第44話 本土侵攻
またまた遅くなって申し訳ない・・・。
クソ長いよ。時間のあるときに読んでね。
執務室が夕日に赤く染められるなか、拓也はモニターに向って話していた。
「はい、手元に届いています。・・・・・・いよいよですね」
『あぁ。・・・誰かが終止符を打たなくてはならん。始めた国が言うのもおかしいがな』
相手は香川のようだ。
「そうですね。では・・・・2日後ですね」
失礼します。とモニターから香川の顔が消える。
一夜明け、米本土侵攻作戦前日。
それぞれの搭乗艦のCICにてブリーフィングが開始された。
作戦参加艦のCICのディスプレイに拓也の顔が映る。
「どうも、総司令の北川だ。早速だが参加戦力はこの通りだ。・・・・そう、MI2の時と変わらん。空母が3隻のなったぐらいだ。赤城さん、加賀さん、信濃さん、頼みました。・・・・・よし。空母の数を減らしたのは言うまでも無いが、敵レーザー戦艦に航空戦力はあってないようなものだ。航空隊には暇をさせるかもしれんが、艦隊防空を主任務とする。まぁ、たどり着かれることは無いと思うが」
那奈が、詰まらん。むぅ・・。と唸り上官から、死に急ぎなさんな姫様。とからかわれ周囲の笑いを買った。
「そして何よりの新戦力、今私の乗っている敵レーザー戦艦に唯一対抗可能な最強戦艦!三笠さんです!」
「えへへ・・」
ちょっと照れた様子で拓也の隣に立つ三笠さん。皆から、オォー!と拍手されさらに縮こまる。初対面で一国の総理に説教こいた人とは思えない。
「今回の本土侵攻に踏み切れたのは米国のハワイ放棄がでかい。正直あれが無ければ今この作戦を実行に移せる段階ではなかった。よって会敵予想地点は北太平洋の真っ只中だ。最終到達地点はサンフランシスコだ。現在ハワイを放棄した米海軍の太平洋活動拠点となっています。堂々とゴールデンゲートブリッジをくぐるぞ。因みにこの三笠は日本海軍1位の全高ですが、ぎりぎり通れます」
また余計な事を・・。と那奈が呆れ返る。
「それと今回の最大の防衛対象にして日本の象徴であらせられるお方です。どうぞ入りください」
拓也がそう言うとCICのドアがゆっくりと開き、真っ黒のスーツを身に着けたSPに囲まれある人物が入ってきた。
「どうも、皆さん」
その人物の顔を見たとたん、CICの全員がすっころぶような勢いで立ち直立不動で敬礼を送った。
他の艦のCICは何が起きたか理解できていなかった。
「今作戦には、天皇陛下直々のご希望で正規空母信濃にご乗艦あそばされる事が決定されました。当初は総理が乗艦される予定でしたが急遽変更となりました。・・・一同!決して無礼のないように!ではどうぞ・・」
天皇陛下は拓也の元いた場所、カメラの前に場所を移す。日本中の艦艇のCICが騒然としこれらも直立不動で敬礼を送る。
「本日、全国民を、しいては日本を日々守ってくださっている皆さんと一堂に会することは、私の深く喜びとするところであります。お国の判断で皆さんへ多大な苦労と身の危険を脅かす結果になってしまい深く陳謝の意を表します。ーーー」
その後もおことばをもらい決心を新たにした。
そのあと作戦の詳細が長々と説明され明日に備え解散となった
「どうだ篤、呉は」
『いい所だぜ。あ、それとな!俺にも艦魂見えるようになったぜ!』
自室に帰った拓也は呉に転属になっていた篤に電話をかけていた。
「ほんとか!ずっと見えるのか?」
『いや、たまにだ』
「最初、めっちゃビビッてたもんな」
『うっせぇ!』
まだ引きずっているみたいだ。時々笑い話として出てくる。
『明日は俺も大和に乗って出る。・・・にしても大和ってちっちゃいのな』
