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魔法使いの雑貨屋  作者: 狸寝入り
《第三章 双子とアメジーナの秘法》
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烈火の如く(雷が落ちました)

  ブルガリ商会からの依頼を了解してから数日。その間に集会所で正式な契約も結んだ。

 集会所に寄ったときにコーネリアに会えればとフィリアは考えていたのだが、あいにくと彼女はお休みだったらしい。

 最近コーネリアの方も忙しいらしく、お店の方でもあまり会えていないので残念がっていると、他の受付の女性が伝えておいてくれると言っていた。

 そうして今、何故かフィリアは騎士団詰所のレミアータの前で正座させられている。


「まったく貴女はっ。前回の襲撃を忘れたのですか! 狙われているのはおそらくフィリアさんなのですよ? 未だ襲撃者の手掛かりが掴めていない状況で遠方の依頼を受けて、その上ひとりで行こうとしていたなんて、一体何をお考えなのですか!?」

「……うぅ、面目次第も御座いません」


 烈火の如く怒っているレミアータに、言い訳することも出来ずに謝り続けるしかないフィリアの姿がそこにはあった。

 お説教が始まってからもう1刻近くが経過している。だが、周りにいる他の団員は怒り狂う同僚の恐ろしさに皆、遠巻きにその様子を見ているだけだ。

 そろそろ足が限界なフィリアなのだが、レミアータが怒る理由も現在進行形で、文字通り身にしみるほど理解しているので何も言えない。


「はぁ…っ、もう、分かりました。依頼で外に出るときは私もついて行きます。か・な・ら・ず! 声をかけて下さい」

「えっ、でもレミさんもお仕事があるんじゃ…」

「私の任務には貴女の護衛も含まれています。それにネイト殿も今は学園の試験でしばらく王都を離れているのに、他に誰かついて行ってもらえるような人はいるのですか? もちろんひとりで行こうとしていたというのは無しですよ」


 反論を封じられたフィリアは思わず唸った。

 そう、今ネイトは騎士科の卒業試験でしばらく王都を離れている。期間は1枝月で、予定ではあと3週は帰ってこないはずだ。

 従ってネイトを頼るということも今回は出来ない。


「あ…、うぅ、はい。お願いします……」

「はい、お願いされます。……はぁ、長々と怒って申し訳ございませんでした」

「そ、そんなっ、レミさんが謝ることなんてありません! わたしがよく考えずに依頼を受けたのがいけないんですから」


 怒られて当然だと思っていたフィリアにレミアータが頭を下げるもので、慌てふためくことになった。


「レミさんたちがわたしの事を心配してくれてることはよく分かってます。とっても有難いことでわたしもすごく嬉しいです。だから今回のことは怒られて仕方がないと思ってますから…」

「はい、あまり心配させないで下さい」


 顔を見合ってどちらともなく笑みが溢れる。

 お説教が終わったことを確認した周りの団員たちも安心したのか、自分たちの仕事に専念し始めた。


「ひとまずどこに行くことになったのか教えて頂けますか? 難しい場所であればそれ相応の準備も必要ですから」

「あ、はい。行くところは王都から少し離れたクビュタル鉱山遺跡です。今度の連休で行こうかと思ってます」


 クビュタル鉱山遺跡は王都から往復2日かかる場所にある。

 多くの鉱石が採掘されることで有名で構造上、身を隠せる場所も多くあるが、現れる魔物も中級がほとんどを占めているため、気配遮断に長けた者かそれに見合う力量を持つ者にしか行くのは難しい。

 実はフィリアは力量はそこそこだが、気配遮断については魔法も使えば冒険者中では屈指を誇る腕前なのだ。疑う相手がいたとしても上位の魔物相手にも通用した腕となればそれも納得される。


「そうなると、念のため迷彩効果のコートなども用意したほうが良いですね」

「そうですね。わたしは一応持っているのでレミさんの分だけ用意をお願いします」

「ああ、フィリアさんはソロ活動が多い冒険者でしたね。装備類はきちんと揃えなければ命に関わりますか」


 金をケチって装備を甘めに揃えると万が一の場合に死ぬこともあることを考えれば、金より命を取るのは余程の人物でない限りは当然だろう。


「そういえば、連休中はお店の方は良いのですか?」


 稼ぎ時では…? とそのことに気づいたレミアータが首を傾げる。


「あ、大丈夫です。一応、ここ数日でお知らせの張り紙も出しましたし、常連の方々にも伝えてあるので」

「……やはり新しい店員は欲しいですよね」


 暗に今回の連休で稼ぐのは諦める、依頼報酬もでるしと言っているフィリアにレミアータは困ったような表情になる。


「それはまぁ、追々です」


 フィリアは情けなさそうに苦笑した。

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