anothaer story4 ハロウィン
部屋にかけてあるカレンダーを見て思った。
「ねえ、アリア、ルック。もうすぐハロウィンの季節だね!」
「そうね!」
そう、かえしてきたのはアリアだけだった。あれ? もしかして……。
「ねえ、ルック。もしかして魔界にはハロウィンってないの?」
ルックは不思議そうな顔をして、こちらを向いた。ああ、そういうことなのね。
「はろうぃんって、何?」
うん、やっぱり。ダンスパーティーと言い、人間界と魔界は習慣にたくさんの違いがあるみたい。多分、クリスマスもないんだろうなあ。
「ハロウィンっていうのは、秋の収穫を祝って、悪い霊をお祓いするお祭りなのよ」
アリアが説明する。
「悪魔祓師が人間界で考えついて広めたの?」
いまいち伝わっていない。
「違うよ。人間が考えたもの。皆、魔法使いとか吸血鬼の格好したり、、かぼちゃを顔の形にくりぬいて蝋燭を入れたりして悪い霊を追い払うの。特に小さい子は、トリック・オア・トリート! お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ! って言って、近所を周るんだよ」
ここまで説明して、ようやく理解したみたい。
「へぇ、不思議なお祭りなのね。去年、どんな格好をしたの?」
「私は魔女の格好をして、アリアはメデューサ、ロイスは吸血鬼の格好をしていたよ」
「みてみたかったわ。本当の魔法使いが魔女の格好をしているところ」
そこに興味がわいたか。
「面白いから、ロイスも呼んで、談話室で話さない? 四人で」
アリアが提案した。
「ああ、あれは楽しかったね。いい思い出だよ」
いろんな格好をしてきたけど、一番楽しかったのは、デビルの格好をした時かな。
「アリアは、魔女が一番似合ってたよ」
「ねえ、リリー僕は?」
うーん、ロイスかぁ、狼男とか、死神とか、去年の吸血鬼とかいっぱいあるけど……。
「海賊かなあ」
「ふ~ん」
カーン カーン カーン
談話室の時計が、九時を知らせた。そろそろ、部屋に戻らなきゃ。上級生の人に、怒られてしまう。
気付くと、アリアとルックが消えていた。
「置いてかれた!」
走って、女子寮への階段を登ろうとすると、誰かに手首をつかまれた。いや、誰かじゃない。ロイスだ。ロイスしかいない。
「ねえリリー。僕は、宝石とか、金貨よりも、君を奪いたい」
は……? 意味が全く持ってわからない。つまり、どういうことだろう?
「なーんてね。さあ、早く僕たちも戻ろう。」
「うん……」
意味が良く分からないまま、今度こそ私は、女子寮への階段を登り始めたのだった。