最終話 在るべき形へ
「総理、NSA長官の尋問が終わりました。結果報告です」
尋問を終えた拓也は香川に通信を入れた。
『よし、聞こう』
「はい、まずはやはりモーリス大統領は今回の狙撃からの奇襲のことは聞かされて無かったようです。表のホハイトハウスとは違う裏の政府が動いているようです。その権限は大統領を凌駕します」
NSA長官の尋問の末に分かったことは次の通りだ。
・モーリスは関係なく、他の意思が今作戦を立案・実行していること。
・全軍を動かせる指揮権を持ち、核発射も可能。
・真の米国最高位組織
・ターゲットは日本国エンペラー
・対象の排除
「最後の対象とは大統領を含む高官たちの抹殺でしょう。戦争です、誰がどこで死のうと普通です。しかも調印式で死亡したのなら日本に罪を被せやすいでしょうしね」
『そうか・・。ご苦労だった、陛下がご無事で何よりだ。・・・・あぁそれと、大したことではないが報告しておく』
「はい、なんでしょう」
『北朝鮮が攻めてきた』
「いや!それ大したことでしょう!?被害は!?」
『心配することは無い。日本には海軍だけじゃないんだぞ?何のための富士最終防衛基地だと思ってる』
「あ・・・そ、そうですよね。杞憂でした。因みに戦力は?」
『なに、大したものではない。伊600の無人機の残骸を回収したのだろう。機体形状が似ていたとの報告が空軍から上がっている。この件から見てロシアの関与は確実だろう。もう国は無いがな。そうすればあの物量も納得が行く。総勢1000機だと』
「せ、1000機ですか!?」
『なにせ小型無人機だからな。だがロシアの介入があったとしても所詮は天照もなければ超劣化コピーに過ぎん。それと戦術が短絡的すぎて手ごたえが無いと陸・空軍が笑ってたよ。だが半数まで数を減らすのが精一杯だったらしい。最後は例の富士基地の砲台で止めだった。現在朝鮮と韓国の一部は蒸発。文字通り蒸発した』
拓也は声が出なかった。それなりの威力があることは自分の目で見て分かっていたが、陸を消しクズにするほどだとは思っていなかった。
「・・・・脅威は、消えたんですね・・?」
『今、確認中だ。だが結果は見えてる』
「は、はぁ・・・」
今更ながら、日本という国、日本人という民族が怖くなった。かくいう自分もその一人なのだが。
『さぁ終わらせよう。向こうが反撃してくるなら応戦するまでだ。米国本土の軍事基地及び軍事関連工場及び施設への攻撃を許可。もちろんFBI、CIA、ホワイトハウス、ペンタゴン、NSA本部もだ。空の衛星はこっちで破壊しておく、幸運のを祈る』
「了解。・・・・・・・全艦へ通達。付近の攻撃目標には16式榴弾による対地艦砲射撃、中部の目標にはレールガンを使用、遠方又は地中の目標に対しては戦艦搭載のレールガンと伊600型のCTM(非核弾道弾)を使用
。終わらせよう」
ありとあらゆる攻撃が雨霰と米本土に降り注ぎ。アメリカの軍事力及び大国としての威厳と共にすべては無に帰した。
2018年9月2日。調印が認められ、正式に約2年及ぶ戦争が終結した。
それから半年後、アメリカ合衆国は解体。新政府の元に新たに統治が始まり。
ヨーロッパ諸国は盟友ドイツの復興に全力を尽くし。
中華人民共和国はとうの昔に滅び民主国家へと様変わりし。
朝鮮半島は攻撃の被害の大きさから無法地帯と化していたが、ろくに人がいない状態では同じことで。
ロシアが滅んだことによりユーラシアの大部分が空白になった。が、生き延び道を正しく選択した者達により新たな国、とは呼べないが、確実に歩みを進めていた。
世界が戦争からの復興に専念していた時、唯一にして最強の戦勝国が世界へ宣言を発した。
「全世界の皆さん。日本国総理大臣香川敦彦です。戦争は終わりました。戦火を切ったのは何を言おう我々日本です。我々と敵として戦った国の生き残りの方達もいるでしょう。しかし、この地球に”敵”という存在はありません。意見がや主張の違いで仲たがいすることもあるでしょう。個人、国とその規模は違えど同じことです。それぞれ正しいと思いやっていることですからね。ですがそれがいいことだとは限りません。この戦争でも、科学の発展がゆえに過去のどの戦争をも凌駕する戦死者を出しました。争いには犠牲が付き物です。もちろん罪の無い、関係の無い人が被害を受けるのは目に見えているでしょう。そこで我々日本は、寝言のように聞こえるかも知れませんが「争い無き世界」を創り上げることを宣言します。これを実行、実現させることの出来る国は我が国だけだと自負しております。ただ、勘違いしないで欲しい。戦争に勝ったからといって武力を行使し支配するわけではありません。ただどうしても仕方の無い場合は・・・・・・覚悟してください。まずは戦争復興への全力支援、続き国家の併合、宗教、習慣、肌の色などの違いなど合ってないようなものです。実際に日本がその状態ですからね。無理な事ではないでしょう。分かりますよね?我々日本は当分の間今の軍事力を保持します。ですが数年後には順次解体していく意向です。この目処は皆さん次第です。早くなるかもしれなければ、遅くなるかもしれない。もしかしたら過程で一つ国が滅ぶかもしれない。・・・というのは冗談で。まずは不要なものから捨てましょう。核兵器。これはあってもいいことはありません。日本が持ってないから無くすんだろ。などいうものがいたならば即時作って差し上げましょう。そこから始まり、必要最低限まで世界の兵器削減を行います。・・・一ヶ月後です。1ヵ月後にスイスのジュネーブの国際連合欧州本部を地球連合本部とし、各国代表を招集します。ニューヨークの方は跡形もありませんからね。そしてどんな小規模国家であろうと参加をしてください。今後の世界の行く末を決める重要な会合です。前のように常任理事国などのような形式は取りません。我々日本は皆さんを信じています。この戦後すぐの状態では難しいかもしれませんが貴方方からも信頼を得られることを切に望みます。私からは以上です。長い間電波をジャックしてすまない。それぞれの生活に戻ってください」
こうして香川の演説は終わった。
「総理、すこし脅しすぎでは・・。冗談になりませんよ。今の日本じゃ」
演説をカメラの後ろから見ていた拓也が頬を引きつらせ苦笑いしながら香川に言う。
「だよな・・・少し言い過ぎた自覚はあった」
勘弁してくださいよ。などと政府関係者からも笑い声が上がる。
「だが、この世界が戦争復興の意思が一致している時に打てる手は打っておかねばならない。これがせめてもの日本の世界への償いだ。さぁ、また忙しくなるぞ」
香川の神妙な声に皆、顔が引き締まる。
小さな島国は大き過ぎる目標を掲げ、世界に目を向けた。
あとエピローグでこの近未来編は完結です。
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