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俺はあいつの実験台  作者: king
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出会い

5月中旬ごろ、なんとなくクラスのなかで仲良しができて、これまたなんとなく部活に入って、なんとなく一日を過ごす。

普通の人間ならそうした。だが、俺にはそれはあまりに退屈だった。ライトノベルの主人公達の青春ドラマに憧れていた俺は、単調な生活に飽き飽きし、もっと生活にスパイスを求めていた。

しかし、世の中そんな大事件があるわけでもなく、俺は半ば諦めていた。

そして、ある放課後の暮れがた。


「………」

外の夕陽から射す光が当たり、自然に目が覚める。放課後の教室には、寝ていた俺と2、3人の自習する者しかいなかった。

ゆっくりと体を起こし、腕を後ろにやって伸びをする。

「う~~んっっ!!」

少し変な声が出て、自習していた1人がこちらを一瞥したが、気にすることなく、俺は帰る準備を始めた。

外に出ると校庭では、野球部とサッカー部がお互いに場所を譲り合いながら練習をしていた。

この学園の校庭は狭く、お互いに譲り合ってやるか他の場所、例えば河川敷のグラウンドでやるなど、狭いなりにうまくやらねなくてはいけなかった。そのせいか、この学園で県大会や甲子園を目指すことは難しい。練習量を確保できないのだ。

そんな議論を頭のなかで行い、では解決策はどうするかと考え始め、気がつくと学校から離れた河川敷の土手の上にいた。

下には公園などがあり、子供たちが遊んでいる。その先にグラウンドがある。だが、誰もいなかった 。

(誰も使ってないのか…)

そう思いながら歩き、グランドに近づくと1人の姿を確認できた。

「お、1人いた」

しかし、そいつは明らかに運動部ではなかった。

なぜなら、そいつは全身に白衣を身に纏い、なにか組み立てていたからだ。体つきからして女性だ。

俺は足を止めて、何事かと思った。

「なんだ、あれ?」

円筒形の胴体に4枚の翼、そしてて先端は円錐形。

しばらく、まじまじと見ていた俺に、あるひとつの単語が浮かんできた。


ロケット


俺の学園に科学部的ものはなかったはずだが、となると個人で作ったのか。

なにか危なげなにおいが漂ってくる感じがして、通りすぎようと思ったが、その危険な匂いに釣られてしまった。

土手から下に降りる。

そしてグラウンドに近づき、中に入ると、こちらの気配に気づいたのか白衣の女性がこちらを振り向いた。

俺は足を止めた。

しかし、女性が手招きして、誘う。

様子からして、手伝って欲しいようだ。

近くまで来て挨拶する。

「こんにちは……」

俺は人と付き合うのは苦手だが、それでも礼儀正しい方だ。

白衣はこっちまで越させたにも関わらず、挨拶せず、こちらを見ようともしないでロケットらしきものに集中している。

「突然だけど、君手伝ってくれないか?」

声は、女らしいが、口調は男っぽい。

「なんで、また」

「君がこれを興味津々に見ていたからな」

「え!?、バレてましたか?」

白衣の女性が立ち上がり、こちらに振り向く。

「私は俊寛学園の1年A組の山美 瑠奈だ」

「え、俊寛学園?」

俊寛学園は、俺が今通っている学園じゃないか!

遠くからではわからなかったが、背丈は一緒で、メガネをかけていた。フレームの細い黒いメガネだ。

「あ、すいません。紹介が遅れました。僕は、」

そう、言いかけた瞬間。

「山田 竜也。俊寛学園1年C組。」

「え、なんで知って……」

「それよりも」

僕が言い終わる前に瑠奈が口を開く。

「こいつを飛ばしたい」

瑠菜が爪先でロケットらしきものを小突く。

「手伝ってくれないか?とてもたのしいぞ?」

なぜだか知らないが、その言葉に俺は強く引かれた。

そして、これが天才少女、山美瑠奈と、実験台第1号の俺、山田竜也との出会いだ。







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