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裏話 6 ~メリッサの過去~

 もう20年近く前になろうか。


メリッサが5歳になるまで、彼女はメリッサ・J・ルルーシェという名を使っていた。

何を隠そう、それが本名だ。

ルルーシュ家は当時伯爵の地位を有し、国内最有力貴族の一つに数え上げられるほどの権勢をふるっていた。

家も大変栄え、彼女の小さいころ屋内には100を超える召使と私兵がいたのを覚えている。


両親は唯一の子供であるメリッサを心底可愛がり、金にも愛にも困ることの無い幸せな生活を送っていた。


――そんな平和が崩れたのはある夏のことだった。


ある日、私用で地方に出かけていた両親が闇討ちに逢い、護衛の奮闘も及ばず亡くなってしまったのだ。

家が傾きはじめたのはちょうどそのときからだ。

メリッサ以外の人間による遺産の分捕り合戦のあと、身寄りの無かった彼女は父が普段から懇意にしていたフォルニクス公爵に引き取られることが決まった。


「これからはここを本当の家だと思いなさい」


養子に入った当初、フォルニクス公爵夫妻はメリッサに優しくしてくれた。

寝る場所、食事、衣類のすべてを与えられ、貴族流の礼儀作法も教えてくれた。

第三者によって勝手に奪われていたルルーシュ家の財産も取り戻してくれたほどだ。


 だが日が経つにつれて公爵の優しかった態度は変わって行った。

その原因は彼女の顔。

メリッサは絶世の美女と謳われた母と同じ美貌を生まれつき有していた。その美しさは歳を重ねるにつれ磨きがかかっていき、6歳で初めて社交デビューすると評判はみるみる広まっていった。


一方で、皮肉にもフォルニクス公爵の娘らは彼女ほど美しくなかった。

甘やかされて育ったせいか礼儀知らずで人見知り。脚は大根の2倍はあろうかという大きさで、座ると椅子の脚が折れてしまうほどの巨人ばかり。

だからか、メリッサと当家の娘を見比べた周囲は『トビがタカを産んだ』と揶揄するようになり、それに嫉妬の念を抱いた公爵はメリッサを社交の場から遠ざけるようになった。


以降、日に日にメリッサは居場所を失うようになり、家の中にいてもいじめられるだけなので普段から外で遊ぶようになった。

そんな彼女には一つ好きなことがあった。

それは花飾りを作ること。


少し前に庭師の者に作ってもらったのがきっかけで、庭園で集めた花々を使って自分も挑戦してみると案外うまくいった。

それ以来、公爵の声が届かない庭園の奥地でひっそりと一人で作業をするようになった。

友達は皆無だったが、あまり寂しいとかそんなことは思わなかった。


ただ、誰かに自分の作品を見て欲しいという願望はあった。



そんなとき、偶然出会ったのがウィルズだった。



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