第二話 教師と生徒のいけない関係の先に。ーその1
そう、それは、私が中学1年生になりたての頃に、お父さんの言いつけを破って近づいてはいけない倉に近づいた事が、私の奇妙な人生の幕開けでした。
倉で出逢ったのは、あの『西遊記』の妖怪三人の娘と一匹の妖怪。その不思議な出会いから、私は、寺の娘ながら今まで不思議な事や幽霊や妖怪を信じなかった事を信じるようになり、今では3年間で法力という不思議な力を操るまでに成長を遂げた訳です。
そして私はその三人と一匹と共に暮らし、見事普通の女子高生が夜な夜な悪さをする妖怪を退治するという不可思議な女子高生として生活をするハメに……。
これは、そんな普通じゃない女子高生の私と、三人の半妖の美少女と一匹の妖怪が繰り広げる物語です。
は〜いそこ〜。可愛いからって桃にお菓子を与えな〜い、可愛がらな〜い。さらにおサルっぽくなるから(笑)。
☆。砕妖魔乙女伝 彩優記。☆
第二話 教師と生徒のいけない関係の先に。ーその1
ただ今、3限と4限の間の休み時間。
私達三人は、やや見慣れてきた自分達の教室に居た。
「桃ちゃ〜ん。は〜い、あ〜ん」
「あ〜ん」
女生徒に言われるままにあ〜んと口を開ける金髪のショートカットをした桃と呼ばれた女生徒。スタイルは中々良く、ちょっと小柄で、青い瞳と元気な様子が印象的な美少女である。
悪く言えば『ガキっぽい』が正解。小柄だし。
「ありゃ、親の悟空が見たら泣くな〜」
と、腰まで伸びたロングストレートの赤髪を後ろで一つにまとめた、スタイルが良く胸の大きい女生徒が私の側で呟いた。綺麗な顔立ちに赤い瞳が印象的な美少女である。
「ははは。もしかしたら一緒に『あ〜ん』ってやってたりして」
なんて冗談と共にニッコリ笑って言う、綺麗な黒髪を肩まで伸ばした清楚そうな女生徒。こちらもスタイルが良く三人の真ん中ぐらいの胸のサイズ。そして全体から清潔感を漂わせており、淡い紫の瞳が印象的な美少女である。
「う〜ん……いいんじゃない? あの子小柄なのにいっぱいご飯食べるし、生活費浮くから調度いいよ」
と、桃を見ながら呟く私。
「でもあれじゃ、まるっきり猿だね〜」
「まぁ、飼い主の蘭さんがいいって言ってる事ですし、本人も喜んでる様なんで、ほっときましょうよ」
ニコヤカにそう言う凛ちゃんに、
「私、お猿さんを飼った覚えないけど?」
ジロ見しながら紙札をちらつかせる。
「そうですね」
と微笑みを見せる凛ちゃん。
「ンじゃお嬢、俺はそろそろ席に着くね」
と言って軽く手を振り一番端の隅っこの席に戻って行く沙紀。
「お弁当はいつもの所で渡すね、沙紀」
『あい』と軽い返事。
「そろそろチャイムだから教室戻るね〜、またね〜桃ちゃん」
「うん。またね〜、おいしかったよ〜」
とニッコリと満面の笑みを見せる桃。
その笑顔に頬を軽く赤らめて教室から出て行く女生徒。
「いい仕事してるね、桃」
「ぇえ、でもあれは無意識にしてますから、罪作りな桃さんです」
私の呟きに直ぐ後ろの席からそんな言葉を返す凛ちゃん。
どこか感嘆すべきなのだろう。
私はそう思いながらチャイムが鳴るのを聞いたのだった。
「おま……良く食べるねぇ……」
「ン? 別に無茶して食べてる訳じゃないよ? ボク」
「桃さん、ご飯粒飛ばさないでくださいよ〜」
「もうちょっと味わって食べてよね。毎日私が作ってあげてるんだから〜」
スーっと吹く風が、春の匂いを私達に運ぶ。
ここは1号館の屋上。
私達1年生の教室などがあるのが1号館で、2年生は2号館・3年生は3号館という様に校舎3つあるのだ。
「味わってるよ〜、蘭ちゃんのお弁当最高だしね」
と、ご飯粒をいくつか口の周りに付けてニッコリ。
「この笑顔で、何人の女生徒落したことやら」
ふと呟く沙紀。
その言葉に、どこか羨ましいというニュアンスが含まれてる様に感じた私。
「沙紀さんは人と普段話さな過ぎなんですよ。いつも蘭さんと話す以外寝てますし、他の人と話す時は無表情ですからね」
「う〜ん? 俺、綺麗な子にはシッカリと表情見せてるけど?」
「そうそう。エロガッパだしね」
と、何気なく言った桃に、沙紀は『なにくそ〜』とヘッドロックをする。
「さて、どうでもいいけど、本題に入るよ」
「『どうでもいい』を蘭さんから戴きました〜」
と、ニコヤカに言う凛ちゃん。
