第二話 教師と生徒のいけない関係の先に。−その2
そう、それは、私が中学1年生になりたての頃に、お父さんの言いつけを破って近づいてはいけない倉に近づいた事が、私の奇妙な人生の幕開けでした。
倉で出逢ったのは、あの『西遊記』の妖怪三人の娘と一匹の妖怪。その不思議な出会いから、私は、寺の娘ながら今まで不思議な事や幽霊や妖怪を信じなかった事を信じるようになり、今では3年間で法力という不思議な力を操るまでに成長を遂げた訳です。
そして私はその三人と一匹と共に暮らし、見事普通の女子高生が夜な夜な悪さをする妖怪を退治するという不可思議な女子高生として生活をするハメに……。
これは、そんな普通じゃない女子高生の私と、三人の半妖の美少女と一匹の妖怪が繰り広げる物語です
美しいものにはトゲがある。それはタダより怖いものは無いと同じだよ〜桃〜。だからお菓子に釣られてほいほい着いて行っちゃダメ(笑)。
☆。砕妖魔乙女伝 彩優記。☆
第二話 教師と生徒のいけない関係の先に。ーその2
「はい、どうぞ」
私は小さい紙パックの100%リンゴジュースを凛ちゃんに手渡す。
「どうも」
と、ニッコリ微笑んで受け取った。
私達二人は、2号館にある学生食堂に来ていた。
学生食堂は2号館一階にありスペースも中々広くとってある。けっこな人数が入れる様に・利用出来る様にとの学校からの配慮だろう。
なぜ、私達は学生食堂に居るかと言うと、ジュース販売機は3個所あるが、休み時間でほとんど売れちゃって、食堂の人が良く見ているここの販売機しか種類とかが無いのである。
「最近来た先生って綺麗だよね〜」
「うんうん。同じ女の私もうっとりしちゃうよ〜」
私達が学生食堂に用意されてる椅子とテーブルについた時、ふと、そんな事を耳にする。
「なんだっけ? 2年生の生物の授業を担当してる臨採の先生だっけ?」
私は小さい紙パックのコーヒーにストローを刺しながら問いかける。
「ぇえ、確か先週辺りから来てるそうですよ。何でも、他の高校の生物も担当してるとか。
どうしました? やっぱり美人は気になりますか?」
クスクスと軽く笑いながら問い返す凛ちゃん。
「沙紀じゃないんだから、ソレは無いよ私」
『そうですね』
と、微笑み返される私。
まぁ、沙紀は美人に弱いから、直ぐにでも見に行ってるだろうけどね。
私は沙紀みたいに他人にあんまり興味を抱かないから、どうでも良く思えるのである。
例外を除いては……。
「にしても、女性なの人気あるみたいですね。ここは女生徒の方が多い学校みたいですから、男性の方が人気上がりそうですけどね」
リンゴジュースをストローで飲みながら呟く。
「そうかもね〜。男性ならもっとキャッキャしてるだろうから、ここまで人気あればいい所だと思うよ」
「またはこの先週からの間で、人望を発揮してるとですかね」
「かもね」
凛ちゃん意見に頷く私。
「人気のせいで肩身が狭い思いしてたりね」
「あははは……。この学校の直属じゃないんで、そうかも知れませんね〜。職員としては面白くないとか思いそうですし」
「人気がその先生のパロメーターじゃないんだけどね。教える事をシッカリ教えられるのが、先生の評価だと思ってるし。見た目どうこうじゃないと思ってるけど?」
「また辛口ですね、蘭さん」
とニッコリと微笑む。
「そう?」
何気なく問いかけた私。
その答えに、ふふふと笑い応えた。
「ま、親身になってくれる先生なら大歓迎かもね」
「色々なものに追われる高校生にとっては、ありがたいかも知れませんね、そうゆう存在は」
ニッコリと微笑みリンゴジュースを飲み干した凛ちゃん。
私もコーヒーを飲み干し、何処とも無く私達二人は教室へと向かった。
それはちょうど、1号館への渡り廊下を歩いてる時だった。
ギッ。
私の体に何かが瞬時に駆け巡る。
強い殺気だろうか、何か私に向けられたそんな気配を感じた。
しかし辺りには誰も居ないようである……。
「気のせい?」
「どうでしょう」
問いかけた言葉に答える凛ちゃん。
という事は、私の気のせいじゃない。
何気ない私の一言で、意味を理解してる凛ちゃんの反応がそういっている。
「一瞬でしたね」
「うん。何かゾクッとする感じ」
「念のために魔除けと探知の為に私が薄い結界壁を張りましょうか?」
とゆう凛ちゃん。
私は、
「いいよ。それは目立ち過ぎるから、私が小さい力の結界札を貼っとく。小さいから結界にはならないけど、破られれば探知としての役割が出来るし。
まぁ、さっきのが人間だったら意味無いし、無駄な心配なんだけどね」
そういいながら小さい力の結界札を取り出して、壁に貼る。
