
あれ? 当てはまってないか?
ううーん
「ねえ、ひよちゃん。愛って何かな?」
「はあ? ずいぶん哲学的なことを言いますね」
まあ、と考え込んでいるひよちゃん。そして、
「愛は、自分だけじゃ得ることのできないものですかね。いや、こんな定義の話じゃないですよね、して欲しいのは……」
「なにいってるの? 」
「独り言です。愛って感じていれば幸福で、他の人に向けられていたら、嫉妬する。だけど、……」
ひよちゃんが急に黙った。
「ひよちゃん?」
「はい」
虚ろな目をしてる。眠いとか、そんなんじゃなく。
「ひよちゃん、ひよちゃん」
おかしいよ、どうして?
私が『愛』って言った時から変だった。
だって、ひよちゃん丁寧語に戻ってたもん。
どうして? ひよちゃん。いやだ。怖いよ。ひよちゃん。どうして。また、私を一人にするの?
いやだ。やだよぉ。ひよちゃんひよちゃん。
もとに戻っておねがい。
その時だった。私の<転生する探求者>が青く光りながら浮き上がり一つのページを示したのだ。
そして、そのページには「適切な物はこれです。唱えてください」
と書いててありその下には、私の世界の言葉で「永久に閉ざされた牢獄。永遠に出ることのできない夢。始まった物語。終わりのない世界。いつまでも続く螺旋のように、終わらない回廊。止まることはなくしかし、動くことのない静かに漂うもの。いつの日にか終わることを望む少女の夢。深い、深い眠りにつけ睡眠魔法」
と、書いてあったので、急いで唱えた。
すると、ひよちゃんは目を閉じて寝てしまった。
それと同時に役目を終えたと言わんばかりに本は光ることと浮遊を止め、この前は消えたけれど今回は小さくなり、私の首の前で私の首に巻き付くようにチェーンが伸びてネックレスとして収まった。
そして、私は虚脱感に襲われ眠ってしまった。




