避難と手当
フィリアたちは建物の1つに気配を殺して隠れいてた。
中に入ってすぐにやったことは気配遮断の結界の構築と、4人全員に対して気配を隠す魔法を重ねてかけたことだ。
これでより見つかりにくくはなっているはずとフィリアは一息つく。
「とりあえず怪我の手当をしちゃいましょう。レミさんも結構傷、深いですよね?」
「はぁ、やはり気付かれていましたか」
服に滲んでいる血の量が、先ほどよりも多くなっている。
戦闘中は痛みを堪えていたのだが、戦いが終わった途端に痛みも感じるようになってきていた。
「君たちも、えーと…」
「アルタットだよ。こっちは妹のメイルディア」
「……うん」
子供たちの怪我の状態も確認しようとして名前に詰まるフィリアに、少年が質問を読んで答える。
アルタットと名乗った少年と、彼の妹というメイルディアはどう捉えても冒険者には見えなかった。
「アルタットくんとメイルディアちゃんね。ふたりは怪我は?」
「掠り傷ばっかりだよ。手当の道具があるならメイを先に頼むよ」
「……でもお兄だって」
「俺は大丈夫さっ。全然まだまだよゆーだぜ」
どうにも妹の方は感情を顔に出さないタイプのようだ。
だが、無感動というわけではなく、表情は変わらないながらも兄を心配している雰囲気は確かに伝わってくる。
「大丈夫。どっちも手当するから。レミさんは手当は?」
「問題ありません。これくらいならば自分でできますから。フィリアさんはその子たちを優先して下さい」
「分かりました。終わったらこれを使ってください」
フィリアが振り向いた時にはすでにレミアータは自分の傷の応急処置を始めていた。
防具を一部外して血を拭っていることを確認すると、フィリアはポシェットから下級治癒薬を1本取り出して脇に置く。
「それじゃ、メイルディアちゃん。ちょっと傷見せてもらえる?」
「………」
「メイ、とりあえず診てもらえよ」
アルタットに促されるメイルディアだが、なかなかフィリアに近づこうとしない。
まだ警戒しているのだろう。確かに見知らぬ人間が突然出てきて、街中でもないのに親切にしてやろうなど、警戒心が強い子供には受け入れられなくてもおかしくはない。
妹のそんな様子にアルタットは仕方がないと、息をついてから無理やり引っ張ろうと立ち上がる。だが、そんな彼の動きを片手で制してフィリアはメイルディアの目をじっと覗き込む。
強ばった表情で自分を見返す瞳にフィリアはできる限り優しく微笑んだ。
「大丈夫だよ。あ、そういえばわたしも自己紹介してなかったね。わたしはフィリア。王都で雑貨屋をやってるんだよ」
「……雑貨屋さん?」
「うん、そうだよ。薬とかいろんな物を売ってるの。今、ちょうど怪我を治しちゃう薬を持ってるから、傷の具合を診せてくれないかな?」
「………。うん」
少しの沈黙のあと、メイルディアはこくんと頷いた。
「ありがとう。近づいてもいいかな?」
許可を求めると、再び彼女は黙って頷く。
「ちょっとごめんね」
ゆっくりとフィリアはメイルディアに近づくと、腕や足の傷、服を軽く捲くってその下の傷の状態を手早く確認していく。
フィリアは医者ではないが、冒険者という職も兼任しているため、傷の状態の確認と応急手当くらいならばできる。
「ありがとう。これなら、下級治癒薬で大丈夫そうだね」
無意識にメイルディアの頭を撫でると、彼女は不思議そうにフィリアのことを見上げてきた。
「すぐに準備しちゃうね。ただ、このお薬を飲んだあとは少しだけ怠くなるかもしれないけど、あとでゆっくり休めばそれもなくなるから安心してね」
フィリアはポシェットに手を入れて下級治癒薬を取り出すと、メイルディアの目の前で一口それを口に含む。
警戒心の強い子供はこうしてやるだけでも、それが安全だと少し安心する。
「はい。落とさないようにね」
治癒薬をメイルディアに差し出すと、彼女はおずおずとそれを受け取った。
受け取ったことを確認してフィリアは、瓶を眺める少女に笑いかける。
もう大丈夫だろうと判断したフィリアは、次にアルタットの方へと向く。
「それじゃ、次は君だね」
「あんた、すげーな。メイが初めてあった奴から物を受け取るなんて今までなかった」
「そなの?」
心底驚いたというように目を丸くしていたアルタットは力強く頷く。
そのすごさとやらがあまり理解できなかったフィリアとしては、首を傾げるばかりだ。
「さっ、とりあえず君の怪我も診せてね」
今は話よりも手当が先だと、フィリアはアルタットにも妹のときと同じように微笑んだ。
仕事の都合で今週の更新はこれにて一旦、終らせて頂きます。
来週からはまた、更新再開予定です。