「これでよし」
と呟いた瞬間、
「何が『これでよし』なんですか?」
と、私が貼った結界札を剥がす綺麗な細い指。
そちらを向けば、クセ毛なのかカールがかった黒髪を肩まで伸ばし、赤い縁取りをした眼鏡をかけた女性が立っていた。スタイルが良く、唇の端に小さな可愛いホクロが印象的な女性だ。
「えっと、上履きが赤だから、君は一年生だね?」
「と言う先生は、噂の生物の先生ですね?」
良く解ったね〜とニッコリと微笑む先生。
「上履きの色で判断してますから、先週から来た先生だと推測されますよ」
と微笑む凛ちゃん。
「あははは、そっか〜。うん、当り」
可愛らしく笑い、
「いくら壁だと言っても、一応この壁も学校のものだから、変なイタズラしちゃだめだよ〜、1年生君」
とウィンクと共にたしなめる。
「はい、すみませんでした」
「解ればよし。何か悩みとかあったら何時でもおいで、私は放課後や休み時間には2号館2階の化学実験室の準備室に居るから」
と言って、結界札をグシャグシャと丸めて私に返し、軽く手を振ってその場から去って行く先生。
「札見えてましたね〜」
先生が居なくなってからそう呟く凛ちゃん。
「中にはちょっとセンスのいい人が居るのよ。それに、妖怪とかそうゆう類なら触れないハズだしね」
そう。
私が貼った札は普通の人には見えない特殊な札なのだ。
まぁ……中には、不思議な物を見る事のあるセンスのいい人が居て、私の札を見る事が出来る時があるのだ。
さっきの先生もきっとその一人なのだろう。実際に札を見えたのだから。
「う〜ん……」
私は軽く唸り、辺りを見る。さっきの様にもし見られても安全な場所が無いかと。
「あ。あれがいい」
私は手ごろなものを見つけ、それに新しい結界札を貼り付ける。
「なるほど。それなら見えませんしバレませんね」
私がとった行動に感嘆する。
「いくらなんでもポスターの裏なら見えないでしょう」
生徒会のポスターの裏に貼り付け、元に戻しておいたのだ。
「はい」
と、凛ちゃんはニッコリ微笑んだ。
「行こう。そろそろチャイム鳴るし」
「そうですね。行きましょう」
自分達の教室へと戻る私達。
ここはお昼を食べた1号館の屋上。
「心配しすぎたかな?」
私はお昼休みの時の事を沙紀と桃に話し、問いかける。
部活をする野球部の声がグランドの方から聞こえてくる。
そう。時刻は既に放課後である。
「いいんじゃない? 念には念を入れて悪い事は無いと思うよ〜、ボクは」
沢山のお菓子をホクホク顔で食べながら桃は述べる。
「うん。俺もいいと思うよ。タダでさえ女子高生が失踪してるようだし、妖怪の絡みが強い気がするからねぇ」
パーティー開けされ、広げられたポテトチップスを摘みながら同意見。
「そうですね。学校で何かある様な情報は無いですが、念には念をですね」
一口カリッとポテトチップスを口に入れて頷く。
「八戒も居て、同じく感じたんなら、もしかしたら何かあるのかも知れないしね」
沢山あるお菓子の中からチョコレートを見つけ出し、いっきに3つ四角く小さいチョコレート頬張る桃。
「桃さん。ここじゃ『八戒』じゃなくて『凛』て呼んで下さいね?」
「あ、ごめんごめん」
と、後ろ頭をかきながら謝る。
「まったく覚えの悪いサルだこと」
「むかっ。なんか言った!?」
「いいえ〜、何とも言ってませんよ〜」
「あははは……態度があからさまですって、沙紀さん」
と、苦笑いを浮かべる凛ちゃん。
「沙紀にはおやつあげないっ!」
と、沙紀が掴んでる棒状のお菓子を奪い返そうとしたその時、ここに居る私達四人の時間が一瞬止まった。
「何……」
「おいでなさったか……」
「強い妖怪の反応でしたね」
「近かった! 行って見るっ!」
と、桃が一人、走って1号館から2号館の屋上へと跳び移る!
その距離約7m。それでも軽々と柵さえ飛び越えて2号館屋上に着地する。
「バカ! 一人で突っ走るなって桃っ!」
沙紀の呼びかけにも答えず、2号館の屋上ドアを蹴破って中には入って行く。
「あ〜あ……。あの単細胞ザルが……」
ため息混じりに言葉を零す沙紀に、
「私達も急ぎましょう!」
と、凛ちゃん。
「そうね、桃が何かやらかす前に行かないとね」
「私は一応桃さんの後を追ってみます!」
「解ったわ」
私は冷静に言葉を返し、1号館内2階2号館への渡り廊下に急ぐ。
強い妖気は2号館の3階か2階辺りから感じ取れたからだ。
桃と凛ちゃんはきっと近くの3階から探すはずだから、私と沙紀は2階をさがせばいい。
渡り廊下も1階と2階しかないからちょうどいいし。
私は足を速め、沙紀も足を速めて目的地へと向かうのでした。