「あ・・それ言うと・・・」
いったいいたい!と電話の向こうでのやりとりが聞こえてくる。
『暇してるみたいだから相手してくる、すまんな』
「いいさ、なんかおじさんじみてきたな」
同い年だ!と怒鳴られ通話が切れる。
「篤も篤で苦労してるんだな。まぁ面倒見いいし大丈夫か。・・・・・で・・・」
視線を上げる。
「なんでお二人がいるんですかね?ここ執務室じゃないですよ」
二人して拓也の自室の床で横になり何かを見ている。
「あの~聞いてますか~・・・・」
集中して聞こえてないらしく、返事がない。
「さっきからなにみてr・・・・」
拓也の顔からサァーと血が引く。
「な!可愛いだろ!航空学生の時に部屋で見たいらいだな~」
「拓也にもこんな時期があったのか・・」
「「あぁっ!!」」
「二人して何読んでるかと思えば!」
二人が見ていたのは拓也のアルバムだ。航空学生になった時になぜか母から送られてきて、仕方なく今も持っている。こういうのって親が持っとくものじゃ・・。
「はい、残念そうな顔しない!ささ明日に向けて休むんだ!」
「「えー・・・はぁーい」」
やっと出て行った。あー疲れる。あんなに仲良かったっけ?まぁいいや。
この日も、過去数え切れないほど続いてきたのと同じように日が落ちる。
2018年8月18日。日本の、あるいは世界の運命をかけた作戦が決行された。
参加戦力は以下の通りだ。
・正規空母 『赤城、加賀、信濃』
・軽空母 『鳳翔、龍壌』
・戦艦 『三笠、長門、陸奥、大和、武蔵、金剛、比叡、榛名、霧島、伊勢、日向、扶桑、山城』
・重巡 『古鷹、加古、青葉、衣笠、妙高、那智、足柄、羽黒、高雄、愛宕、摩耶、鳥海、最上、三隈、鈴谷、熊野』
・軽巡 『球磨、多摩、木曽、北上、大井、阿賀野、能代、矢矧、酒匂、川内、神通、那珂、長良、五十鈴、名取、由良、鬼怒、阿武隈、天龍、龍田』
・駆逐 『130隻』
・潜水艦 『伊540型5隻、伊560型6隻、伊600型2隻』
・航空機 『F-3神風270機、対潜・哨戒・救難ヘリ約75機』
・兵士 『17,320人(士官・乗員・飛行要員)』
朝5時。まだ日が顔を出したぐらいで、まだ辺りは薄暗い。その中を日本全国各主要軍港5港から続々と出港する艦影が多数あった。
全参加艦艇が外洋で合流後は外部迷彩皮膜、電磁防壁を展開し、視覚的、電子的に海と一体化していた。
外部迷彩皮膜展開時は艦橋のガラス部分にもシャッターが下り甲板など建造物の外へは出れない。従って、外の様子はレーダー頼りになる。
航跡が少なくなるように設計されているが、速度は遅い。
10日後、2018年4月28日
アメリカ東海岸、サンフランシスコ沖1000kmの地点。
「外部迷彩皮膜、電磁防壁、ともに正常に作動中。天照より。サンフランシスコ湾内に動きなし、気付かれてはいません」
「よし・・・本土、総理へ通信。作戦通りに」
「了解」
拓也は作戦の通りに総理、香川に連絡を入れた。
ことの詳細はというと、米国への無条件降伏勧告である。西海岸沖合い1000kmという位置で艦隊が停止した理由は降伏の猶予を与える為である。
中央作戦司令部
「了解した。始めよう。・・・・・前と同じだ。大統領を呼び出せ」
程なくしてスクリーンに敵のトップが映る。
『こんな時になんだ』
少々怒り気味である。当然だ。ミッドウェーの失敗があった直後だ。
「・・・・・単刀直入に申し上げます。我が日本は貴国に対し無条件降伏を進言します」
少し間を空けて表情一つ変えずに話し出す。
『ミッドウェーでの勝利で勢い付いたか?クズに下げる頭など無い』
