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魔法使いの雑貨屋  作者: 狸寝入り
《第二章 王女様とレイビィトの霊薬》
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狙い

「逃げられたか」


 ネイトが苛立ちを隠しもせずに呟く。

 4人はまだ警戒を解いていない。消えたと思わせて再びの襲撃に備えているためだ。


「……応援が来たようだね」


 少し遅れて宿の方から駆けてくる騎士たちの姿を捉え、ようやっとジルオニクスが緊張を緩めた。


「ご無事ですか!?」


 駆けつけた騎士のひとり、ラスが4人に走り寄る。

 その後ろにもさらに6人の騎士が控えている。カイオールは万が一の拠点襲撃に備えて宿に待機しているのだろうと予測できた。


「事情は後程。ひとまず宿へ戻りましょう。さぁ、お早く」

「あのっ、ありがとうございます」


 頭を下げて感謝の意を述べるフィリアをラスが護衛しやすい位置へと移動を促す。

 重要護衛対象であるジルオニクスとフィリアを中心にして、その周りを固めるようにネイト、レミアータを加えた8人が並び立った。


「行きましょう」


 少し早めのペースで歩き、一行は宿へと向かった。


 ◇


「……それで、襲撃の理由に何か思い当たることはないかい?」


 宿についたフィリアたちを待っていたのは、厳しい表情をしたカイオールだ。

 護衛対象を無事に宿へと連れ帰った騎士たちに労いの言葉をかけたあと、すぐに宿周辺の警備に当たるように指示を出すと、彼はフィリアたちを別室へと案内する。

 護衛騎士のひとりにお茶の準備を伝えると、それが運ばれて来たのを見計らって本題に入った。


「恐らくですが、狙いはフィリアさんですね」


 副団長の問いに一番に答えたのはレミアータである。伝えた想像は襲撃の際の影たちの動きから、想像した限りの情報ではあったが。


「わたし、ですか?」

「何故そう思う?」


 フィリアが瞳に不安そうな色を浮かべる。自分が狙われている対象になるなど想像していなかった身としては恐怖よりも不安の方が先に立つ。

 不安そうな彼女の様子をちらりと見てからカイオールはそのままレミアータを見据えた。


「襲撃者は5人。皆一様に同じ仮面をつけていましたが、体つきから男が4人、女がひとりでしょう。奴らの動きは終始、フィリアさんを狙っているようでした」

「狙っている、とは命をか?」


 ジルオニクスが難しい表情で唸るが、ネイトがそれに首を振った。


「それはないでしょう。最後に投げられたナイフも見た瞬間こそあの数でしたが、そのどれもが急所狙いではなく、掠らせて毒に侵させるような軌道でしたから」

「ええ、おふたりが駆けつける前も、私に対しては命を奪うように行動していましたが、フィリアさんに対しては捕らえるために動いているように感じました」

「となると、狙いはフィリアちゃんか…。王子殿下に見向きもしなかったってことはそうなるのか…」


 狙いは何だ、と思案するカイオールにネイトが可能性の一つを提示する。


「……魔法使いだから、それも聖獣の角を手に入れられるような乙女の魔法使いだからかもしれません」

「………可能性としてはそれが一番高いか」


 数が少ない魔法使いの中でも聖獣の角を入手できる乙女の魔法使いともなれば狙う人間がいてもおかしくはない。いや、狙われる可能性の方が高いだろう。


「しばらくはより警護を多くしたほうがいいかもな」

「王都に帰ってからも必要だろうね。それについては父上…、陛下にも私から伝えておこう」


 カイオールとジルオニクスが視線を交わして頷き合うと、ネイトとレミアータもそれに賛同した。


「……あの、すみません。なんか色々ご迷惑をおかけしてしまって」


 大事おおごとになってしまって申し訳ない気持ちでいっぱいになったフィリアは身を縮めて頭を下げる。

 そんな彼女の様子に、しかしジルオニクスが肩に手を置いて優しく微笑んだ。


「気にしなくてもいい。君は妹を救うために最善を尽くしてくれた。その行動に報いるためならば、こんなことくらいは当たり前だよ」


 優しく伝えてくれて、嬉しかったのは確かだが、それでも不安な気持ちと申し訳ない気持ちは晴れない。

 しかしこれ以上、気を遣わせる訳にもいなかいとフィリアは意識して元気な声で、その場にいる皆に礼を述べた。

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