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十五章 脱出




「んしょ、んしょ」「大丈夫か?」何故か付いて来た異人が問う。


 振り返れないので方法は分からない。が、声の距離から、彼は常に俺の二メートル程後ろに付いて来ているようだ。幾らタコばりの軟体でも、あのガチムチでこの細い通風孔を通れるとはとても思えないのだが……?

 俺は割らないよう大事に薬瓶を胸へ抱えつつ、待っている相棒の元へひたすら前進し続ける。最後の曲がり角を右折して約三分後、ポッカリ空いた穴を確認。出口だ!

「付いて来てくれてありがとな。ところで、あんた出られるのか?」

「問題無い。しかし、この気配……まさか、こんな所で同族に会うとはな」

 ??見た目から分かるが、ヘルム男は明らかに人間や聖族ではない。だとすると不死族か?いやでも、まだ顔も見ていない内から?それとも、彼等には種特有の共感覚でもあるのか?

(まあいいか。とにかく、手遅れにならない内に早くこいつを!)

 逸る心を抑えつつ通風孔から出、相棒達の元へ駆け寄る。


「よっ―――と。おーいユアン!まだちゃんと生きているだろぅ――――」





「申し訳ありません、坊ちゃま!!」


 今にも土下座しかねないぐらい深々と謝罪する才女に対し、頭を上げて下さいリュネさん!小晶さんは慌ててそう頼んだ。直後、見えない手に後頭部を掴まれたようにピョコン!大袈裟に元の直立不動に戻る部下。

 あの後無事救助された俺達は、先に捕縛されていた二人と共に地上へ戻った。半分以上壊滅した『月蹟遺跡』は倒壊の危険があるため、探索は後日改めてだ。

 そして件の銀色の宇宙船(無茶が過ぎたせいで、流石に所々凹んでいる)をバックに、俺達五人と乗組員二人が向かい合い、先程の台詞とあいなった訳だ。

「やれやれ、いつもの茶番が始まったぞ。飽きもせず毎度毎度」

 悪態を吐くユアンの特注コートと下のニットセーターに空く、直径十センチ以上の大穴。その周囲には、未だ乾き切っていない血がベットリこびり付いていた。コートは修繕に出すとして、セーターはこのままお釈迦だな。ま、首元も伸びてきてたし、丁度良いタイミングか。


「あんた!!」「げっ、カカア!!?何でこんな所に!?」


 街の方角から部下ABCと現れたのは、夕食の支度中だったのだろう。エプロン姿のえらく恰幅良い中年女性だ。

 髭の正面に仁王立ちした彼女は、いきなりそのド頭に拳骨を食らわす。ガツン!「いてえっ!」

「済みません聖者様!うちの亭主がとんだ御迷惑を!!」

「いいえ、ビータさんはとても親切でしたよ。私の方こそ、寧ろ却って手間を掛けさせてしまって」ペコリ。「シャーゼさんに至っては、私を庇って大怪我まで……本当に、何て謝ればいいか……」

 更に目を赤くしようとする想い人に、不可抗力だ、気にするな、殊更そっけないフォローを入れる相棒。

「でも血が一杯出たんでしょ、キューキンドロボー。病院行かなくて大丈夫?」

 人の子に化けた一角獣の僕が尋ねる。

「フン。お前等のひ弱な王ならいざ知らず、この程度でへばるような鍛え方はしていない」

「だよね、心配して損した」

 アッカンベーの後、愛する王様に満面の笑顔で向き直る。

「じゃあ兄様、一緒に帰ろうよ!―――あー、何だ。まだ『あの話』してないんだ。ならしょうがないね」

 ペコペコッ。少年は可愛らしく俺達にお辞儀した後、ウエストに手を当てて元政府員に向き直った。

「兄様のお願いなんだから、真面目に聞いてよねキューキンドロボー?じゃ、僕等は先に帰ってパーティーの準備してるね。あと皆、メリークリスマス!」

「メリクリ!またな、僕!!」

「気を付けてね!」



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