そこまで言うと、手でなにやらジェスチャーをカメラの向こうに送った。通信を切れという合図だろうか。だが・・・・
『早く通信を切れっ!!』
とうとう怒鳴り散らす。カメラの後ろからだろうか、通信が切れません!と騒ぐ声がマイクに入ってきた。
「どう足掻いても切れませんよ。・・・・いいでしょう。この判断の答えあわせをしよう。アメリカ最後の大統領殿」
『・・・・なにぃ!?』
とここで通信が切られる。
香川はカメラの前から移動し、拓也らに繋がる通信を開いた。
「プランBだ。プランAは破棄。手加減はいらない」
『・・・・了解しました』
戦艦三笠艦橋
「・・・・全乗組員へ・・聞いたな。空母信濃を第1護衛対象として戦闘陣形」
合図でおよそ150の艦船が移動を始める。
10分後、三笠を先頭に変形が完了した。
「よし、各艦へ外部迷彩皮膜及び電磁防壁解除。第1種戦闘配置へ」
艦首部分から徐々に迷彩が解かれ灰色の軍艦色を身に纏った日本海軍連合特殊作戦艦隊が姿を現す。
この時、米レーダーサイトでは大騒ぎではすまなかった。いきなり敵主力艦隊が首根っこに現れたのだ。ただ事では無い。
「艦魂、兵士へ通達。陸地への砲撃は現時点では許可しない。もう少しでサンフランシスコ湾からぞろぞろと出てくる敵艦船及び航空機のみを攻撃対象とする。それに加えサンフランシスコ国際空港、オークランド国際空港、周辺滑走路へのレールガン砲撃、ミサイル攻撃は許可する。艦隊前進25ノット。」
沖合い500kmを切ったところで、ようやく敵艦船がゴールデンゲートブリッジを越え外洋へ出てきた。
「あながち戦艦の起動に時間が掛かったのだろう。あいつがいなければ現代艦なんざただの鉄クズだからな」
『長門より!滑走路の破壊を確認!だが破壊前に数十機上がった!航空機接近!!』
「よくやった。全艦砲撃中止。・・・・・真打登場と行こう」
米航空隊
「くそ!何機上がった!」
『恐らく50機ほどです!」
滑走中に殆どが撃破されていたが、かなりの数が飛び立っていたようだ。
「アイオワ・ミズーリ・ウィスコンシン上空を通過、高度上げろ」
『まもなく水平線に敵艦隊視認できます』
高い艦橋が水平線から頭を出した。
『敵戦艦視認先頭はヤマトクラス1隻、その後ろを・・・・ヤマトクラス2隻?』
「は?ヤマトクラスは2隻と聞いている。よく見ろ」
『しかし隊長・・・・・』
知らないのも無理も無い。三笠はまだ霧の中からの砲撃のみで姿を晒したことは無いのだから。
「まぁいい。射程に入る。全機LRASM-B発射後散開!」
戦艦三笠
「三笠さん、試作段階ですが拡散粒子弾でいきましょう。遠慮は要りません。吹き飛ばしてやってください」
横に立つ三笠に対し司令を出す。
「視界が晴れてるってのはいいものね。この距離だと少し慎重に・・・」
そう言うと同時に艦橋前の主砲からビームが放たれる。拡散粒子弾。第2次大戦時にあった三式焼霰弾のような物だ。もっともばら撒かれるのは弾子ではなく粒子ビームだが。
3秒後、航空隊は光に包まれた。隊長機を過ぎたところで反応、360°全方位にビームがばら撒かれた。
「飛行機の編隊消滅!やればできるのよ私は!」
自画自賛である。
「このまま突っ込むぞ。空母及びその護衛はここでレーザー排除まで待機。三笠を先頭に蜂矢の陣。前面を戦艦で固めろ、その後ろを駆逐、軽巡、重巡だ」
『拓也、そろそろ敵さんの登場だぜ』
「あぁ、分かってる篤。艦隊停止」
今作戦では篤も大和に乗ってきている。
艦隊間距離約50km。これまた現代では考えられない近距離だ。
スクリューを逆回転させ急停止する。お互い戦艦を先頭に対峙する。
その緊張感から思わず小声になる。
