第一話 三人と一匹との出会い
☆。砕妖魔乙女伝 彩優記。☆
私は妖怪や悪魔や法力など不思議なものは信じてはいませんでした。
お寺の娘である以上、幽霊とかの霊魂とかを信じなければいけないのに、それさえも全く。
なので、各地を飛び回ってるお父さんの仕事の意味がさっぱり解らなかったし『妖怪は実際に存在する』なんて言われたって『子供じゃないんだから、そんな冗談信じる訳無いでしょ?』と返すばかりでした。
でも、それは3年前の出来事が私を不思議な物や事に対して、信じるようにさせたのでした。
それ以来、私は変わるざるえないようになり、それなりのこの3年を過ごしています。
これは、そんな妖怪や不思議な事に対してシッカリ受け止める様になった、私と3人と一匹が繰り広げる物語です……。
第一話 三人と一匹との出会い
「この馬鹿ザル! これは俺の卵焼きだ!」
「うるさいなぁ! ボクが最初に箸を伸ばしたんだからボクのでしょ!このエロガッパ!」
朝の清々(すがすが)しい食卓。畳の上に、少し大きめな長方形のテーブルが置かれており、その上に朝食が用意されている。
朝食のメニューは明太子に厚焼き卵。そして納豆に味噌汁とお漬物という美味しそうなお料理達が顔を並べていた。
「まぁまぁ、二人共朝食から喧嘩はあんまり胃にも良くないですよ〜」
赤い髪色にロングストレートを後ろで一つにまとめ、高校の制服を身に纏った少女が、箸で卵焼きを掴みながらちょっと小柄な金髪のショートカットをした少女に罵声を浴びせている。
小柄な金髪のショートカットをした少女も同じ高校の制服を着たまま、箸で卵焼きを掴み赤髪の少女へと罵声をお浴びせ返す。
そんな様子を黒髪を肩まで伸ばした少女が、喧嘩を始めた二人を見て苦笑いをしている。
事の発端は、最後に残った厚焼き卵一カケ。
「何をぉ! この貧乳ザルの分際で所有権を持ち出すのか! 桃!」
「貧乳じゃなくて美乳だぁ! 沙紀はいつもエロい事考えてるから大きいんだよ! このエロガッパ!」
と、テーブルに足が乗り上がり、額と額がくっつきそうな距離で言い合っている。
どうやらすでに卵どうこうの話しではなくなったらしい。
私は最後のお味噌汁をすすり終えて、
「はい。二人共、何処に足をのけってるのかな?」
と言いながら二人の横顔に紙札を貼りつける。
「お嬢、ちょ……」
赤髪の少女が何か言いかけて、
「蘭ちゃん! ちょっ……」
金髪の少女も何かを言いかける。
けれど私は、
「ごめん聞こえない。発」
と札に念を込めた。
バシュッ!
一瞬の閃光と共に二人のちょっとした苦痛の悲鳴があがる。
「全く……。朝食ぐらい静かに食べさせてよね、いい加減」
朝の清々しい食卓。
そんなものここ3年見たことは無かった。
何かしら朝食は騒がしいのが、すでに日常になっており、私はそんな二人にツッコミを入れるのが日課になってしまった。
「白と凛ちゃんだけだね〜、いつもいい子なのは」
私は座布団に座りなおして、横に居る白兎の白を撫でる。
「三蔵法師もきっと楽じゃなかっただろうに、こんな子達のお守りをしてたんだろうからね〜……」
そう。
この子達はあの三蔵法師の家来だった妖怪『猪八戒』『孫悟空』『沙悟浄』の娘達なのである。
そして私は、自分ではそうだとは思ってないけど『三蔵法師』の血を引く者らしいのである。
「岩から目覚めてここ3年。何度お札でツッコまれたことか、俺達……」
衝撃から覚めた赤髪の『沙悟浄』の娘『沙紀』が愚痴る。
「白と八戒ばかりずるいよね〜……」
ため息交じりに金髪の『孫悟空』の娘『桃』が言いいながら、あははは……と苦笑い浮かべる『猪八戒』の娘『凛』をジロ見する。
「そんな事言われても〜……」
困った顔浮かべ私をみる凛ちゃん。
「お嬢、今はウサギに化けてるけど、白だって、どんな物にでも化ける妖怪だよ? 俺達より純度が高い妖怪。一番怖いんだから」
テーブルに落されたさっきの卵焼きをパクリとして私に言う沙紀。
「あっ、そう」
私は軽く受け流して食べ終わったお皿をまとめる。
「マナーのいい妖怪は私は好きだけど?」
と、一言を言ってお皿などをおぼんに乗せて台所へ向かう私。
こんな3人と一匹との出会いは遡る事3年前、私が中学1年生になったばかりの事である。
それは、近づいてはいけないとお父さん言われてた倉に、近づいたのが始まり。
私は興味本位に倉に近づいた。
ダメって言われる程、行きたくなるのが人間誰しもがある心。そう、そんな好奇心にかられて、私はお父さんが地方に行っている時に近づいた。
