宰相と団長閣下と執務室
王女はしばらく安静にとなったため、フィリアたちは早々に部屋を辞した。
そのまま帰れるかと思っていたところに、王から自分の執務室に来るようにと指示をもらったので今はそちらに向かっている。
「ここだ。入りなさい」
執務室に来ると王の護衛が先に扉を開く。
開いた扉から王が招き入れるような形でフィリアたちを部屋に迎え入れた。
王の執務室というだけあって、作業机の上には山のような書類が置いてある。
あれはどうやら処理済みのものらしいが、一体何日分なのかという量だ。
部屋の真ん中には応接室も兼ねているのか、横長のソファとガラス板のテーブルが置かれていた。
「茶を用意してくれ」
部屋に付き従っていた侍女たちにお茶を出すように指示してからフィリアたちに座るように促す。
「失礼致します」
軽く礼をしてからソファに腰を降ろすフィリアたち。
そうして王と王妃も席につくと、少し遅れて侍女たちがお茶を持ってきた。
陶器製の茶器の音が止んで、出されたお茶は綺麗な琥珀色をしている。
「ありがとうございます」
お茶を出されたフィリアが侍女に頭を下げて礼を述べると、侍女はふわりと微笑んでから後ろに下がった。
「これから話すのは機密的な要素もある。部屋を一度出ていてくれ」
王が侍女に向かって告げると、侍女たちは静かに一礼をしたあとに黙って部屋を辞した。
「王、ゴルディバでございます」
「入れ」
退出した侍女たちと入れ替わりに入ってきたのは謁見の間であったことがある顔、役職は宰相の男性だった。
「儂にも何かお話があるとお聞きしましたので、参上致しましたぞ」
「陛下、失礼します」
ゴルディバと並んで入ってきたのは、王女をもう少し診察すると部屋に残ったはずのロニールと、見慣れぬひとりの大柄な男性。
剣をつけてはいないが、その服装は騎士団の上位の物だ。
くすんだ茶色の髪に片目に深い傷跡。おそらくあれでは片目は見えないはずだ。
野生の大熊のような威圧感が滲みでていることからも、男性が只者ではありえないということが分かる。
男性はフィリアとネイトを視界に入れると、騎士の礼をとった。
「お初にお目にかかる。俺は王宮騎士団団長、アームズ=ドラドティアスだ」
「あ! 失礼しましたっ。わたしはフィリア=グランツェリウスです。街で雑貨屋をしてます」
「私は騎士見習いのネイト=レイ=ルードスです。アームズ団長閣下のご活躍は聞いております」
「ああ、ふたりともよろしく頼む」
紹介された名に慌ててフィリアたちも名乗り返すと、アームズはその雰囲気に不似合いな笑みを浮かべた。
ひとまず終わったようだと判断した王が咳払いをする。
「紹介が済んだなら座れ」
王の言葉に3人とも礼をすると手近なソファに腰を降ろした。
「宰相、調べてもらっていたものは?」
「は。ここに」
王がゴルディバに視線を向けると、彼は懐に抱えていた書類から1枚を取り出してテーブルの上に差し出した。