「三笠さん、手はずは分かってますね?」
「はい。レーザー兵器の排除ですね。やってやりますよ」
「いくぞ・・・・・。戦艦三笠のみ最大戦速!他の艦魂は擬似堕艦形態へ!反撃の隙をあたえるなっ!」
戦艦ミズーリ
「敵戦艦1隻が突っ込んできます」
「ほほう、このミズーリとやり合うか。レーザーがある限り貴様らに勝算はないっ!こちらも行くぞ!他2隻の戦艦にも伝えろ!」
「艦長!後方の戦艦が変色。黒に染まっていきます!ミッドウェーと同じです!」
「あれも脅威ではない。気にするな」
かなりレーザーを信じているようだ。だが・・・・。
『『慢心はよくないなぁ』』
天高い所から発せられた少女の言葉だった。
グァァァァァン
「何だ!?どうした!」
「本艦被弾!・・・これは・・・・・!!レーザーCIWS被弾!機能停止!」
「な・・・・・・」
「アイオワ艦長より通信!開きます!」
『あの戦艦はダメだ!!あいつのせいで前の作戦はしっぱ』
「なんだ!どうした!」
艦橋からアイオワの方を見る、とそこには・・・・
「あっちゃ。外した」
「次ですよ次!!!」
三笠の戦闘中とは思えないほどの余裕さに拓也はびっくりしていた。
歴戦の艦の艦魂だけはあるな・・・・。
アイオワの艦橋は、跡形も無く消し飛んでいた。
アイオワへの次弾は的確にレーザーCIWSを狙っていた。
「・・・・・・あれが・・・・光の槍・・・」
アイオワの艦長が、先の作戦の報告書の記憶を辿っている間に、三笠はウィスコンシンのレーザーCIWSも破壊し終えていた。
拓也はマイクを手で口元に近づけ、はっきりと命令を下した。
「レールガン連続斉射!!」
「敵後方の戦艦群からの発光を確認!レールガンきま」
米通信兵が言い終える前に数え切れないほどの鋼鉄の塊が極超音速で押し寄せた。
「敵戦艦沈黙。・・・・・拓也、やっていいよね?」
またも三笠の立ち振舞いに驚かされる。これが本当の戦争を経験したものの余裕なのかと。
「あぁ・・・・構わん。各個自由射撃、殲滅戦へ移行する。敵艦隊包囲陣形、左右へ展開」
頼りの綱であるレーザーCIWSを失った米艦隊はミサイルを放つ程度しか反撃らしい反撃はしてこなくなった。
「敵空母のお出ましだ。空母赤城、加賀へ。艦載機発艦。こっちのレールガンは対艦戦闘で忙しい。空は頼んだ」
敵艦隊後方に空母が展開していた。レーザーの無い今、制空権の確保は急務であった。
そう言った直後。
ズガァァァァァァァァン
三笠の右舷で20mはあろうかとうい程の水柱が数本上がった。
「ッ・・・!魚雷攻撃です!ですが周辺に潜水艦は・・・・・」
さすがに対潜大国である日本でも作戦行動中の米潜水艦を見つけるのは容易な事ではなかった。
「大丈夫ですか!?三笠さん!」
「いってて。大丈夫ですよ、こんなもの、砲弾の被弾に比べれば!!」
いや、一応これも被弾なんですが。という突っ込みは拓也の喉から出ることは無かった。
「出番だ。潜水艦隊!暴れてやれ」
『こちら潜水艦隊旗艦伊600。了解。シーウルフなんて目でもありませんよ。やってみせます』
「対潜の心配はしなくていいのですか?」
なおも敵艦へ砲撃を続けながら三笠が聞いてきた。
「大丈夫です。そのうち水柱が何本も上がるから」
空、水上、海中で世界最大戦力、最新鋭の兵器がぶつかりあう。
「ネメシス、会敵。各機!下からの攻撃に気をつけろ、腐ってもイージスだ」
了解!!と攻撃隊から返事が返ってくる。
「よし・・・散開!」
合図で四方八方に散らばる。今回はF-35が相手だ。先のF-18のようには行かない。
神風との性能はどっこいどっこいだろうか・・・。