そして鍵を持ち出し、倉の扉を開けたのだ。
中には古びた置物や、箱に入った良く解らない言葉で書かれた巻物に、大きな岩があるだけで、何も危険なものなんて見当たら無いし、ましては、お宝と言えそうな物なんて無かった。
私は『なぁ〜んだ……』とガッカリしながらその場を離れようとした時、自分の耳を疑った。
まさかね〜なんて思い踵を返した足を再び倉の外へと歩ませた時、
『和尚、せっかく来たんだから岩触ってけよ』
とゆう声を岩から聞いたのだ。
今度は間違いなく。
『ン? 和尚さん来たの? 悟浄? どこどこ??』
『うるさいボケザル。騒いだらビビッて逃げるだろうがっ』
『和尚さんなら逃げる訳無いでしょ! このエロガッパっ』
『ちょっと、狭いんだから騒がないでくださいよ〜……』
なにやらもめてる女性の声が岩から聞こえてくる。
私は思わずダッシュでその場から離れた。
岩から話し声が聞こえてくるなんて、こんな不思議な事がありえる訳が無いからだ……。
でも、聞こえたのは事実。
怖いけど、私はもう一度確かめる為に近づく事にした。
黒くて大きな古そうな岩。岩の表面には平らに削り取られて、なにやら文字が彫ってある様だ。
『先ほどはすみません和尚様。悟浄さんは昔から口が悪くて、お逃げになった気持ちは解ります。すみませんでした。ほら、悟浄さん謝ってください』
『わりぃ……。やっと和尚さんが来たのに、帰ろうとしたからちょっと強く言っちゃった。悪かったよ……』
一人の女性の声に、最初に私を呼びかけた女性が謝る。
『この通り、悪気は無かったんですよ。謝ってる事だし、許してあげてくださいね。
そしてですが……良かったらこの岩に手を当ててくださいはしませんでしょうか? そうしていただけると、とてもありがたいんですけど……』
と、苦笑いする口調。
私は怖いという感情があったけど、手を当てたらどうなるんだろうという好奇心に負け、言われたまま岩に手を当てた。
すると、岩が一瞬まばゆいばかりに閃光し、私は思わず目を瞑った。
「ふぅ〜、初めまして和尚さま。これから以後よろしく」
「わ〜、和尚さんもボク達と同じ女性なんだ〜。和尚さまと言うから男性だと思ってたよ」
「頼みを聞いてくださってありがとうございます和尚様」
そんな声が、さっきとは違って近くに聞こえる。
私は恐る恐る目を開けると、そこには3人の女性が立っていたのだ。
しかも、なぜか裸で。
一人は赤い髪色のロングストレートを腰まで伸ばした女性。スタイルは良く胸も……大きい……。綺麗な顔立ちに赤い瞳が特徴的。
その隣に立ってるのが、金髪のショーットカットをした小柄な女性。スタイルは良く、隣の赤髪の子と比べれば小さいが、目立たないくらい普通に胸はある。元気のよさそうな印象と綺麗な青い瞳が印象的。
そしてその隣に立っているのが、綺麗な黒髪を肩まで伸ばした女性。こちらもスタイルは良く、3人の中間ぐらいの胸の大きさ。清楚感が何処からとも無く感じられ、淡い紫がかった美しい瞳が印象的。
そんな3人は、次々と私を和尚と呼ぶのである。
「和尚って、私は確かにお寺の娘だけど、和尚って呼ばれるほど偉くないし、きっと人違い!」
3人の裸の美少女を前に、慌てながら言う私に、
「いいえ。この岩を触れるのは和尚様の血を引くアナタ様以外ありませんよ」
とニッコリと微笑む黒髪の女性。
「そうそう。それにボク達は和尚様に言われて岩に封じられたしね」
「面倒だけど『いつか私の血を引く力のある者が現れる。その時までここに居てください』って言われて、俺達はこの中にずっと居たって訳」
と、次々と告げる3人。
「えっと……と、とりあえず服!! 服貸すからこっちに来て!」
私は裸のままじゃ、ちゃんと話せないので、3人を家に案内する事にした。
「で、要するにあの西遊記の三蔵法師に頼まれて、あの3人の妖怪の娘であるアナタ達が封印されてた訳ね」
私は、服を貸し着替えた3人を畳の部屋に招いて事情を聞いている。 大きめの私の服を黒髪の女性に。同じサイズの服を金髪の子に。そしてサイズが無いのでお父さんの服を赤髪の子に渡したのだった。
「はい。いつかきっと妖怪がまた暴れだすに違いないと思った三蔵法師に頼まれて、今までアナタが現れるまであそこに居た訳です」
と、ニッコリ微笑む黒髪の女性。
「間違いじゃない?」
問い返す私。
「そんな訳無いよ〜。あの岩は和尚様が自分の血を引く力のある者しか開けられない様にしたって言ってたし」
