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政略上の正妃に一途な愛を  作者: 華凜
第6章:最終章
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第58話 後悔

前半はメリッサ視点です。



 初めて会ったときからウィルズのことが好きだったわけではない。


最初は自分と一緒に遊んでくれる良い遊び相手。

そう思っていた。

だが自分が森で迷ったとき、彼に――ウィルズに助けられた。きっとそのときから好きになっていたんだと思う。


でも歳を重ねてだんだん冷静に物事を考えられるようになってくると、自分は永遠に彼と結ばれないのだと悟った。

あまりに身分が違いすぎる。

自分は今や存在しない元高家の人間。対し、ウィルズは将来の地位を約束された第一王子。


所詮は高嶺の花だと思っていた。



でも自分が22になったある日のこと。

義父から政略結婚の話を持ちかけられた。その相手はまさかのウィルズだった。

最初は嬉しくて涙しそうになったものの、王子にはすでに美しき正妃がいると知って落胆した。


園遊会で初めて目にしたが、とてつもなく美しかった。

しかもウィルズ直々に寵妃に指定され、自分が取り付くシマなんて一切ない。側妃に入ったとしても愛してもらえない。そんなふうに感じた。


だから義父にも改めて破断をお願いしたが、怒鳴られたうえ、フォルニクス家の未来のために正妃を王子から引き離せとも命令された。


本当はリミューアと友達になりたかった。

対立なんて望んでいない。

自分から歩み寄って仲良くしてもらい、平穏な日々を過ごせればいいと思っていた。


でも慣れ合うことは当家が禁じた。

無用な情を持つことが無いようにするためだそうだ。


それ以来、言われた通り“嫌らしい女”を演じ続けてきた。

義父の言うとおり嫌われることにも成功した。

ウィルズの気を引くことにも成功し、子も身籠った。


――だが流産は誤算だった。

子供は上手く育たず、二度と子を望めぬ身体になった。


それを知って義父は大激怒し、自らの地位を危ぶんだ公爵は最後にこう命令した。



「アーシェ王女を毒殺し、リミューアがやったようにみせかけろ」



それが成功した暁には自由の身を保障された。

資金も毒もすべて当家が用意した。

貧しい田舎出身の女官を大金で買収し、裁判になった時に言うセリフも態度も口調もあらかじめ教え込んだうえで実行に移した。


自分でもいけないことは重々に理解していた。

だが嫉妬には耐えられなかった。

日増しに大きくなっていくリミューアのお腹を見ていると、妊娠している彼女が羨ましかった。

いずれ子が産まれればウィルズは子を産めない側妃なんか放ってリミューア一筋になってしまう。

絶対にあの女にウィルズを取られたくない。


そうして自分は後戻りのできない道に足を踏み入れてしまった――






「疲れているのに起こしてしまってすまない」


ウィルズはメリッサの私室に入って来るや否や、苦笑を交えながらそう言った。

眠ろうにも眠れずに暗い窓の外を見て悶々としていると、女官からウィルズがこちらに渡って来る旨が伝えられたのだ。


「ウィルこそお疲れのようだけど、大丈夫?」


彼の顔には疲れが滲んでいる。

無理もない。最近は仕事の処理にも事件の後始末にも色々忙しく、毎日3時間しか眠っていないのだという。


 そんなウィルズは疲れ切った様子で「大丈夫」と笑みを繕った。


「それより、メリーと二人で話がしたいんだが、いいかい?」

「ええもちろん」


メリッサが手で女官に向かって「シッシ」としてみせると、彼女らは低頭して部屋をあとにする。

彼女自身、ウィルズが改まってこの部屋に来た理由くらい把握していた。

もう隠したって仕方ない。


「ウィルはもう分かっているんでしょう?」


しんと静まった部屋でメリッサはそう問うた。


「なにを?」

「アーシェ王女暗殺未遂事件の真犯人を」



長くなるので1つの話を2つに分割して投稿しています。


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