「最近、女子高生ばかり失踪してるの知ってる?」
私は食べ終わったお弁当を片付けながら本題に入る。
「ぇえ、最近で四人の女子高生が失踪してますね。置手紙も何も無く突然」
そう。最近そんなニュースが話題をよんでいるのだ。
失踪する様子なんて何も無いそんな子ばかり、既に四人も。
置手紙も動機もさっぱり無いため、警察でもお手上げらしい。
「単なる家出か何かだと思う?」
私の問いかけに首を縦に振る者は誰一人とも居ない。
「家出なら何か残すけどな〜、何か理由を知って欲しいと思うし、ボクは」
と、箸先を口にくわえながら意見を述べる。
「しかもそんな事をするような子じゃない子ばかりで、動機すら見つからないって事だしね。ちょっと変な気がするな俺は」
食後の、ミニペットボトルに入ったストレート紅茶を飲みながら言う沙紀。
「何かの気の迷い……とも考えられそうですけど、突然消えたように、その場所には今までそこに居たような痕跡を残してると聞きますから、家出では無い様に思えますね」
「うん。そらしいよ」
凛ちゃんの言葉に相槌を打つ私。
「何かに例えるなら、その場で連れ攫われた様な事だよね〜、それって」
口の周りのご飯粒を取り食べながら言う桃。
「でも他者の痕跡が無いから、警察はお手上げという事か」
「連れ攫われじゃ無いとしたら……やっぱり自分から何処かに消えたですね。突然何かに導かれるように」
「または……」
私はふと思いついた事を
「その場で妖怪か何かに連れ攫われたか……」
と、言い、
「食べられたか……ですね」
凛ちゃんが私が考えた意見の続きを述べる。
その場の空気が一瞬変わる。
「ま、どっちにしろ、妖怪絡みって事は強いと思うな俺は」
と、沙紀はミニペットを飲み干す。
「妖怪なら、まだ増えますね。食事を始めた妖怪は大勢を食し始めますから」
ニッコリ微笑む凛ちゃん。
「ごちそうさまでした〜。妖怪ならやっつければそれですむよ」
満足げに桃。
「バ〜カ、そう簡単に見つかる訳無いでしょ。全くこの単細胞ザルが」
「むかっ。そう言うエロガッパは何か見つけた訳でもないでしょ!」
「また喧嘩……。もうどうしようもないですね〜」
ははは……と苦笑いを浮かべる凛ちゃん。
そんな私は、凛ちゃんにどっちがいいと問いかけ、なら『こっちで』と微笑む凛ちゃんの反応どうりにする。
ゴスッ。
鈍い音が軽く響く。
「は〜い先生、辞書は頭を殴る為に存在するんじゃないと思いま〜す……」
「蘭ちゃん、けっこうコレ痛いよ……」
各々(おのおの)が痛みを堪えながら頭を擦り呟く。
私は辞書の角で二人の頭を殴ったのだ。
凛ちゃんに『辞書』と『紙札』を見せて選ばせたら、辞書を指差したので、リクエスト通りに辞書でお仕置きしたのだった。
「痛いのは生きてる証拠。良かったね痛み感じて」
と淡々(たんたん)とした口調で告げた。
「まぁ、最近この辺の事件ですから、近いうちに情報が集まると思いますよ〜。闇雲に動くより、それからでもいいかもしれませんね」
「そうだね。折角顔を出しそうって時かもしれないし、そんな時に私達が動いちゃったら、相手も身を隠してしまいそうだしね」
凛ちゃんの意見に賛成する。
「そんじゃ、お昼も話も終わった事だし、俺はちょっとブラついてくるね」
と立ち上がり校舎内に戻って行く沙紀。
「ナンパの下見? 程ほどにしてよね〜」
私の言葉に『あい』と軽く返す。
「それじゃボクも行くね〜。さっきお菓子くれた子達にまたくれるって呼ばれてるから」
と桃もニッコリとして立ち上がり、元気良く手を振って校舎内に戻って行く。
「あははは……」
ふと凛ちゃんを見ると、苦笑いを浮かべる。
「私は特に用事は無いんですけど〜……何処かに行った方がいいですかぁ?」
「別に、気にしないし。ただ凛ちゃんも用事あるのかな〜って思っただけよ」
私の言葉にニッコリ微笑み、
「お付き合いしますよ」
と何かを察してそばに居る。
流石は凛ちゃん。勘が鋭い。
私は高校生活がここ数日してるけど、友達が出来てなかったりするのである。
居れば居るで色々と面倒だけど、今度は居ないは居ないでどこか寂しいものである……。
「何かジュースおごるよ。おいで」
私の言葉に『ご馳走になります』と微笑み、校舎内に戻る私の後に続く凛ちゃんでした。




