第10話 動向
あの香川の演説から数日が経ち、世界各国では新生日本との対応、連携を模索していた。特に騒がしいのがアメリカである。
アメリカは日韓対馬沖海戦の際に日本との安保条約を破棄、完全に日本国内から全軍を撤退させている。これで日本からの信頼がゼロの等しいことは、誰の目から見ても明らかだ。現に今の日本国民は独立感情が少なからず芽生えてきている。アメリカの縛りからの開放。完全な独立国家。これが日本国民の総意である。だが、日本はアメリカにとって重要な国であることは変わりはない。どうにか手中に収めようと、米国政府は躍起になっていた。
補佐官
「あの、総理。米国政府からの対談の申し出が昨日と今日合わせて数十件来ているのですが。いかがしますか?」
香川総理
「却下だ!そう伝えろ」
補佐官
「し、しかし...」
香川総理
「聞こえなかったのか?断れと言っている」
補佐官
「はい、分かりました」
香川総理
「(今は計画のことで忙しいんだ。他に時間を割く余裕などない。それにいい機会だ。頭を冷やすといい)」
補佐官
「そうでした総理。ジオフロント計画のことで話があると防衛省...あ、国防省長官から連絡がありました」
香川総理
「わかった」
総理執務室
香川総理
「それで、話とはなんだ長官」
矢谷国防長官
「はい、富士基地に設置予定の大出力ビーム兵器ですが、ビームに使う元素の選定がまだでして」
香川総理
「そうか、だが話はジオフロント計画のことじゃなかったのか?」
矢谷国防長官
「あ、はい。近畿での作業中に奇妙なものが見つかりまして。総理に視察に来ていただきたいのですが」
香川総理
「行くのは構わんが...奇妙とはなんだ?」
矢谷国防長官
「ありがとうございます。掘削班が不自然な空間を発見し、そこで何かの物質を見つけ現在解析中です」
香川総理
「そうか。わかった、今から行こう」
近畿地方某所 地下900m
香川総理
「なんだ...これは...」
総理の目の前には、東京ドームが何個入るか、のような言葉では表しきれないほどの空間がずっしりと構えていた。
矢谷国防長官
「この空間がかなりの大きさだったためここの作業は効率良く進みました。総理、あちらです」
香川総理
「ここで解析を?」
矢谷国防長官
「はい。あぁ、そこの君。総理に説明してくれたまえ」
研究員
「どうも、総理。演説ご苦労様でした。早速ですが説明に入ります。この空間にある素粒子が充満しています、しかし人体には無害なので気にしないでください。その素粒子ですが粒子統計はフェルミ粒子に似ているのですが既存の素粒子のどれにも当てはまりません」
香川総理
「よくわからんのだが。新種の素粒子とゆうことか?」
研究員
「そうです。それでこの素粒子を兵器転用し、予定していた中間子ビームより強力な荷電粒子砲が作れます!計画変更の許可をいただきたいのですが」
香川総理
「構わんよ、だが陸軍ともしっかり話してからにしてくれ。君らは専門家だからな、期待しているぞ」
矢谷国防長官
「総理、わざわざありがとうございました」
香川総理
「いやいや、しかし人間の探究心はすごいな」
矢谷国防長官
「彼らが自由に研究を進められるのも、総理のおかげですよ。米国の監視の目もありませんし」
これに続き海軍の、戦艦・空母・軽、重巡洋艦の改修が終了。駆逐艦を残すのみとなっていた。
横須賀海軍基地
拓也
「いやー改修も終わって、ここもにぎやかになってきたなー」
篤
「そーだな。未改修なのは駆逐艦だけだな。そーいや駆逐艦にも艦魂はいるのか?」
長門
「いや戦艦・空母は、司令のように見える人には見えるが重巡洋艦以下は話こそ出来るが、私達のように実体はない」
拓也
「そーだったのか。どーりで見ないわけだ。それはそうと長門。新しい武装はどうだ?」
長門
「いい感じだ。思ったよりも軽いんだな。前のはものすごく重かったんだ。それにあの主砲だと約500km先を狙えると聞いたぞ。それと目も良くなった」
拓也
「レーダーも変わったからな。あぁ、駆逐艦の改修が終わり次第、試験航海に出るらしいから皆に伝えておいてくれ」
長門
「わかった。しかし副指令も私が見えないのにもずいぶん慣れたな。最初はあんなだったのに」
長門が笑いをこらえながら言うと、篤は顔を赤くした。
3人で笑っていると、ノックが聞こえた。
陸奥
「司令官、長門さん見なかったかしr...あらここにいたの」
長門
「どうしたんだ陸奥」
陸奥
「艦体の点検でもしようと思って探してたのだけれど」
長門
「そうか、改修が終わってからやってなかったな。試験航海の事もあるし、司令、副指令失礼する」
拓也が、おうと返事をすると司令執務室の扉がひとりでに閉まり、試験航海って?と二人が話す声が遠ざかっていく
篤
「さて、おれも仕事に戻るかな」
大きく伸びをして篤が執務室から出て行く
拓也
「さてと...空母の改修も終わったことだし、空軍さんに戦闘機の開発状況でも聞いてみるか」
空軍はというと、技術者らが天照に心神と富嶽の基礎案を提出。そして膨大な...と言ってもコンマ何秒だが、天照のなかであらゆる場面のテストを行った。高高度、急旋回、背面飛行、急減速、急降下、垂直上昇...それらを踏まえ改良、修正を加えたものが天照より送られてくる。各企業と連携をとり、富嶽、心神、心神甲型(艦載機)、心神乙型(VTOL機)は試作1号機は完成していた。どれも量産体制が揃い次第、生産可能だ。
調達数
富嶽・・・125機
心神・・・500機
心神甲型・・・720機
心神乙型・・・180機
続いて陸軍は、戦車の車体、主砲、その他装備は開発が終わったものの、肝心のエンジンの開発が難航。
代わりに10式に9式の主砲を搭載した、10式戦車改が量産に入った。
調達数
10式改・・・75両
9式・・・50両
日本、各軍ともに計画完遂を目前に、天照がある情報をもってきた。
中央防衛局 航空宇宙防衛作戦室
局員
「天照から入電。ロシア、北朝鮮に動きあり。です。映像きます」
局長
「北は毎度の事だが一応、発表があったか確認を取れ。それよりロシアだ」
天照から送られてきた映像には、舞水端里ミサイル基地で発射体制に入った弾道ミサイルと思われるものが映っていた。もう一方の映像には北朝鮮とロシアの国境付近を移動しているロシアの軍用車両が映し出されていた。
宇宙防衛局長
「総理と防衛長官に連絡。念のため各省、各軍にもだ」
宇宙防衛局員
「了解」
数時間後
中央防衛局 中央作戦司令部
香川総理
「皆、局長から話は聞いているな。先程、北がミサイル実験を行うと発表した。これは毎度の事だが、今回は不安要素が一つだけある。北朝鮮のロシア国境にロシア軍の車両がいることだ。どうやら一回国境を越えて戻ってきたようだ。その目的は掴めていない。よって各軍警戒態勢を維持。航空宇宙防衛作戦室は引き続き北の動向を監視」
東アジアが騒がしくなる中、ひっそりと日が沈みその日は終わった。
久しぶりに拓也、篤、艦魂登場!(;・∀・)
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