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魔法使いの雑貨屋  作者: 狸寝入り
《第二章 王女様とレイビィトの霊薬》
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思惑

「これは…、なんということじゃ……」


 取り出された書類が何であるか、一目見ただけで読み取ったロニールが思わず唸る。

 フィリアたちもそれを読んでみると、嫌そうに顔をしかめた。

「分かりましたか? これは最近、各国で小規模ながら問題となっている塔外での上位種出現についての調査書です」


 鋭い目つきでゴルディバが置かれた書類の詳細を説明し始めた。


「シャールロット殿下も上位種に襲撃されましたが、各国でも同様のことが起こっているという話はすでに聞き及んでいるかもしれません。その一箇所で発見された上位種が討伐されました」


 そのことだけならば喜ばしいことかもしれない。しかしこの書類に書いてある内容はそれどころではない物だ。


「しかし、討伐された魔物に商標タグがついていたことが確認されました」


 ゴルディバが改めて口にした事柄に、その場の全員が表情を厳しいものへと変える。


 

  商標タグとは、商人が自国から他国へと商品を運ぶ際につけられる認識票のようなものだ。

 それは商会ギルドやそれに匹敵しうる大手商会のみが発行を許された物で、本来であれば厳重に管理、発行されているはずである。

 つまり商標タグがついていたということは、それは商品ということであり、もしかしたら最近の上位種出現は人為的な物かもしれないということに他ならない。



「商標タグの表示はどうなっていたんですか? どこが発行したかとかは書いてあったんですよね?」


 同じ商人としてフィリアは思わず苛立ちから、普段よりも乱暴な声で問うた。


「……残念ながら。その上位種は酸性の血液を持っていたそうで、討伐した際の相手の出血により、取り付けられていた商標タグが一部破損してしまっていて読み取れなかったそうです」


 首を振るゴルディバの様子にフィリアは悔しそうに唇を噛んだ。


「ひとまず、あれは人為的な要素が絡んでるってことでいいんだな?」

「はい、それは間違いないでしょう。アームズ団長」

「……陛下、あとは貴方のご命令を貰えれば問題なしってことですね」


 不敬とも言えるような口調でアームズが王と王妃の方へ視線を向ける。

 しかし、王も王妃も団長とは昔馴染みということもあって、気にした風もなく頷いた。


「アームズ団長、この件の調査を命じる。騎士団を動かしても良い。采配は任せる」

「御意」

「油断ならない相手のようです。アームズ、気をつけなさい」

「お気遣い有り難く、王妃殿下。では、すぐにでも調査隊を結成するんで、お先に失礼させて頂きますぜ」


 騎士の礼をとると、アームズは一足先に執務室から退出していった。


「まったくあの方は…、口調くらいきちんとしたらどうですか」

「ゴルディバ、仕方なかろう。あれはそういう奴だ」

「確かに礼儀はまだまだなっとらんが、王への忠義は真であるしの。あれ以上の家臣もそうはおらぬところが面倒なところじゃ」


 最も長い付き合いの王が苦笑しながら宰相を宥めるのを、最年長のロニールが言っていることとは逆に、楽しそうな口調で眺めていた。


「……陛下、ひとつお聞きしても宜しいでしょうか?」


 ひと段落したところでフィリアは疑問に感じていたところを尋ねることにした。


「ああ、フィリア嬢。何かな」

「このような機密にも関わる事案を何故私たちにも聞かせて下さったのですか?」


 瞳に真剣な色を乗せて問うフィリアに王はふむ、と数追思案する。


「簡単に言ってしませば、貴女方はすでに関係者だからだな」

「関係者ですか…。確かに私たちは今回の件では関係者ではありますが」


 今まで黙っていたネイトも自分たちが呼ばれた理由に疑問を持っていたらしい。


「それだけではない。先日のシャウラーレニエも今回の件に絡んでいる確率が高いのもある。それに加えて、信頼できる者が必要だったということだ。今回の件を通してふたりが信頼に足る人柄であると騎士たちからも報告が上がっているのが決め手になった」


 特にフィリアを味方として引き込んだ際のメリットが高いことは敢えて口にしない。

 今のところ、確認されている限りではこの王都で聖獣の角を手に入れられるのは彼女だけだ。

 万が一、再びそれが必要になった際には協力をしてもらう必要があった。この話を聞かせたのは、彼女の動きを制限する枷としての役割もある。


「……分かりました。わたしも出来る限り協力させて頂きます」

「先日の襲撃のこともあります。フィーの様子は私も気にかけておきましょう」

「協力に感謝する。しかし、こちらから接触を図るまではいつも通りに生活していてくれて構わない」

「貴女方の生活を壊すわけにはまいりませんからね」


 王と王妃が共に感謝の意を表すのを見て、フィリアたちは力強く頷いた。

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