「こちらピック2!後ろを取られた振り払えない!」
シザース、急旋回を繰り返すも逃げられない。そうこうしているうちにコックピット内にミサイルロックを知らせるビープ音が鳴り出す。
すると特異な機体が眼前に迫る。煌風だ。
しかし、ミサイルロックを知らせるビープ音からミサイル発射のそれに変わる。
「ネメシスよりピック2、敵ミサイル発射!回避回避!」
フレアを撒いてスライスバックにはいる。ミサイルを放った敵機は既に他の獲物へと品定めをしていた。
「ッック!・・ダメか・・・すいません・・赤城s・・・」
エンジンに被弾し引火、機体は木っ端微塵になった。
「・・!!・・・よくもッ!」
ピック2を撃墜した敵機を睨んだ瞬間、煌風のコックピット内にもビープ音が鳴り、後ろに着かれる。
「クッソが!!」
敵機の追撃を断念し、思考を回避に切り替える。
既に両軍は航空機の大半を失っていた。
「も一回やってみるか・・・?」
そう言い後ろをチラッと確認する。
よしッ!と踏ん張ると機首を真上に向け垂直に上昇していく。Gに逆らいながら後方、下を確認する。と、丁度こちらに機首を向けるところだった。
敵パイロットがよし!と思った時にあるはずの機体がそこには無かった。慌てて周囲を見回すと、すぐに見つかった。こちら、コックピットに機首、ならびに機関砲を向けた煌風が真横にいた。木の葉落しだ。
機関砲のレティクルと敵機が重なった瞬間にトリガーをほんの一瞬引く。だがその一瞬で百数十発が発射され敵機体に命中、火を噴いて落ちていった。
危機を脱し周りを見回すと、敵、見方両方残りは数機になっていた。
敵戦力F-35、78機に対しこちらは神風85機を上げた。それで互角といったところか、戦闘機では大きく遅れを取っているのが嫌でも分かる結果となった。
その頃海中では・・・
「音紋解析済んだか」
伊600の艦長が尋ねる。
「・・・はい。ロサンゼルス級9隻、シーウルフ級1隻、バージニア級5隻です。恐らくサンフランシスコ外からの出港と思われます」
「連合潜水艦隊浮上。射線に注意し各個撃破」
この時に海中にカメラがあったら鳥肌総立ちで恐怖すら感じる光景だっただろう。あちらこちらの海底の溝の部分から伊号潜水艦がゆっくりと浮上する。伊号600型2隻を筆頭に親子でつれそう鯨のようにその後を伊号500番台の潜水艦たちが追う。
伊号600型2隻、伊号540型4隻、伊号560型2隻、計8隻の艦隊だ。
「捕らえました。方位046距離1500深度400」
「敵潜へ円錐状に99式魚雷発射準備。発射管1番から6番注水開始」
艦長の命令を水雷長が復唱する。
「注水完了。いつでもいけます」
「発射!」
開放弁が開けられ一気に6発の99式魚雷が発射される。基本は発射直後の比較的速度の遅い時に方向を修正しその後は直進魚雷となるが終末誘導装置が搭載されている為、ある程度の方向転換はできる。
99式はスーパーキャビテーション魚雷であるため多数の気泡が発生する。その為騒音がでかく探知は比較的容易だが、最大の特徴である速度で回避をより一層難しいものにしている。
「敵潜水艦深度下げます。・・・・・・命中音確認3発、続いて圧壊音確認」
伊号潜水艦は続々と敵潜水艦の数を減らしていった。
結果、敵潜水艦12撃沈、残り3隻は緊急浮上後日本海軍駆逐艦により制圧。被害は伊542が被弾し耐圧殻にダメージを受けこちらも緊急浮上、総員退艦後にゆっくりと沈んでいった。
「了解。空、海中共に殲滅完了したそうだ」
拓也の元に通信が入る。
「拓也、あまりに一方的ではなくて?」
砲撃戦の様子を見て三笠が拓也にある提案をする。
「どうした?」
