野営準備
途中で昼休憩を挟みはしたものの、1日歩き通してやっとクビュタル鉱山が見えてきた。
しかし、すでに空は夕暮れ。茜色に染まった空が暗くなるのも、時間の問題だろう。
「さすがに今の時間から山に遺跡を目指して山道に入るのは危険です。少し早いですが野営の準備を始めてしまいましょう」
「あー、そう、ですね。もともと1日は採掘で滞在するつもりでしたし、丁度良いかもしれないですね」
完全に暗くなる前に野営の準備を整えるのは街の外で活動する場合の常識だ。そのためフィリアもレミアータの提案に賛成して野営準備に取り掛かる。
テントは目立ちすぎるため、今日は寝袋になるが安全を考えればそれも当然か。
周りには火種になりそうな物がないため、フィリアはアイテムポシェットから薪をいくつか取り出してレミアータに受け渡した。
「相変わらず便利なアイテムですね」
「頑張って作りましたからね。なんだったらレミさんにも1つ作ってプレゼントしますよ?」
「いえ、やはり高価なものを受け取るわけにはいきません。きちんと購入させていただきます」
お給料がもう少し溜まったらですけれど、と照れたようにはにかむレミアータを見て、フィリアは楽しそうに笑った。
笑いはするが、あまり照れるなどの表情は見せない彼女のその表情は破壊力抜群だ。美人ということもあって尚更だろう。
これは男の人に見せられないな、と内心でフィリアは苦笑した。
「場所は鉱山から少し距離を取ったほうがいいでしょう。山から降りてきた魔物に遭遇すると面倒ですし」
レミアータの言うことはもっともだ。一定の範囲内限定ではあるが、鉱山周辺には山から降りてきた魔物たちが徘徊していることがある。
そのため、野営を行う際にはその範囲よりも離れておくことは必須と言われていた。
「それじゃ、あのあたりにします? 距離的にも丁度良いかもしれないです」
「ええ、場所的には良いですね」
場所を決めると早速、火を起こす支度をする。
薪をくべて発火石で火をつけた。燃え上がる火を薪や空気の流れを調整して程よいところまで落とし込む。
「レミさん、慣れてますね」
「ええ、それは当然です。騎士は見習い時点から泊りがけで訓練などにも参加しますから、これくらいできなければ進級もならないでしょう」
「はぁー、なるほど」
そういえばネイトも火の調整は流れるような動作で行っていたとフィリアは思い出す。
「さて、夕食ですがご希望は?」
「一応携帯食料と調味料は一式持ってきてますけど、何にします?」
「………そうですね、塩があるなら携帯食料を混ぜ込んでスープにでもしましょうか。フィリアさんは料理の方は?」
「うぐっ…! あのー、その…、まだ練習中です……」
未だに家では練習を兼ねて料理を続けているが、どうやら向いていない方向のものらしく、上達の兆しがなかなか見られない。
そもそも最近、家で物を食べなくなった原因もそこにあるわけだが、それでも諦めたくはないと陰ながら涙ぐましい努力を続けているフィリアである。
「そうですか。それならば、一緒に作りましょう。私もそこまで上手というわけではありませんが、野営用の食事を作るくらいはできますから」
料理苦手申請を行ったにも関わらず、優しく声をかけてくれるレミアータの姿が、そのときのフィリアには女神様のように見えたという。
「レミさ~ん…! はいっ、よろしくお願いしますぅ!」
その後、四苦八苦しながらも料理を終えたフィリアたちだったが、出来上がった物はフィリアにとっては初めてまともに出来たものだったらしい。
出来上がった料理を食べた時の感動は今も忘れられないとは後のフィリアの談である。
ちょっと時間なくて短めになってしまいました。すみません…。