「それに、ここ何度か石を触る人間が居たけど、開かなかったし、俺達の声も届いてなかった様だ」
「そんな中、こうやって私達を岩から出せたのですから、間違いは無いです」
と、すすめたお茶をすすりニッコリと。
「と言う訳で、これから私達がご厄介になります」
ぇえ……。
思わず心の中で呟いた私。
そんな私の隣を、いつの間にかに存在した可愛らしい白兎が私を覗いている。
「その子は白。ウサギに化けてますが、何でも化けられる妖怪です。普段何も無い時はその姿で居ます」
妖怪に見えない白兎。でも話が全部本当らしいからして、妖怪なのだろう……。
「あ、そういえばアナタ達も妖怪なの? 名前は? この子だけ名前があるみたいだけど??」
私は白兎を撫でながら、人間にしか見えない3人にそう問いかける。
「ボク達は名前あったけど、和尚様に封印されちゃってるんだ。だから名前は無いから、お互い親の名前を呼んでるよ〜。悟空に八戒に悟浄ってね」
「はい。そして私達は半妖ですね。人間と妖怪のハーフ。禁忌を犯した親の娘ですね」
と、凄いことをニッコリと微笑んで言う黒髪の女性。
「だから和尚さんが名前をつけてくれる? 俺達の名前」
「え! 私が!?」
驚く私に、
「そう」
「はい」
「うん」
と頷く三人の女性。
「和尚様が自分達の名前を決めてもらえって言われてるしな。な、悟空」
「うん。ボク達も自分の名前欲しいしね〜。ね、八戒」
「はい。いつまでも親の名前を使うのもなんですしね。決めてください和尚様」
と、言われても……私にネーミングセンスはありませんが?
何て心の中で呟く私。
しばらく考えて、色々ごちゃごちゃしながら一人ひとり指差して、
「アナタは沙悟浄の娘だから……沙紀。清水 沙紀ね」
「よろしく〜」
と、ウィンクする沙紀。
「そしてアナタは……清楚な感じから凛。白鳥 凛ね」
「はい。よろこんで」
と、ニッコリする凛ちゃん。
「ボクはボクは??」
「まって考えてるから……」
「ドキドキする!」
「猿でOKだよ、悟空は。又は馬鹿ザルでもOK♪」
なんて言って笑う沙紀に、頬を膨らませる金髪の少女。
「う〜ん……可愛らしく桃でいいや……斉藤 桃」
「やった。よろしくね和尚さん」
と、満面の笑顔を見せる桃。
良く頑張った、私。ネーミングセンス0な私にしては頑張ったよ……。
私は疲れながら、
「私の名前は蘭。蒼井 蘭。だから『和尚』じゃなくて『蘭』って呼んでね」
「はい。よろしくお願いします」
と、コレが私と3人と一匹の最初の出会い。
それからと言うもの不思議な事が連続して起きるは、お父さんに叱られ、法力とゆうものを修行させられるは……。
おまけに、同じ中学校にお父さんが3人を入れるから、私が3人のお守り役……。
西遊記って、3人が和尚様を守ったんじゃなかったっけ??
そんな事を何度呟いたか解らない3年間を過ごしてきた私。
お蔭で朝食は賑やかだ。
まぁ……お父さんがいつも居ない寂しさからは開放したけどね。
「さて、洗い物は終わったし、そろそろ時間だね」
私はそう呟き、畳の部屋に戻る。
「皆準備はいい?? そろそろ行くよ〜。白、お留守番よろしくね〜」
私はそう声をかけた。
「もちろんですよ」
とニッコリ微笑む凛ちゃんに、
「もうそんな時間なの!?」
と、多分原因は卵だろうが、取っ組みあってる手を止めてこちらに振り返る桃と、
「あ〜い。こっちはOKで〜す」
同じく取っ組みあってる手を止めて、桃の下になってる沙紀はこちらを向いて返事をする。
呼ばれた白は、一つジャンプをして私の言葉に応えた。
「それじゃ行くよ〜」
私は再び声をかけて玄関へと向かう。
「はい」
「うん」
「あいさ」
とそれぞれが返事をして私の後を続き、玄関へ。
え? 何処に行くのかだって?
それは、私達四人が同じ学校の制服を着てるから行く場所は一つ。
「今日も一日、学校生活を頑張りましょう!」
の言葉に『お〜!』と返す3人。
今日も新しい一日の始まりです。
私達四人が向かうのは、新学期始まったばかりの高校です。
そう。
私達四人は女子高生なのでした。
第一話 三人と一匹の出会い
終わり。
そして2話に続く。
初めましてこんにちは^^ 霞河絢香といいます^^ 拙い文章ですが、読んでいただけたら光栄に思いますww
この作品は、絢香のブログで書いているものの一つですw よかったら気軽に遊びに来てくださいね^^