「敵も反撃してきますが、現代艦の艦砲では装甲表面に焦げがつく程度ですし、ミサイルは迎撃されて終わりです。・・・・もう一度降伏勧告は・・・どうでしょう?」
んー、と唸り考え込む。
「よし、全艦へ。擬似堕艦形態解除。そのまま警戒態勢へ」
『拓也!どういうことだ!?』
「悪い、長門さん今に分かりますから」
CICからの回路開通の通信が入り、マイクを握る。
「敵残存艦艇へ告ぐ、降伏の意思がある艦は戦闘旗をマストから降ろせ。こちらは日本だ,無駄な殺生は望まない。繰り返す、降伏の意思がある艦は戦闘旗を降ろせ」
数分後、残りの約20艦ほどの内、半数程が戦闘旗を降ろし降伏した。
残りは無謀にも突っ込んできたが、文字通り海の藻屑と消えた。
こうして、日本海軍の電撃作戦は幕を閉じた。
米大統領のサンフランシスコ到着を待って湾内に三笠、大和、長門、他駆逐艦数隻が入る。
湾内の岸壁に着いた戦艦三笠の第1主砲身横甲板上に降伏文書調印用の机が設けられ、マストには日章旗と旭日旗がなびいていた。
2018年8月29日午前10時06分、日本海軍兵が対人装備で身を固め甲板を埋め尽くす中、米大統領モーリス・カーター乗艦。続いて国務長官、国防総省長官、国土安全保障長官、NSA長官、DIA長官、NRO長官、統合参謀本部各司令が乗艦した。
調印の席にモーリス大統領が座るも、書類も無ければ向かいの席に人は座ってなかった。
「司令官はどうした」
かなり不機嫌か焦っているのか言葉に少々苛立ちを含んでいた。
すると向かいの海兵の前に立っていた制服の二人の内、一人の若者が近づいてきた。
「日本国海軍総司令の北川拓也です。少々お待ちください」
「貴様が司令官だと?若すぎるでわないか。このアメリカ合衆国大統領をバカにしているのか・・・。香川め」
拓也は少々ムッとしたが毎回のことなので堪え、もといた位置に戻った。
数分後、モーリスの怒りが最高潮に達しようとした瞬間。
「「敬礼ッ!!」」
先程、海軍総司令と名乗った若者が大声で命令し、一糸乱れぬ動作で甲板にいた海兵が敬礼する。
何事かと思い、背もたれに肘を掛けながら後ろを振り返る。
と、額に汗を滲ませた米国を統べるといってもいい重役達の顔があった。これまた何事かと思い、思わずイスから立ち上がり、長官らの視線の先を見る。
とそこには、モーリスが予想していたより高齢の人間がSPに囲まれて歩いて来ていた。
その人物の顔を認識し理解したとたん、サー、と血の気が引き背筋を不気味な悪寒が走った。
有史以来世界最古の現存する王室にしてローマ法王に並ぶとも劣らず、世界のトップと言っても過言ではない人物。
さっきまででかい態度を取っていたモーリスだったが、手足、体中が震えまともに立っておれずそのまま元座っていたイスにへたり込んだ。
そのまま、モーリスの向かいに座った天皇陛下はにこやかに笑われた。
あ・・・あ・・。とモーリスが怖気づいていると、陛下が口を開かれた。
「どうぞ楽にしてください。このたびはこのようなことになってしまい、なんと申せばよいか・・・・」
「い、いえとんでもございません!こちらこそご迷惑を・・」
もう何を言っているか分からなくなっていた。
「では早速で申し訳ないのですが、こちらに」
そういって陛下の横に立っていた男性が文書を机に差し出す。
ここでようやくほんの少しだが我に帰ったモーリスは、敗戦したことを再確認させられる。
大統領に続きそれぞれがサインをしていき最後の1人がし終えた。
その様子を三笠は艦橋の縁に腰掛け見ていた。
すると視界の端の高いビルのてっぺん辺りで何かが光った。
太陽光の反射か?・・・・・まさか!?
