外へ踏み出す
「ひとまず何をするにしても山を降りなければなりませんね」
「そうですね。ここって特殊鉱石からの妨害波で連絡手段が無いのが難点ですよ、まったく」
状況の悪さに溜息をつくフィリアだが、とにかく今は動く他ない。
ギルドや門の守衛には大まかな旅の行程は報告してあるが、助けが来るにはまだその予定していた行程日数は過ぎていない。
加えて、アルタットとメイルディアを追っている相手もいる以上、魔物の巣窟で隠れていることはリスクが高すぎる。
「仕方がありません。外に出たあとに連絡、その後は身を隠せる場所に移動して、野営をしましょう」
「はぁ、近くに町か村があれば少しはマシなんですけどね」
方針を決定したとなればあとは行動するのみ。フィリアはアルタットたちの前にしゃがみこんで、目線を合わせる。
「これから移動するけど、移動中はなるべく喋らないように。あと、こっちの指示にも従ってね」
「分かったよ、フィリア姉ちゃん」
「……うん。静かに…、する」
ふたりが了承すると、フィリアは簡単な指示サインだけ教えて緊急時に備えた。話すことができない場合も考慮してである。
「さて、それじゃ行くよ」
全員の出発準備が整うと、フィリアは気配遮断の魔法をそれぞれにかけた。
効果が発揮したことを確認して、レミアータを先頭にアルタット、メイルディアと続いて最後尾にフィリアがつく。
「行きましょう」
レミアータの合図に後ろの3人は黙って頷くと、フィリアたちは移動を開始した。
目指す場所はすでに決まっている。ここから最も近い出口は最初と変わらず西だ。突っ切ることができれば、日が沈む前には山を降りられるだろう。
途中の道で魔物を事前に察知したフィリアが、レミアータに移動方向を進言することで4人は魔物にあうこともなく、出口まで辿りついた。
「皆さん、もう少しです」
「うん、あとちょっとだから頑張ろうっ」
「はぁっ、はぁっ、分かってるって!」
「は…っ、は…っ、……だい、…じょうぶ…っ」
さすがにずっと逃げてきたと言っていただけに、疲れを隠しきれない様子の子供ふたりをフィリアたちが励ます。
いくら山で暮らしてきたと言っても子供は子供なのだ。体力的な限界が早いのは仕方がない。
(休ませてあげたいけど、それもここを出てからじゃないと)
子供に無理をさせるのは望むところではないが、休息を取るにしろ追っ手を振り切るにしろ、今は場所も状況も悪すぎる。
せめてもう少し落ち着いて身を隠せるところまでは移動したいところだ。
「明かりが見えてきましたよ」
「出口に敵が伏せている可能性もあります。フィリアさんは前方に特に警戒をまわしてください。
万が一戦闘になった場合は協力して撃退を。ふたりの守り優先しますが、貴女自身の身も考慮してください。こちらの手が回らないことも考えられますから」
「了解ですっ」
「お、俺たちはどうしたらいい?」
「……何か、手伝う?」
「いえ、アルくんとメイちゃんは後ろにいてください。固まっていてくれた方があちらへの対処がしやすくなります」
レミアータは各自に指示を出すと、いつでも抜き放てるように剣に手をかける。
前方の警戒を強めているフィリアからの警告はない。一度視線を後ろに向けると、背後で彼女が頷いた。
(とはいえ、魔力探査も完璧ではないとお聞きしていますし、ここからは要注意ですか)
意識を周囲に広げて、レミアータは坑道から一歩を踏み出した。
だいぶ期間が空いてしまいましたが、久しぶりの更新です。
よろしくお願い致します。




