遺跡
昨日、21頃に1話分投稿しています。
クビュタル鉱山遺跡。
500年ほど前、採掘や鍛冶関連の技術に長けた種族、ロクノエル族が造ったというかつて都だった場所。
今はロクノエル族は都市から離れ、遺跡と化したそこは魔物の巣窟になっている。
リフェイル正統王国がそこを発見したのは今より約50年ほど前。
最初のうちこそ国で管理しようと言う話も出ていたが、強力な魔物が多いこと、場所が軍を連れてくるには途中の道が狭すぎて難しいなどの理由からその話も頓挫した。
だが、貴重な鉱石類が採れると分かったことから一攫千金を狙った冒険者が後を絶たない場所でもある。
山道を黙々と歩き続けて2刻ほどすると、目的地の入口が見えた。
途中、アリヴィードの他にも何体か中位級の魔物を見かけたが、どうやらうまく隠れることに成功したようだ。おかげで戦闘にならずにここまで来ることができた。
「なんとか着けましたけど、遠回りとかしたからそれなりに時間かかりましたね」
「それは仕方がないでしょう。戦闘で無駄に傷を負うよりかはマシだと言うものです」
「まぁ、そうですよね」
入口は高さ4メートル以上、幅はフィリアたちが横に並んで歩いてもまだまだ余裕があるほどに広い。
噂では遺跡を造ったロクノエル族は巨人のように大きいらしいので、当然と言えば当然なのだろう。
「それでは潜りましょう」
「はいっ。行きましょう!」
入り口は坑道になっており、その進んだ先に目的地の遺跡がある。
フィリアは初めて来た場所のため、元気な声とは裏腹に慎重に足を進めた。
「……意外と明るいんですけど、これってもしかして」
「そういえば、フィリアさんは光放石を知っているのでしたね。そうです、ここには弱いながらも光放石が使われています」
質問を先読みしたレミアータがそれを肯定する。
冒険者か余程の物好きしか使っていない坑道は本来なら暗闇のはずだが、そこは薄ぼんやりとあたりが見える程度には明るい。
しかし松明などは見えないということは、この明かりは坑道自体が光を発していると考えた方が自然だ。
さらにここを掘ったのが大地の申し子たるロクノエル族であるならば、光放石が使われていたとしてもなんの不思議もなかった。
「さぁ、そろそろ見えてきますよ」
さらに少し道を進んでいると、レミアータがどこか興奮したような笑みを零す。
そしてその宣言通り、道が途切れてそこから大きな空間が広がっているのが見えた。
「はぁー……。これはまた、すごいですね…っ」
「私も初めて来たときには驚いたものです」
それらは巨人が造ったというのも納得というものだ。
空間は広く、高いのは言うまでもないが、遺跡の建造物の大きさが普通ではない。
石作りの建物はその全てが自分たちの生活している物より倍以上は大きいのだから、否定する方がおかしいだろう。
そしてなにより驚くことは、そこが本当に地下なのかと疑いたくなるほどに街そのものであること。
入り組んだ道は石畳で、今の王都の道と比べても遜色ない。また、建物の並びも都のそれとよく似ている。
それを目にしてしまえば、今現在も遺跡というよりも地下都市と称した方が良いかもしれない。
「ほんとにここって昔は都だったんですね」
「地学者の調べではそれも200年ほど前までらしいですが」
「これが500年前の物って信じられないです。今も整備すれば現役で使えそうなくらいですね」
あちこちに視線を向けながらフィリアは感動していた。
遺跡にはロマンが詰まっているとはどこかの誰かの言葉だが、今の彼女はそれに全力で頷くだろう。
「ここでのんびりしているわけにもいきません。魔物も多いですから早めに隠れて移動しましょう」
レミアータの声に今の状況を思い出して、気持ちを引き締めるように頷く。
上空は気にしなくてもよくなったが、ここからは獣と虫を気にしなくてはならない。また、普通の岩に見えても迂闊に近づけばそれが無生物系の魔物だったという場合もあるので、そこも要注意だ。
フィリアは魔力を拡散させると、警戒活動に戻った。




