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魔法使いの雑貨屋  作者: 狸寝入り
《第三章 双子とアメジーナの秘法》
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兄妹の理由

「はいっ。これで大丈夫だよ」

「……あり、がとう」

「ありがとな、フィリア姉ちゃん」


 ふたりの手当を終わらせ、フィリアは取り出していた救急箱をポシェットに戻す。


「レミさん、そっちは大丈夫ですか?」

「ええ、こちらも丁度終わったところです」

「それなら良かったです」


 応急処置が終わり、再び防具を身につけたレミアータが頷く。

 しかし、やはり出血と傷のせいだろう。顔色が悪く、あまり無理な動きをさせることはできないとフィリアは判断した。


「外はまだ魔物の気配がします。もう少し散るまでここで待機ですね」

「そうですね。ではその間に話を聞いたほうが良いでしょう」


 まだ周辺には気の立った魔物たちが彷徨いている。魔法の効力と建物の中ということで気配が漏れにくい状況のおかげで今はまだ見つかっていない。

 休憩の意味も込めて、フィリアたちはアルタットとメイルディアに視線を向けた。


「話、聞かせてもらえるかな? 見た感じだと冒険者って感じじゃないよね。冒険者だったらそんな装備で、ここには来ないだろうし」


 ふたりの格好は鉱山遺跡にとてもじゃないが、入るためのものではない。

 外套がいとうを纏っているが、その下の服はそのあたりの村人と大差ない上に手荷物の類をほとんど何も持っていないのだ。

 これでは鉱石を取りに来たというよりも、自殺しに来ましたと言われた方がまだ信じられる。


「それ…は」

「……お兄」

「話せない? 何を警戒してるのかは分からないけど、もしかしたら何か力になれるかもよ」

「ええ。フィリアさんは冒険者の身分としてこちらに来ていますが、私は騎士としてここにいます。

 力になれることは多いと思いますが、話してくれなければこちらは動けません」


 騎士、というのが効いたのだろう。アルタットは目を見開いてレミアータを見たあと、少しの躊躇いを持って頷いた。


「分かった、話す」

「うん、お願いね」


 兄が話すことを決めて安心したのか、メイルディアはアルタットの外套の端を軽くつかんだ。


「俺たちは、追われてるんだ」


 目を伏せたアルタットの口から飛び出た不穏な言葉にフィリアたちは眉をひそめる。


「追われてるとは、穏やかではありませんね」

「誰に追われてるの?」

「分かんないんだ。黒ずくめのやつらで、すげー動きが早いってことくらいは分かるんだけど」

「なるほどね…。追われてるのは分かったけど、何で追われてるのかとか、どうしてここにいるのとかは話せる?」

「追われてる理由は……、その」


 言葉を詰まらせるアルタットに、心当たりはあるようだと判断したフィリアは、先にもうひとつの質問を聞くことにした。


「何でここにいるのか聞いてもいい?」

「……わたしたちの家、この山の向こう」


 そこでメイルディアが口を開く。簡潔な内容だったが、それで大体の理由が分かった。


「追われて、ここに逃げ込んだという訳ですか」

「……うん」


 確かにこの遺跡の中ならば、広い空間に加えて隠れる場所も多い。

 力のある魔物も多く生息しているため、追跡してくる相手もあまり派手なことはできないだろう。


「そっか…、頑張ったね」


 だが、この兄妹にしてみても、ここに来るまでに相当な覚悟を決めていたはずだ。

 追跡者から逃げるためとはいえ、魔物が多い場所に逃げ込むということは自分たちの命も危険に晒すことになる。

 それを想像して、フィリアは自然とメイルディアの頭を撫でていた。


「……くすぐったい」

「あっ、ごめんね」


 照れたように言うメイルディアに、ハッとしてフィリアは手を退ける。


「それで、ご両親や保護者はいないのですか?」


 逸れた話を元に戻そうとレミアータが質問を引き継ぐ。


「いねーよ。母ちゃんは俺たち生んですぐに死んじゃったし、父ちゃんも1年くらい前に死んだから」

「そう、ですか。それは悪いことを聞きました」

「別にいいよ。そりゃー最初は悲しかったけど、今はもう大丈夫だからな。メイもいるし、俺がしっかりしなくちゃ」

「……お兄。わたしもお兄と頑張る」

「おうっ。任せとけよ、メイっ」


 互いを支え合うふたりの姿に、じんとくるものがあるとフィリアはひとりで泣きそうになっていた。


「メイルディアちゃんもアルタットくんも良い子だねぇー」

「……メイ、でいい。メイルディア、長くて言いにくい」

「そうだな、俺もアルでいいよ。フィリア姉ちゃん、えーと」

「レミアータです。王宮騎士団の団員を務めています。皆からはレミアータやレミと呼ばれています」

「んじゃ、レミ姉ちゃんだなっ」

「……フィリアお姉ちゃんとレミお姉ちゃん」


 元気よくニカッと笑うアルタットと嬉しそうに呟くメイルディアの様子にフィリアの頬が緩む。


「それで、追われている理由は言えない? 無理にとは言わないけど、教えてくれた方がこっちも色々とやりやすいし」


 理由を再び尋ねるが、またアルタットの顔が躊躇うような苦い表情に変わる。

 しかしそこでメイルディアが兄の外套の裾を引いた。


「メイ?」

「……お兄。大丈夫。お姉ちゃんたち、信じられる人だよ」

「ん、分かった。メイが言うなら、大丈夫だな…。フィリア姉ちゃんたちはきっと信じられると思うから言う」


 覚悟を決めた雰囲気を纏わせて、アルタットが口を開いた。


「――俺たちの家名は、アメジーナなんだ」


 アメジーナ、つい最近聞いたばかりのその言葉に、フィリアとレミアータは目を見開いた。

 1週間ぶりの更新です。

まだ仕事が忙しいので、これからはちょっと不定期になるかもしれませんが、完結はさせたいと思っていますので、よろしくお願い致します。

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