「拓也!!!艦首より3時の方向に発火炎!!狙撃だ!」
三笠が遥か下にいる拓也に向って叫ぶ。
時がゆっくりと流れるように感じる。
それを聞いた拓也はこの場で一番の護衛対象への考えうる射線に向って飛び出した。
そのほかにも聞こえた兵士は列の後方であろうと押しのけ第1護衛対象の元へ飛び出す。SPも数人が聞こえたらしく、艦魂であろう声に従った。
一番近い、文書を出したSPには聞こえてないらしく無反応だ。聞こえた中で一番近いSPで3メートルある。
間に合えぇッ!!そう思った時、横で着弾音が響いた。
飛び出した全員は対象を前に捉えていた。なのに横から着弾音。
対象を保護し、海兵に日本人以外の拘束を瞬時に命令し、事実の確認に辺りを見回す。
すると拓也らの横にあった三笠の第一主砲身の内一番右の砲身が通常想定されていない角度で俯角を取っていた。弾丸は砲身に直撃したらしい。
咄嗟に三笠の方を見ると発射地点であろうところを睨んでいた。光学カメラでも使っているのだろう。
「撃て」
拓也は知らず知らずの内に口に出していた。
それを聞いた三笠は第一主砲を稼動させ中央の砲身からビームを放った。
着弾後、ビル登頂部は跡形も無く消えていた。爆発も無く地上への被害は無い。
護衛対象を艦内に退避後、湾内からの緊急脱出を命じ、最大戦速でゴールデンゲートブリッジを目指した。
その際にNSA長官が海へ飛び込もうとしたが、三笠の甲板が広かったのとSPの足への射撃により再度拘束された。逃げた理由があるな。と拓也はそう思ったが、尋問するまでも無くすぐその行動の理由がわかった。
市街地より多数の対艦ミサイルが発射された。三笠、大和、長門は各艦これを迎撃しつつ湾外へ出た。
「総理へ緊急通信!!」
湾を脱し艦隊と合流した拓也は香川への報告を急いだ。
『どうした!?』
向こうも想定外の通信にひどく慌てたらしい。
「攻撃です。降伏文書調印の際に狙撃を受け、続けてミサイル攻撃を受けています!」
『陛下は!?』
「大丈夫です。ご無事であります」
『反則か・・・・。大統領め・・。』
ここで拓也は一つの根拠ある仮説を口にする。
「失礼ながら総理、これは大統領の策略ではないかと思われます」
『ん?何故だ』
「この攻撃のさなか、大統領その他は怯えきったいましたが、その中で一人違う行動を取ったものがいました」
このあとにNSA長官の行動を伝えた。
『わかった。とりあえずは安全の確保だ。向こうがその気ならこちらもやり返す権利があるはずだ』
「了解です」
回線の切り替えを済ませ、全艦言い放つ。
「索敵情報を天照と同期、16式榴弾による対地艦砲射撃及び伊600型潜による周辺制圧を開始」
通信後、三笠以外の戦艦の主砲砲身がゆっくりと変形し実弾射撃形態へ移行する。
この機能は元々設計されていたもので、対地火力支援用の手段として用いる。
その後にレールガンや粒子砲とは比べ物にならない程の爆音が響き渡る。
それの呼応するかのように、なにも無かった水面から漆黒と純白のミサイルが飛び立つ。
数十分した後に砲撃がやんだ。
あれほどビルが乱立し、騒がしかった姿はもう無い。伊600型のSWCM(衝撃波巡航ミサイル)及びEWM(炸裂弾頭弾)攻撃と戦艦の対地艦砲射撃によってビルは何一つとして立っているものは無く、瓦礫の山と化していた。そこに数時間前の先進的な町並みは見る影も無い。
海上で戦闘が開始した時点で、市街地からは民間人は我先にと逃げていたらしく、まぁ当たり前だが。その為か民間人への被害は最小限に抑えられた。だが少なくは無い。




