魔物情報
緩やかな日々が幾日か過ぎ、ついに連休となった。
採掘の準備はこの数日のあいだに終えていたフィリアは、部屋で荷物の最終確認をしている。
「採掘器はちゃんと作動したから大丈夫。替えのパーツも予備も入れたし、携帯食料類と水も問題無し。簡易テントと寝袋も入ってるっと。発火石も…、よしっ」
連絡用の道具もきちんと確かめると、彼女は先日調整したベルトを締めて武器と防具を装備する。
泊まりがけの依頼となるとシャールロットのとき以来だが、今回は途中に宿もない。まして中位の魔物の生息域に向かうのだから、離れたところとはいえ野宿はそれなりに緊張する。
少しだけ強ばった顔を両手で一度叩いてほぐしてから、フィリアは部屋の扉を開けた。
「さぁ、行こっと!」
意識して元気に大きな声を出して家を出た。
◇
レミアータとの待ち合わせ場所は騎士団の詰所だ。
先日お説教されたばかりのそこで、フィリアはもう相手が立っているのを見つけた。
待ち合わせ時間にはまだなっていないが、待たせてしまっただろうかとレミアータに駆け寄る。
「お待たせしてすみませんっ」
「ああ、フィリアさん。おはようございます。私も今、準備を終えたところでしたので待っていませんよ」
わたわたと向かってきたフィリアにレミアータは優しく微笑みながら挨拶をする。
「あっ、先にそうですよね! えと、おはようございます」
「はい。それで、フィリアさんは準備は出来ていますか? 今の時間帯だと商店は開いていないので、足りない物があればここで補充していきましょう」
騎士団の詰所にはそれなりの備蓄がある。
もちろん普通ならば冒険者に融通するようなものではないのだが、今回はレミアータがいることに加えて、借りた物はあとで補填することで手を打っていた。
「大丈夫だと思います。ここ数日でちゃんと揃えて、家を出る前にも確認してきましたから」
「そうですか。それなら大丈夫そうですね。では、行きましょう」
「はいっ。出発しましょう!」
両手を握りしめて力いっぱい頷くとフィリアと、そんな彼女を護衛しやすいような位置取りをしたレミアータは外壁門へと向けて歩き出す。
まだ早朝のため商人以外の人通りが少ない通りを進む。途中、ふたりと同じように離れた場所に行くための専用装備を揃えた冒険者たちともすれ違ったが、会釈する程度の挨拶しか交わさなかった。
「これから行くクビュタル鉱山遺跡は中位の魔物が多く生息していますが、どのような相手がいるのかフィリアさんは知っていますか?」
レミアータが止まらずにフィリアに確認の意味を込めて尋ねる。事前情報は重要な生命線のため、ここで双方の知識を擦り合わせておく必要があると考えたからだ。
フィリアもそれは理解してるため、視線をレミアータに向けて頷く。
「はい。行ったことはないので地形は地図を暗記しただけですけど、山の中にある古代遺跡ですから、鳥類系はそこに行くまでは出ますね」
「ええ。しかし、実はあそこは中位の魔物が多いと言っても、いるのは中位の中でも弱い力の魔物が大半ですから戦闘になっても少数相手ならばなんとかなるでしょう」
「あ、そういえば確かに本にも載ってましたっけ。でも、アリヴィードとかもいるんですよね」
「そうですね、数は少ないですが。そういう力のある相手には逃走を考えたほうが賢明でしょう」
同じ位階の魔物でもその強さにはやはり差がある。
先日戦ったアリヴィードは中位級の魔物の中でも平均以上の力を持った相手だった。
これから向かうクビュタル鉱山とその中の遺跡にいる魔物の大半はそれと比べると弱い方だ。弱いとはいっても油断ならないことは言うまでもないのだが。
「遺跡内はさすがに鳥類系が住むには狭すぎるから、確か獣、虫、無生物系が多いんですよね」
「ええ、獣系にはそれらが苦手とする強い匂いの物を、虫系には火を、無生物は近づかないようにすればなんとかなるでしょう」
「もし無生物系と戦闘になったら、幻影の霧でも出して逃げましょう」
フィリアはわざと悪戯っぽく笑うと、釣られてレミアータも笑みを零した。
「問題無さそうですね。あとは現地についてから臨機応変に行動を変えましょう」
ひとまず魔物についてはふたりの役割が決まっていることも安心材料である。
あとはそれをいくつかパターンにすれば大丈夫だろうなどと話しているうちに外壁門まで辿りついていた。
「それでは出立審査をして頂きましょう」
すでにそれなりの長さの列の最後尾につくと、ふたりは自分たちの番まで大人しく待つことにした。
分かりにくいとご指摘頂いた点がありましたので、一部修正しました。
・解して→ほぐして




